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[死なぬ まだ死ねぬ
そう言って、鎖で締める手は必死で―――
糸が斬り裂く間も ただ闇雲だった]
裏切り など――
そんなもの、僕だって
[掠れた声は、息絶えるヘイノに届くや否や]
[不意打ちを避けもせず、僧は足を止めただけ。
――――彼の右肩へ、斧は半ばまで喰い込む。
静かに振り返る相手の挙動に合わせて
ぐと斧を抜き取ると…飛沫くいろが霧めいた。]
守るもの ではないね。
死のことわりと言うならば、
…そういう名を負ってきたので。
[ほんの数日前だった禊の水の、
赤黒さを…彼の脚衣に見つけられない。]
禊は、もうやめてしまったのかね?
[死んで尚 手首の枷と鎖は千切る事叶わず
冷たい海にさかしまに浮いた自分を
見下ろす、おなじ細い目が在った。
屍肉を 抉られるを、見る]
‥やめた方が、良いですよ。
僕は、
人ならざる力を引き寄せているから
[妙と言っていい程、穏やかな心持ちに
少し、戸惑い含み 呟いた]
あまい、筈などない。
[おんな、に 限らず。
生きるために喰らうならば甘くもなろう。
死者はその死したときのままに
水に膨れても剥がれぬ黒い手袋の手
上げると じゃり…と
鳴らぬ幻聴が 小さく響いた]
[斧の男に話しかけられ、そちらに首を巡らせた。]
…“魔物”は死んだんじゃないのか?
[男たちが落ちた海のあたりを指をさすが、
斧の男の視線の先、女の死体を食む僧侶をみ、]
…さぁ、な。
[“彼”を魔物と評してしまえば、皆“魔物”ではないか等と。]
ん?…助勢?
[聞き返した時には、既に僧侶の元へと男は歩みよっていて。]
ああ、分け前をいただけるなら…?
[懐に手を入れつつ、近づく前に、斧が風を切った。]
穢れていないのに禊は必要なし
これは私が取り込んでしまった鳥の代わりにする功徳。
[斧はか細い肩の骨を切り砕く
男はゆっくり座るように跪いた]
私が死んだら、誰が魂を天に還す、肉を大地に還す。
貴様は、それを分かって、殺すか。
[自分の死を前にしても腑に落ちない表情]
なぜ、殺すか。
食いもしないのに殺すか。
意味もなく殺すのは、お前もアレか。
[曲解した言葉に、己を奮い立たせるように、釣り糸を伸ばすが、そのまま力尽きたように倒れた
瞳は信じられないと言わんばかりに見開いて]
おや?
[次にその視界に映るのは、
斧が一閃、僧の肩にくい込む場面。
そこから、きらめくように血が吹き出す。]
―…慣れていらっしゃる。
[人を殺める行為に、躊躇いが見えぬ者へ、それまでとは違う声色で、目を細めた。]
[ゆっくりと倒れ伏す僧侶を少し離れた場所から見ていた。]
…助勢はいらなかったな。
[手馴れている…知らず気狂い男と同じ感想が浮かび、傍に近づくのは躊躇われ、足は止まった。]
[反撃や逃亡を織り込んだ斬撃は、
失血に長く長く痛苦の微睡みを伴う致命傷。
無い指の付根が蠢くのを見詰め、]
…… 生き肝をくれ。
[誰の声にも応えることなく
エリッキへ"助勢"を*頼んだ*]
[ポケットの中、長い指はそぎ落としたばかりの耳朶の曲線をゆっくりとなぞりあげる]
――その人ならざるもの、も、
喰らえば力を己が身に取り込めるかね?
ああ、……興味があるな。
[振り返る、霧のように細やかに飛沫く赤。
細められた男の目に滲む熱は欲の色]
[血しぶきをあげる僧は、そのうちにどぅっと倒れる。]
ああ、海の肉、そして、ここにも新鮮な肉。
一つは酒につけておきたいものですな。
[そうつぶやきながらも、斧の男がエリッキたる男にかける声に首を傾げ…。]
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