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[獏の言葉を。一つ一つを頭の中で繰り返して。じっくりと繰り返して。]
君と俺は、相成れない存在なのかもしれないね。
…止む終えず記憶を消す。
そういう事だってあるんだよ、獏。
獏。君に。俺の夢を喰らうことはできるかい?
…俺がこちら側に来たことは。
本当に…本当に最大の誤算だよ。
俺は、盾になることが出来たのに…。
……ルリ。
君は…受け入れてしまうのか…。
食べたいのかね?
ルリと、私を。
[聞き返す声は平坦に]
私なら構いはしないさ。……思い出したから、ね。
私が誰かも、知り合いの顔も。
彼女の事も……
全てを、思い出した。
元々死のうとしていた事、だって。
私は、狂っていた。
[淡々と言葉を重ね、笑う。自嘲するように、寂しそうに、――愉しそうに]
>>+35
誰かがわからないままじゃダメですか。
[微かに微笑んで、上着を羽織る。
確信をもった手つきで、ぬいぐるみの背中をまさぐり始めた]
誰かがあたしのしあわせを祈ってくれた分、あたしも誰かの……
[カチリ、音が響いて、ノイズ混じりの機械音がメロディを奏で始める]
Ten little Injuns standing in a line.
最後の一人は……
幸せだったか、不幸せだったか?
[謎かけのよう。左の掌を天に向けて掲げ、目を細める。そしてまた、低くも高らかな笑い声を*響かせて*]
[影の世界からの、響音]
楽園。
…。…。…。わかりませ、ん。
――ライデン?
[様子のおかしいライデン。
彼の方へ伸ばしかけた手が、続いてその笑みに戸惑い 彷徨う――]
狂っていた?
そうは、みえませんが…。
誤算?やむを得ず?それこそ言い訳だ。
誰が、いつ、記憶の消去を望んだ?
少なくとも、俺は頼んでいない。
人は、思い出無しには生きられない。
記憶を消した事が、過ちの始まりだ。
[クスリ、クスリ、ただ笑って]
夢を喰らう事は、できるだろうさ。
肉体を喰らう事は、できないかもしれないが。
レン、お前は盾にはなれないよ。
お前は、溶けて消える泡なのだから。
[ぬいぐるみから響き出したのは、憂いを帯びたクリスマスソング。
知っているメロディなのかどうかすらわからない]
サンタクロースに最後に願ったのは、何でしたか?
[ぬいぐるみに視線を落としたまま、誰に尋ねるでもなく言った。
震える唇をきゅっと引き結ぶ。
瞬くと、頬を一筋の滴が*零れ落ちた*]
…その曲。
[顔をあげ、ひつじを見つめる]
眠れない君へと…手向けられた?
[ノイズ混じりに、ひつじが歌う]
そう見えなくとも、狂っていたのだよ。
今だってそうだ。
ああ、覚えているとも。苦い薬の味を。白い部屋を。
身動きできない窮屈さを。今だって。
[ルリの問いには、笑みを穏やかな微笑に変じ]
少なくとも、この世にはないものだ。
「This loathsome gargoyle who burns in hell But secretly yearns for heaven」
[半分の否定の後に続けた台詞は、独り言の*ように*]
……泡にだって。できる事はあるさ。
君らが俺を選ばない限りは盾にはならないね。確かにそうだ。
俺の夢を喰えるって?へぇ。
…なら。喰らってみるがいいさ。
肉体はもう、ない。掴まって溶けてしまったから。
けれど。それでも俺はここに"居る"。
君はその楽園とやらに、何を求めるのだろうね…
君の聞こえる「世界の歌」は。どんな歌なのかい?*
"彼女"は言う。
「God give me courage to show you
you are not alone…」
[ほどける唇から零れ落ちる台詞。
墨色に透ける亡霊の声は、語尾のやや掠れる穏やかな声。
THE PHANTOM OF THE OPERAその人の声には遠く及ばないが]
孤独に狂った"怪人"。…
「合図」は、ずっときこえていますよ。
[とろり、眠たげな瞬き。墓碑の合間に茂る公孫樹に凭れ
新たな死者たちへやわらかな目礼を馳せ、全てを*眺め居て*]
それでも君は…「ひとり」なのでしょうかね。
…あぁ。
思い出した。彼は…
[震えだした手を、もう片方できつく握る。]
助けたかった。
助けたかった…
なのに…
たとえ体は救えても、心までは救えない。
怖い夢を見ないように。
悲しい夢を見ないように。
……目覚めるときに孤独でないように。
[メロディーが一巡して、ひつじは餞別の音楽を終えた。
抱きしめたぬいぐるみに、くしゃくしゃの顔を隠し*俯く*]
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