[振り返る青年の様子に、息を飲む。
もとより飄々ととらえどころの無いような相手ではあったが]
お前は魔女じゃねえし。
[震える声。
交わらずに抜けていく眼差し]
人殺しでも、ない。
[感情とは別の形に曲がった口元。
それらが容易に想像させる――]
言わせんな。
[唇を引き結んだ]
[牢屋を覗き、法廷も覗く。誰もいないのを確認すると更に足を進め――庭へと。
そこで二人の姿を見つけた。
声を掛けず、ゆっくりと近付く。
クレストが手に持った髪飾り>>1を見る。
ユノラフの言葉>>7は聞こえただろうか。]
[昔から人より少し勘が良かった。
店の客の失せものを探り当てたのも。
病を隠していた父の嘘を見抜いたのも。
店に悪意を持って近付くものが何となく分かるのも。
すべて勘がいいだけだと思っていた。
それを違うと言い、隠すようにと言ったのは母だった。]
[此処に魔女がいるのなら、“これ”で探し当てられるかと期待した。
が。
捉えたものは、言葉にはなりきらない違和感だけ。
その違和感が何か分からず、ただ、視線を向けた。]
……?
[ふと。
ミハイルの視線が自分に向けられないことに気づく。
視線を追ってたどり着いた先にあったのは、彼に一番近しいはずの存在で。なのにその視線に違和感を感じて、眉根を寄せて、ミハイルを見直す]
ミハイル兄さん。
…そうだね、二人とも死んでしまった。
[エリッキの遺品は見当たらなかった。手にした髪飾りに一度視線を下ろすが、挨拶を交わし終えても彼からの視線は向けられ続けたまま]
なぁに。
[何処か間延びした声で呟き、見つめ返す]
クレスト。
[なぁに、と問われ。>>15]
何か――隠している事はないよな。
[失くしものの指輪のように。
身体を蝕む病のように。
他者を傷つける悪意のように。]
……ないよな?
[再度確認する声は、幾分、弱かった。]
―――――…。
[隠し事はないかと、問われ。
そういえばミハイルには昔から隠し事ができなかった。考えていることが表に出難い性質だから、親にすら何を考えているか分からないとよく言われていたが。彼には、悪戯も悩みも、何となく見抜かれていた気がする]
かくしごと?
嗚呼、そうだね。例えば。
[短く、息を吐く。もう笑みが浮かぶことはない]
さぁ、分からん。
[魔女、と言った、クレスト>>18に首を振る。]
俺に分かるのは、お前に何かあるって事だけだ。
これが魔女の証拠だとしても、俺は誰にも証明出来ん。
…勘、だからな。
ユノラフ、すまんな。
魔女裁判、呼ばれた心当たり、俺はひとつだけある。
俺、昔から妙に勘が良かった。失せモノの場所を言い当てたり、とかな。
――人の考えている事が分かったり、も、した。
俺が此処に呼ばれたのは、多分、それが理由だ。