[手元のレポート用紙に綴りかけの文面。]
『重量オーバー事例
オペレーター:ワカバ
お客さま役:チカノ マシロ アン ……
記録係: サヨ
概要:
定員-1ないし-2で乗客の招き入れを
停止するところをご案内が後手に回るケース。』
『経過:
重量超過警告ブザーが鳴り、軽クレーム発生。
お客さまがエレベーター内でとび跳ねる事態。
(ex.他に予想される要求→「お前が降りろや」)
オペレーター初動対応:
言葉遣い△(正確には 言葉遣い×言葉選び◎)
笑顔◯(目は笑ってない ある意味適切) ……』
[下書きながら、内容はそこそこ*真面目*。]
[しぱ、しぱ。
振り返る友人を見返して瞬きを二度。]
… そうかも。
[ 「誰が」?とは聞き返さなかった。
たかいヒールの靴は履きこなせても、
マシロのようなウインクはできない。]
[ともあれ、ブザー音が止んだからには
エレベーターは運行遅延なく動き出す。
重量オーバー事例の続きも
書けなくなってしまった。
――上へ、上へ、上へ*まいります*。]
待って待って、あたしがまだ乗ってないわー!
[ぱたぱたと走り込む娘が一人。]
えっと、何の演習だったかしら?
[自分の役どころを把握していないらしい。**]
[深く考えない方が良いと言わんばかりに、サヨヘもう一度微笑みかける。
エレベーターと呼ばれる箱は、衝撃を受けながらも何事もなかったかのように、再び動き出そうとした。]
――待って!
[思わず声を上げると同時に、飛び乗る人影。
走るヒールの音は、箱内に敷き詰められたカーペットのお陰か響き渡らない。]
さぁ? 忘れちゃったわ。
[ナオの問いかけには、吐き出すような声色で答えて。
エレベーターは上へ、うえへと*動き出す*]