ミハイル兄さん。
…そうだね、二人とも死んでしまった。
[エリッキの遺品は見当たらなかった。手にした髪飾りに一度視線を下ろすが、挨拶を交わし終えても彼からの視線は向けられ続けたまま]
なぁに。
[何処か間延びした声で呟き、見つめ返す]
クレスト。
[なぁに、と問われ。>>15]
何か――隠している事はないよな。
[失くしものの指輪のように。
身体を蝕む病のように。
他者を傷つける悪意のように。]
……ないよな?
[再度確認する声は、幾分、弱かった。]
―――――…。
[隠し事はないかと、問われ。
そういえばミハイルには昔から隠し事ができなかった。考えていることが表に出難い性質だから、親にすら何を考えているか分からないとよく言われていたが。彼には、悪戯も悩みも、何となく見抜かれていた気がする]
かくしごと?
嗚呼、そうだね。例えば。
[短く、息を吐く。もう笑みが浮かぶことはない]
さぁ、分からん。
[魔女、と言った、クレスト>>18に首を振る。]
俺に分かるのは、お前に何かあるって事だけだ。
これが魔女の証拠だとしても、俺は誰にも証明出来ん。
…勘、だからな。
………
[自分の名に、僅かに眉を動かす。
目の前で繰り広げられる、どこか遠まわしな会話。それに耳を傾けた。
昨日と同じく、適当に壁に凭れた姿勢で其処に居た。]
ユノラフ、すまんな。
魔女裁判、呼ばれた心当たり、俺はひとつだけある。
俺、昔から妙に勘が良かった。失せモノの場所を言い当てたり、とかな。
――人の考えている事が分かったり、も、した。
俺が此処に呼ばれたのは、多分、それが理由だ。
…何言ってるの。
証明なんて、必要ないよ。
ただ、指をさせばいいだけさ。僕が魔女だって。
兄さん、言ってたじゃない。
魔女が見つかれば、此処から出られるかもって。
[淡々とそう言って、ユノラフへも視線を向けた。同意を求めるように]
魔女っぽいって、どうすればいいんだ。
[独り言のように零す]
[確かに。と。
ミハイルの言うことは思い当たる節があって。けれどそれは宿の主という経験から、例えば今日はツケだとかそういうことを見抜くのだと思っていたが。
唐突に与えられた情報に混乱する。そのピースがすぽりすぽりとはまるような気もするが]
この兄弟は……
[ぐるりと回った思考が最初にはじき出したのは、男に苦い顔をさせることだった]
あぁ、魔女が見つかれば此処を出られるかもな、クレスト。
お前が何か隠しているように俺は思えている。
それが魔女の正体かもしれんが…。
裁判官から見たら、俺こそ魔女なのかもしれんな。
――どっちが処刑されたら、裁判官は満足すると思う、ユノラフ?
…エリッキも探ったんだ。
何も分からなかった。
此処に魔女はいない。もしくは俺では魔女など見つけられない。そう思ったんだが――
……なんで、クレストで、違和感覚えるんだ?
………くそ。
[呻く。]
そろいも揃って俺に謝りやがって。
謝ったら俺が許すと思ってんのか。
[ぼそぼそと、口の中で文句を言う。あるいは不明瞭で聞こえなかったかもしれないが]
おい。
お前、自分のせいで誰か死んだと思って自暴自棄になってんなら止めとけよ? 人を殺したからって平気で生きているやつなんか沢山居るんだからな。
[半眼になってクレストを見る、念押しの様なそれ]
俺に聞くな俺に。
裁判官が満足する? 知るか、直接聞け。俺かもしれんだろうが。
[言い切りは、するが。説得するよりは投げやりな口調ではある]
お前が魔女だなんて、俺は認めねえ。
[うめく声に、無理矢理言葉を押し出す。
ただ、ミハイルの言うクレストの隠している事は気になって、クレストに視線を送った]