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[今も続く歌声はどこから聞こえてくるのか。
近いようでもあり、遠いようでもあり。>>#3
しばらく耳を澄ましていた初音は、
この歌声こそが不安をかきたてるのではないかと思った。
ときおり不協和音の混じったメロディは、高く、低く。
聞く者を落ちつかない気分にさせる。
あのアブラゼミの合唱のごとく、
不愉快で、不規則な音の羅列に歌声を付けたかのよう。
ヴァイオリンケースと学生鞄を片手に提げ直し、
初音はおそるおそる老人>>7と猫>>6に近づいた。]
あのう……
何か探し物ですか?
[背中を向けていたのは、初めて見る顔だったろうか。
それとも、どこかで出会ったことのある相手か?**]
[カランコロンと下駄が鳴る。和装は着付けもやるし、お客の評判も良いから着慣れたもんだ。
幼馴染みとかは、おっさん臭いって言いやがるけどな。
あー、朝顔が咲いてんなあ...最近グリーンカーテンとかで、結構、植えてる家が増えたよな]
にしても、あっちい...
[出際に持ち出した店の名前の入った団扇で、ぱたぱたと顔を仰ぐと、ちったあ涼しい気がするのは、海が近くなったせいかな。
気のせいか、波の音も近く...ちか、くぅ?!]
近すぎるだろっ!!
[思わず突っ込み入れた俺の目の前に、ざん、と、白い波頭、つーかこれ、ほとんど海の中ですから!]
[周りは一面にあおに包まれて]
わけわっかんねえよ.........
[気付けば、俺は、やたらに咲き乱れる朝顔の中に、居た]
[波のおとが聞こえる、歌声もまだ...
まるで.........]
て、うわっ!なんだおまえっ?!
[なーんて、感傷に浸る暇も無く、突然現れた直立歩行の兎が、なんだか一方的に色々まくしたてる。
何がなんだかわからねーっつの!てか、勝手なこと言ってんじゃねーよ、このっ!]
おいこら、人の話を聞けーっ!!
[こっちが、口を開く前に消えやがった]
あーもう!なんだってんだ。
[頭を抱えるって、こーゆー状況を言うんだよな、と、本気で頭を抱えながら俺は思ったね。
えーと、なんだっけ?鍵と螺子?]
.........たーく、しらねっつの。
[はあ、と溜め息が漏れた。溜め息つくと幸せが逃げてくって歌の文句かなんかだったっけ?
ああもう、あの兎野郎、俺の僅かな幸せ返しやがれ!]
おーい?誰かいるかー?
[探せと言われても、意味わかんねーし、朝顔の向こうに、人影が見えた気がして、俺は、とりあえず、歩き出したんだ**]
いや、ちぃとなぁ。
兎に探しものを頼まれたもんでの。
[相手はどこか警戒するような様子ではあったが、ウミは街の人に声をかけるのと同様、柔和な笑みで応じる。
伝えた内容は突飛無いもののように感じるかも知れないが、ウミとしては至って真面目な回答だった]
『鍵』に、『螺子』、じゃったかの。
[思い出すように空を見上げながら呟くと、傍らで飼い猫が「なぁう」と鳴いた*]
[相手の柔和な笑顔>>27にいくぶん安心しながら、
初音は質問を続けた。]
……音楽が聞こえませんか?
さっきは鐘の音もしました。
[猫は警戒を解いたのか、傍らで「なぁう」と鳴く。>>27
ふと初音は灯台を見る。
真っ白な壁面>>0:30に小さな違和感をおぼえた。
いつだったか、役所か公民館で説明パネルを見た気がする。
町のシンボル的な建物で、長年潮風にさらされて傷みが激しいと。
補修工事のため一般からも募金を集めている、と……。
目の前の灯台は、何十年も前の建物とは到底思えないほど、
新しく>>5、誇らしげに佇んでいるように見えた。**]
……んー…
別に思い出せなくたって困りゃしないけど、なんか…
[先の光景や、自分が海に行かなくなった理由が解らないことが、気にかかって。
水面を見つめたまま記憶を掘り返そうとしていたら、くらくらとした眩暈を感じた]
っ、やば、日陰から出てた…
お茶、や、スポドリ飲もうスポドリ。
え、う、うさ…え、しゃべ…
[驚きのあまりフリーズしているこちらには構わず、>>#2いずこかの童話に居そうな身形の兎は早口で言いたいことだけ言い募り。
何とか気を取り直せたものの丁度兎が『よくわかんないや!』と言い切ったところで、見開いたままの目が限界超えそうな位大きくなった]
は?
いや、ちょ、こっちこそよくわかんないっつか、もっと詳しく教えて欲しいっていうか、
てかあんた何で喋ってんの喋れてんのって、ちょっとまて兎ーーーーーーー!?
[現状諸々に混乱しながらも出てきた疑問やら質問やら投げかけようとしたのだが、それよりも兎の行動の方が早かった]
[ぽんぽんぽーんと軽やかに、しかも5mの高さまで跳ばれてしまっては追いかけようもない。
多分最初っからこっちに応対する気なかったんだろうその行動に、残された少女は唖然と憤然ごちゃまぜな感情で兎の消えていった方角を見つめ]
………手を貸してって言ったって、帰れないかもとか言われたらヤダって言える訳ないし、
でもカタチわかんないのにどうやって探せっていうか、そもそもあんたがよくわかんないっていうかもう、もう…
なんなのよあのウサギーーーーーーーーーーーーーーーー!!!!
[憤りやら不安やら困惑やら、この短時間で身の内に溜まったいろんなものを声に込めて吐き出した後]
………てゆーか、ここ、どこ。
[ようやく周囲に意識を向ければ、見覚えの無い街並みに大輪の朝顔が目に留まった**]
[そうして閑静な住宅地を、時折遠くから聞こえる子どもの声、
大通りの車の行き交う音を聞きながら、歩いて。
気が付けばてっぺんの太陽はいくらか傾いて、反対に、地面に染みた熱が立ち込める。
暑い午後。
無意識に視線は足元の先へ、手をうちわのようにして扇ぎながら
――熱のせい、だと思った。
ふと、上げた視界に広がるそれは
ほんの刹那のこと。懐かしい香りがしたかと思えば、湿った風が、いつかの潮風みたいで]
…?
[振り返った。誰かが、あたしの名前を呼んだ気がして
知らない人、じゃなくて、聞き覚えのある声、でもなくて
ずっと、どこかで焦がれ続けてた、懐かしい声で。
何もなかった。
ただ、広がるのは歩いてきた道。ゆらり、陽炎。]
[けれど、前を向きなおれば]
―――……っ、
[思わず目を見開く。
視界いっぱいに広がって見えた、それはコバルトブルーの
青春を過ごしたとき、飽きるくらいに目にした色で。
いつかの、海の色で。]
あたし、疲れてるのかもしれない。
それか、日の光を浴びていたせいか。
そんなことを思ったのは、目をこすってみればそこは、何ら変わらない住宅地だったから。]
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