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花火、始まりましたよ。
[やはり島に残った薬屋に首を微笑んで、天を指した。]
……ここにいると、対岸のことの方が夢なんじゃないかって思えます。
帰った夢を見てるだけで、本当はまだこの島にいるんじゃないかって。
皆、今にも出てきそうなのにね。
いるけど、見えないだけなんでしょうか?
忘れるのは怖い…無くしてくのは怖いねえ。
でも、月が沈んでも太陽が出る。
今日も、多分、明日も俺はいるし、暮らしてくんだ。
[柱に近づいてついている傷を撫ぜ]
こうやって残せば、薄れても消えない。
そうやって、増やしていけば良い。
[同じようなことを考えてたのかな、と笑い]
いそうだよね。
あの人みたいに見えなくて、よかった。
見えていていたら、先に進めないし。
いなかったら、寂しいもの。
記憶まで一緒に消えなくて良かったな。
あれだけの人の最後は、ちょっと重たいけど。
確かにそこにいて。それがきちんと残ってる。
花火。最近ようやく良さがわかってきたよ。
[もう月が視界に入っても、狂気は現れなくなっていた]
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