─数日後─
[勉強が大嫌いで、泣いてばかりのあの子は、なんと科学者になっていた。
あの日、自分が突然動かなくなった後、誰も直すことは出来なかった。
だから勉強したのだと、彼女は得意げな顔をした]
ほんとに、頑張ったね。
[やればできる子だよ、と、あの子にも言っていたが、まさかここまで出来るとは思ってなかった。
自分の役割は、あの子が変な男に捕まって、借金まみれになり、子子孫孫が大変なことになるのを防ぐために、未来から来たのだから。
その未来はまだ、遥か遠く。
技術的なブレークスルーはまだ先である]
ねぇ。聞いてくれる?
わたし、寝てたあいだ、旦那さんと子供が居たんだよ。
[いぶかしげな顔をするあの子に笑う。
縁側のある、ちいさな家のことをどう伝えたらいいんだろうか。
『家族』の記録は、過去にも未来にも偏在している。
もしかしたら、これから会うのかもしれない**]
[少女の影
鍋アンテナの家の影
遠いそちらへと一度だけ、高々と掲げたハンドサイン。
流れるキューさんの歌声と共に、ボートは進み始める**]
……こんにゃろう。
[ここで人を使うのか。
なんて思いはするけれど、頑張ってしまうのが兄貴心理というもので]
…………。
[当たり前のように返ってくる言葉と、振り返される手。
それに、へら、と笑って──川へと、漕ぎ出した。**]
これはなんですか?
[ギフトボックスを渡してきた、セーラー服姿の学生に首を傾げる]
『結婚記念日のお祝い、と』
[苺を1パック手にして、女学生は、岸に近づく肉球サーベル号へ駆け出した]
アチョー!!
[ヌンチャクを振り回し、昨日見たバトルアニメの真似をする。
そんな昨日なんてものは、本当はなかったんだけれども**]
[向こう岸に近づいたら、駆けてくる姿が見えた。
あれ? と思いながらも、その近くにボートを止めて]
……あー。
[苺を持って、立ってる姿に]
よ。
寂しく、なかったか?
[へら、と笑って呼びかけた。**]