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[故を問われる導き手は、
今も昔も、途方に暮れるまなざしをする。
友人の長子たる教え子に
一人称を持たぬ故を問われ、
『 …
"おおやけ"と"わたくし"は、
同じものであるので。 』
――そう応えたときのように。
乾いていてさえ濡れた海草のような
彼の縮れ髪をぎこちなく梳いて――
奈落の水底へそっと*突き放した*。]
なっ…!?
[遠くから何か重い物引きずるような音が徐々に近づき、桟橋手前から聴こえてきた託宣めいた声に
一瞬驚きの声をあげた、が。]
…っなこた、知ってるさ。
やらなきゃ、やられるんだろ!
[桟橋手前に立つ、ヒビの入った眼鏡の奥を見返し、
叫ぶ。]
俺だって、知ってるさ…。
[ただ手をこまねいているだけでは、何も変わらないことも。今のままでは決してつかめない…。]
…知っているさ。
[思わず両手で握りこぶしを作った。
なのに何故…。
そんな自問は飽きるほどに繰り返してきた。今更だ**]
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