情報 プロローグ 1日目 2日目 3日目 4日目 エピローグ 終了
─ ペットショップ&カフェ『EdesP』 ─
[動物の鳴き声があちらこちらから聞こえてくるバックヤードで、男は一匹の犬と対面していた]
……私のところで、この子を?
[会話の相手は、時折カフェを譲渡会の会場として貸し出している動物保護団体の代表。
先日、3歳のポメラニアンを引き取ったは良いが、誰にも懐かず餌も食べない様子にほとほと困り果てたのだという。
何故か、男には近寄り触らせもする、ということで白羽の矢が立った、というわけだ。
男は柴犬カットにされたポメラニアンに視線を落とす。
ポメラニアンは早速男の傍に寄り、足元に蹲った。
餌を食べていないと言うからには少なからず弱ってもいるのだろう]
…分かりました。
このまま放っておくわけにもいきませんし、こちらで様子を見ましょう。
[保護団体の代表に是を返すと、ホッとした様子で礼を告げられた。
代表は何度も頭を下げ、男にポメラニアンを託し去っていく。
それを見送り、男は短く嘆息した]
……ルウイ。
[男は柴犬カットのポメラニアン ── 柴ポメの名を呼んでみる。
柴ポメは返事をする気力が無いのか、こちらを見ることは無かった]
………。
[再び嘆息し、ドライフードとウェットフードを混ぜたものを柴ポメの傍へと置いてやる。
餌に気付いた柴ポメは、匂いを嗅いで確認した後、少しずつだが餌を咀嚼し始めた。
ひとまずの危機は脱したようで、男も安堵の息を零す。
傍に水の入った容器も置き、しばらく様子を見ることにした]
[不遇な境遇の動物を助けたいという男の夢を体現するために構えた『EdesP』。
以前はペットショップだけだったが、カフェを併設したことで夢の実現に近付き、今も尚その夢に向かって進んでいる最中だ。
その最中に発生した、保護動物の預かりボランティア。
動物の世話は慣れているものの、保護動物となるとやはり勝手が少し違った]
ルウイ。
[柴ポメの名をもう一度呼んでみるが、それに対する反応はない。
ただ、離れたところにいると、男を見つけて駆け寄ってくる。
人嫌いと聞いていたが、男に対しては警戒心を抱いていないようだった]
………。
[不可解に思えて、男は首を傾げて押し黙る**]
[何とか餌を食べ終えた柴ポメが男の足元へと寄って来る。
手を伸ばし抱え上げてみると、特に厭う様子もなく男の腕に収まった。
少しは元気が出たのか、くるりと円を描いた尾が緩く振られている]
……しばらくは詰めることになるか。
[家に連れ帰れたらな良いが、生憎とペットOKの場所ではない。
柴ポメの世話をするには、店に泊まり込む必要があった。
動物たちの様子を見るために仮眠スペースも併設されているため、泊まるのに支障はない]
………買い出しだな。
[必要なのは食料、と。
店は従業員に任せて必要なものを買いに出ることにした。
ついでに柴ポメの散歩もしてみることに]
[コートとマフラーを着込み、柴ポメにリードをつけて店を出る。
ちらりと降る白の結晶。
冷え込む空気を吸い込んで、白い息を吐いた]
…行くぞ。
[リードを手に歩き出せば、柴ポメも歩調に合わせて歩き出す。
どうやら散歩も問題なさそう。
躾け自体はしっかりとされていたようだ]
…………。
[そういえば、と。
柴ポメが保護された経緯を聞きそびれたことを思い出す。
人嫌い故の理由はあるだろうが、行動を見る限りは不遇の生活を送っていたとも思えない。
己の左を歩く柴ポメに視線を向け、しばらく見つめた後に瞳を前へと戻した。
次に保護団体の代表に会った時に聞けばいいか、と判断したため*]
情報 プロローグ 1日目 2日目 3日目 4日目 エピローグ 終了