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今年の「代償」は君だね。
[その人と向き合うように、立つ。
手に持つのは、自分の着物と同じ、青い花]
持って行くと、いい。
大事なことを、忘れないように、閉じこめておける。たぶん。
それと。
[持つ青い花は、二輪]
出会えたら。
彼女にも……
[モミジの分よりはいささか小さな花。
手渡して、その背中を、そっと押す*]
[はらり、と帳面をめくる。
細かい字は、自分のもの]
もう祭りの日か。
[去年も二人、神隠しが起こった。
まだ幼い子のいるモミジと、毎年祭りに訪れたザクロ。
皆が無事に戻ってくるように。そんな願いをよそに、二人の姿は消えてしまった]
[紙をめくる。
はらりと紙が落ちる。
光に透ける厚さではないのに日にかざす、化粧師の名刺だ]
……え、っと。
今年はことさら、忘れっぽくて困るな。
[頭を掻くと、名刺を持って、家を出た。
祭りのにぎわいを抜けて、さまようように、名詞の主を捜す]
/*
というか、ずっと気にしているのだが、赤でロッカちゃんに花を渡しそびれていてだな!
どっかでなんかうまいことできないかとねらっているのだが。ううむ。
[子供たちの誘いを後でと断った先で声をかけられる。
化粧師は笑っていなかったろう、たぶん、自分と違って]
化粧師っていうのは、見えないものを見る力でもあるのかな。
[笑みを抜くように息を吐く。
コエのないまま、問いかけるように首を傾げた*]
ねがう。
[化粧師の言葉を反芻する。
願う。
その言葉に感じるのは、かすかな羨望]
願うこと、か。
[祭りの夜に咲く花は。
自分には見つけられなかった]
見つけられたら、何か……
[願ったろうか]
神様の尻尾、か。
[なるほど、と一度自分の両手を見下ろして]
俺は、願えないよ。叶いもしない。
[相手を見直して、微笑んで、小さく頷く]
そうか。神様の尻尾、掴みたいと願ってみるのもいいのかもな。やってみる? ンガムラさん。他の願いでもいい、あるならば。
去年、みんなが帰ってきますようにって、マシロは願ったよ。
……優しいな、あの子は。
[うらやましい。と、音なく唇は動く]
……。
[動いた唇を一度とじ合わせて。
描いた言葉を思い浮かべる]
うらやましい、か。
[コエにしてみる]
願い事が、あったのかな。俺には。
[忘れてしまった。
その中に、あったのだろうか]
[コエにする。
けれど返る音はない]
……。
[耳を澄まして、いくらも待って。
それでも、楽しげに笑うかすかな音も聞こえない]
それを神様に頼むのか。
[ぱちくりと瞬きを一度]
まあ、調べたというのなら、説明は今更だな。
案内はいる?
いらないといっても、俺もいくんだけどね。
[花を摘む。
願う。
代償を払う]
もう、調べたというのならば。
今までを体験していた君ならば。
[それらはすべて、想定のうちか。
ならば今更、説明するまでもない]
そんなにおかしかった?
[自分も、一度吹き出してしまえば笑いは止まらず]
調べたんだよね、神隠しのこと。
よければ俺に教えてくれないかな。
[少し足をゆるめてみる。叶うならば、化粧師の隣に並んで*]
どんな風に、伝わっているのだろうね。
俺のこと。
君のこと。
俺たちのこと。
君は、知っていたかな。
俺は、興味がなかったのかな。
それとも忘れてしまったのかな。
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