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―「家」の内―
[男が伸ばした手で冷たい家具に触れた時
足元に柔らかい毛の温もりが絡まった。
分厚い包帯に遮られた視線を向けてから、
腰を屈めそちらへと手を伸ばす。
ぽふり、と、触れた高い体温は、
トナカイ橇と共に進む犬橇用の犬の生まれたばかりの子。
ぱたぱたと振られる尾の音は、
雪に音を奪われた場では耳に届く。
擦り寄る頭をそっと撫でてやった時、
外から聞こえたのはアルマウェルの足音だった。]
[用件を伝えたアルマウェルが去ってから、
男はまた家具に触れる。
呼ばれた先はテントらしい。
またひとつ、あん と鳴いた子犬の頭をぽむと柔く叩き、
立てかけられたトナカイの角と蹄で作られた長杖を手に取ると
足元を確かめながら、慣れぬ「家」から外へと出た。
引かれた分厚い布に あん と鳴く子犬の声が閉じ込められ
ざくりと踏む雪音は、長老へのテントへとゆっくりと進んで行く*]
― テントの前 ―
[男は身切り裂く程冷たい空の下、テントの前に立つ。
中から感じるは数人の気配と温度、それに話声。
緋いあかいオーロラを見る事叶わぬ男が空を見上げれば
頬に冷たい氷が触れるばかり]
…――、
[手にした飾り気無い杖で、足元の地面を探る。
コツリ、小さな石が転がった]
― 長老のテント ―
[伸ばした杖の先が、入り口の分厚い革布に触れる。
遅れて手が其れを捲り、目に包帯を巻いた侭の男が姿を現した。
――数年前に、行き倒れる所を長老に拾われ、遊牧の民に混じるようになった男。
だが男は今まで、過去を語った事は無かった]
…邪魔を、する…
[低い低い声を発する。
中の暖かい空気の中、匂いと音で数人の気配を感じ取り、ひくりと鼻を動かした]
気の毒…
――だが「必要な事」…
[蛇遣いの声に顔を向けるのは、視力あった頃の名残でしか無い。
数字で呼ばわれる事には、最早慣れもして]
[杖で地面をゆるく撫で障害物の有無を調べてから
手を付き地面へと腰を下ろした。
飾り気無い杖をコトリと倒しつつ、聞こえたラウリの声にも顔を向ける]
…災難かどうか、
――…、判断しかねる…未だ。
[低い声で返事ををぽつりと落とした]
[ラウリの息に笑みが含まれるを感じ取り
男は見えぬ目乗せた顔を其方へと一度、向けた。
そして別なるビャルネの声に、深く頷く]
――早々何も無く立ち去ってくれる事も、
無さそうな――空気だ、がな。
[ぽつりと落とす言葉の後
蛇遣いの「必要」に、また、頷いた。
後頭部で包帯の結び目が色味薄い髪と共に揺れた*]
[冷たい風が頬を撫でる。
開いた扉、キィという独特な音は、
視力無き男の澄んだ聴力でなくとも直ぐ判る。
告げられる言葉に、ゆっくりと顔を向け]
…――、疑わしき者、とは。
[紡ぐ、低い声]
……お前も含む此処に居る…――
[人間だ、と。
消えた語尾は簡単なひとこと。
含む意味も、簡単な 其れで]
…――
[男は重い口を噤み、炎の温もりへと顔を向けた*]
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