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ほんと?お邪魔しよかな、今夜。
青海亭のご飯、美味しいんだもの。
この間、省吾オーナーにも紹介したんだよ。
何かとお世話になっているし、お礼に奢―――
…?
[ふと聴覚が違和を捉え、言葉を切る。
チカノに据えていた視線が周囲へ向いた。]
ね 何か聞こえない?
鐘みたいな、 時計みたいな………
[突如鳴り響く音。
何処から聞こえて来ているのだろうと見回すが、分からない。]
[直後]
―――っ……!!!
[耳を衝く破砕音に身を竦めた。
回る。ぐるりと、身体が……世界が。]
………。
[三半規管の異常に堪えつつ目を開けた時、チカノはまだ近くにいただろうか、それとも。
いずれにせよ目の前に時計を持った兎が鎮座おわしているのに気付くまでには少々時間を要したのだった。]
日本語喋ってる。
[時計を持った兎をじっと見詰める。
「ああ不思議の国のアリスに出てくる兎に似てるなあ」だとか。「なら、わたしどこかに迷い込んじゃったのかな、でも穴に落ちたわけでもなし。」だとか。
まだ混乱しているのか思考は明後日に飛んでいたが、兎の甲高い声はどうやらぼんやりとする時間を与えてはくれないようで。]
元の時間に戻れない………って?
今は、“現在”じゃあない…の?
あ、待っ
[て。と告げる前に兎は掻き消えた。
せっかちな兎は、なにかとのろい自分とは相性がよろしくないご様子。
理解の追いつかなかった部分は、チカノと話を交換することで何とか埋められただろうか。]
ん……。
よく分からないけど、時計を直せばいいのね…?
ワスレモノ…か。
[矢継早に告げられた単語は直ぐには頭に入って来なかったのだが。
何故だろうか、その単語は乾いた土に落とされた雫のよう、何処かに染みる心地がした。]
鍵に螺子。
時計に詳しそうな人って言ったら、そりゃあ時間屋さんのヂグ小父さん――だよね。
あ、でも。他に、ええと、"こっち"に来ている人っているのかな。
[巻き込まれたのがもしも自分達だけであったなら。
そう考えると、何故かそわりと落ち着かなくなる。]
あ、っ。チカノちゃん、だいじょうぶ?どこも痛くない?
[気遣うような視線を向ける。
不可解なことが立て続けに起こり、今の今まで怪我の有無にまで頭が回らず。
互いの無傷を確認するとほっと息を落とし、ぺたりと腰を下ろしていた海辺から、砂を払って立ち上がった。]
わたし、一度街に戻ってみようと思う。
チカノちゃんはどう、する……?
[街に向かうと言えば共に同じ方向に向かい、各々の目的地で別れる心算だ。そうでなければここで。
意向を問いかけながら、友人を見詰めた。**]
あれっ。
[声を漏らしたのはチカノとほぼ同時か。
胸元で手を振って挨拶ひとつ。]
祐さん、おひさし。
ついさっきも見かけてたけど。
[声掛けなかったんだー、と笑って、傍らの少女にも会釈をする。]
菊子ちゃんも。お早い再会になっちゃったね。
ね、例えば今青海亭に行ったりしたら、過去のチカノちゃんに会えちゃったりするのかな。そういうものでもないのかな。
[この頃、自分は何処にいただろう。
何をしていただろう。
視線が自然、背にした灯台へと向くが、歩みを進めるにつれやがて逸れた。]
行くよ。行く行く。
うんと、直ぐには無理だったら――
個展終わったらでも、打ち上げがてらに。
[残念そうな顔を見れば、慌ててふるりと首を振る。
食欲と一人暮らしのお喋り欲とを同時に満たしてくれる青海亭は貴重な癒しスポットだ。
この会話は祐樹と菊子に出会ったことで途切れてしまったが。]
菊子ちゃんとは、さっきお知り合いになったの。
関係はええと、 …見える人と見ていた人?
[どう説明したら良いのだろうと悩んだ末、謎の説明。
知り合いだと伝われば十分だったが、伝わるかどうか。多分伝わらないで居るであろううちに、菊子からより分かりやすい説明が為されたので、こくこくと頷いた。>>108]
そう、そう。
個展の招待状…招待葉書ね。
それを渡したの。
こっちも驚いたよ。知り合いだったんだね。ふたりも。
[頬赤らめてチカノに名乗る菊子の姿に微笑ましそうに瞳細め、祐樹とチカノとを交互に見た。昔馴染みの面子――と括って良いものか。
自分は少し年下だから、専ら彼女らを追いかけまわして遊んで貰う側だったのだが。]
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