( ああ。
なんて 不条理―― )
[そんなことを考えながら"寝返りをうつ"と、
ぱたりと視界の真ん中に自分の手が*見えた*]
[くるりと辺りを見渡し、私は改めて深い深いため息を吐いた。
遠くに聞こえた教員の声。そしてみんなを呼ぶ声。
無事だ。どうやら無事のようだ。
でもこれって、都合のいい夢ではないよね?]
「い、いひゃい! ばかマシロ!!」
[偶然にも一番近くに居たアンの頬を、私は試に抓ってみた。
すぐさま抗議の声を鉄拳が飛んできた。
――いたい。いいパンチだ。
これ位良いパンチは、きっと夢の中では味わえないだろう。
私は軽く気を失いかけながら、無事戻れたことを嬉しく思っていた*]
──あれ?なんでだろ。
[気付けば、一階のエレベーター前に立っているではないか。]
[床に寝転がった状態のサヨは、ころんと姿勢を変えている。
その姿にほっとした時、上の階にいたはずの少女の悲鳴が聞こえた。]
アンちゃん、マシロちゃん、何してるの。
[頬を押さえたアンが、マシロに一撃を食らわせている。]
[二人から少し離れた位置の壁にワカバが身体を預けていて。]
あ、チカノちゃんがいた。
[肩の黄色い何やらを返さないと、どうにも重くて仕方がない。
が、その前に。]
サヨちゃん、立てる?
[手を差し伸べながらそちらへ向かう**。]
[差し伸べられる手。
ナオの表情は、逆光で見えない。
しぱ、しぱ。二度、瞬きをする。
首だけの姿で見上げたときの、
心配と恐れとが綯い交ぜだった
ナオの表情が脳裏をふと過ぎる。]
…
そうね。立てるわ
[差し伸べられたともだちの手が
引かないうちに、つかまえて――]
つまり、
これは甘えてるのよ。
[にこりん と唇を*端引いた*。]