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――――…
[店の奥、少しはいったところにある仏間に、父の遺影とその前に座る学生服の後ろ姿。
驚いて、目を見開いた次の瞬間、その姿は幻の様に消えてしまっていて。
丁度自分の姿を見つめているかのような父の遺影を、代わりにまじまじと見つめた。]
そっか、もう、10年経っちゃったか。
確か、中三になる歳だったもんな。
[月日の移り変わりの早さに、思わず呟きをこぼして。
10年前の自分の姿は消えてしまったけれど、厨房へと目を向ければ其処には10年前の母親の姿が見えている。
エプロンをつけた、後ろ姿。
いつもはたくましく見れる後ろ姿も、とても頼りなく、もの悲しく、彼女にはうつった。]
……
[あの時には、自分もいっぱいいっぱいで、母の後ろ姿をあまり覚えてはいないのだけれど、今こうして眺めてみると、何だかとてもいたたまれない気持ちになってきて、そのまま店の外へと足を向けた。]
…どこに、行こうかな。
[逃げ出したい、と思った。
ここから離れたい、と。
菊子があとで合流しないかと言っていたが、もうすこし時間はあるだろうか。
あそこには、胸の奥底に仕舞って、忘れてしまいたいものがあったように思えて。
それがワスレモノなのかもしれないけれど、それでも今はまだそれを探る為に店へと戻るような気にはなれなかった。**]
/*
んー。
まぁ、場合によっては時期外れない可能性はあるんだ、が。
「柏餅」を「期間限定」で出してる意味を考えてもらえると嬉しかったかな、と。
運動会って春の場合と秋の場合があるんだよねぃ。
でも春の場合でも多分6月辺りだったはず。
ホントは柏餅売ってない。[GWのみの販売のつもりだった]
何せ手作りだから、数も作れない。
/*
とはいえ、「今が何月かも分からないんだから深く突っ込んじゃダメよw」って部分はあるwww
柏餅売ってる時期に運動会があるんだよ、うん。
・・・やっぱり、みーちゃんは、彼を嫌っていたんだ。
[それが、彼に対する自分の対応を見続けていたためかもしれないし、自然とそうなったのかもしれない。それはわからないけれど。
証拠だとでもいうように、踏み入れた靴箱の前、「自分」と「娘」が現れる。]
[運動会の帰りなのだろう。運動場には屋根だけのテントが置いてあり、白線が鮮やかに残っていて、あたりには、先生たちが片づけに忙しく動いている。
それをみながら、]
「ねえ、おかあさん。」
[体操服姿でランドセルを背負った娘が、不安そうに「自分」の袖を引く。]
「なあに?」
「再婚なんか、しないよね?」
[その言葉に、「自分」が一瞬息をのむのがわかる。それを見て、「娘」の顔が、いっそう不安そうになるのも。]
「大丈夫。あなたのお父さんはあのお父さんだけよ。これからも、絶対変わらないよ。」
「ほんと?ほんとうに?」
「うん。大丈夫よー。・・・誰かに、何か言われちゃった?」
「ううん。違うの。大丈夫。」
「そっかー。」
[そして、お互いホッとしたような、それでもどこか釈然としないような、疑っているような表情のまま、]
「て、つないでかえろっか?恥ずかしい?」
「ううん。大丈夫。」
[大丈夫と相手に言い聞かせるように、ぎゅっと手を握って、]
「そうそう、雷電堂で柏餅買ってきたんだー。みーちゃんがんばってたから、ご褒美。家に帰ってたべよっか。」
「・・・うん!」
[校舎から外に出ると同時に、薄くにじんで消えて行った]
[10年前の街中を、うろうろと歩き回る。
当時は、何処によく行っていたのだっけ…、少しづつ、少しづつ記憶と糸を手繰り寄せる様に。
それでも、何となく身体は覚えていたのだろうか、小さな街の図書館の前に立ち止まると、ゆっくりとその屋上付近を見上げた。**]
みーちゃん・・・
[それなのに、なぜ、彼女は急に再婚をせかすようになったのか。
「自分」と「彼」とのやり取りをはっきり見ていたはずなのに、「自分が買ってきた」という嘘に対して何も聞かなかった彼女。確か、家に帰って、二人でおいしく食べたはず。]
・・・行かなきゃ。
[「自分」と「娘」が向かった方へ。後を追うように、学校を後にした**]
― 街中 ―
は……
[適当な壁に寄りかかって、息整える。]
また撮り逃したなー。
[うさぎのことだ。わざと明後日の方向に感想を零せば、少しだけ可笑しい。
心に掛かりはじめた不安は、雨降らす前に吹き飛ばす。いつからか、そうすることに慣れていた。]
[背を預けていた壁から離れ、道挟んで向かいにある家をじっと見上げる。アイボリーの壁、ブリックレッドの屋根。ごくこじんまりとした一軒家。―――かつて住んでいた家。
今はひとり小さなアパートに移り住んでいるけれど。]
………。
[鞄からキーケースを取り出し、“現在”ならば存在し得ない鍵穴を回す。長く役目を失い鈍色に変わっていたキーが、一瞬輝きを取り戻しているかのように見えたのは気の所為だろうか。]
ただいまー。
とと、玄関こんなに狭かった かな。…うちといい勝負。
[記憶よりも随分狭い玄関に笑いながらサンダルを脱ぐ。少し残った砂を払った。
躊躇いもなく自宅に足を踏み入れるのは、中に誰も居ない事が分かっているから。*]
祐樹の愛は柏餅では買えなかったかっ。
[くぅ、と悔しそうに言ってみたりして。軽口で気分を出来るだけ浮かび上がらせようとするのは無意識のことだったかもしれない]
具合が悪そうだった、か。
それだけじゃ何とも言えねーところだが、否定する要因にもならねぇな。
ん、風音荘なら俺も今行こうとしてたから、様子見てくるわ。
居なかったら駅前広場だな、了解。
[居そうな場所を聞いて、改めて目的地を風音荘に定め、しばらくは移動に専念した]
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