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現代日本。
林立するビルの狭間、そのどこかに
進む時代から取り残された横丁がある。
心に空虚を抱える人々が辿りつく場所。
其処には「思い出屋」がいるという――
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噂では、どんな風に「思い出」が手に入るかも、
その対価がいかほどかさえもはっきりしていない。
ある者の話ではトランクケースいっぱいの札束、
別の者の話ではぶたさん貯金箱いっぱいの小銭。
さらに別の者の話では、
金では駄目だと言われたなどと雲を掴むような話。
ただ、共通しているのは
横丁の『その』一画に、思い出を売っている
思い出屋がいるらしい、という漠然とした話だけだった。
だから、自ら築けなかった思い出を欲するひとは皆、
精一杯を、ありったけをかき集めて横丁へやってくる。
「もぎゅ もぎゅ もぎゅ…」
先刻、芸人が居た駄菓子屋の店頭には
茶店よろしく古びた縁台が出してある。
今は、1本30円のスルメ串片手に居座る男がひとり。
「とんでもない、サボってなんかないもぎゅよ。」
隠す気があるのかないのか、咀嚼音混じり。
手にした携帯電話の向こうと、頻りに話す。
「了解、了解。
ご都合がつくようでしたら、
またいつでもお待ちしておりますもぎゅ。」
にこやかな声をした、福々しい男の横を
誰かが通りすぎていく―――そんな*風景*。
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