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―― 道端 ――
[赤い涙を流していることに、女自身は気づいてはいない。
金属バッドに結ばれたネクタイを引っ張り、ずるずると音を立て、地面に線を描き歩いていく]
一緒に来る?
[振り向いてそう尋ね、返事が聞こえないままに校庭を*目指す*]
―回想―
”屍人ははじめ
『きょうかい』を守護する為に生まれたんだよ。もぎゅ。”
[何故か、急に思いだせた。
赤い川のほとりで。いつの日だったか、ネギヤがそう語った。
半ば屍と化した女の、おぼろげな記憶]
―廃集落―
[来伝と違い、こちらは空手である。
その分、優位性は向こうにある。
叩きのめされようとも死にはしないが。
深刻なダメージを受けたら、暫く動けない状態に陥るかもしれない。
オトハをかばう来伝の、手中の警棒から、距離をとり。
赤い涙に濡れた眼差しを、二人へ注いで]
… きょうかい に何の用があるのかな。
[オトハに問うも、答えに期待する気色は少ない様。
白い人さし指をゆるくあげ、一方を指すと]
ついでに、あたし親切だから教えてあげちゃうけど。
教誨所なら? あっちだぞ。*
[きょうかい。背後の彼女が口にした言葉に、対峙する相手が反応し、動きを止める様を見た。相手はそのまま距離を取り、教誨所の場所を示し教えた]
きょうかい、……教誨所。
其処に信仰の要があるのか? ……っく。
[独り言のように零して――眉を寄せる。また、視界が流れ込んできた。――己の、後姿が見えた。その向こうには、通常の視界と変わらない光景があった。背後の彼女の視界。幾つかの単語が頭を過ぎる]
……きょうかい……
屍人、……ソラ、……
[譫言のようにそれらを声に出す。はたと視界が戻り]
[間髪を入れず、別の視界が流れてきた。一面の赤。赤い水。何処までも広がる――赤い海――]
赤い 海
送 還って、……う、……
うう、……く、そ。ふざけ、るな……!
[再び零し、呻き――手で押さえた頭を強く横に振った。警棒を握る手に力を込める。あげた大声は些か掠れていた。――蝕まれている。そんな思いが湧く。少しずつ、何かによって、何かに、何かが、]
……は、……
[荒い息を一つ吐く。
どうにか気を取り直し、背後の姿を*窺って*]
―― 学び舎 ――
[小高い位置にある校庭から、村を見下ろす。
どこからか細い煙が立ち上っていた]
たーまやー?
[言ってから、ふと警官の『視界』を探したがそれらしきものは見つからない。
ん、と首を傾げて、それから歩き出した]
―― 地下の屍人の視界 ――
[蝋燭の明かりに揺れる人影は、ひとつ、ふたつ、みっつ。
祀られた一角には、ひとりの眠り姫。
唇に引かれる紅は、透き通るような白い肌を際立たせる]
[金属バッドでてこの原理 + 半屍人のバカ力 = 金次郎像は鈍い音を立てて動く]
か弱い乙女にこれは重労働だわ。
[縦穴にはさび付いて今にも崩れ落ちそうな梯子が見える。
しばしその縁に腰掛けて、暗闇の先の世界を*探った*]
……さっさと逃げた方がいいのに。
でないと、死にますよ?
[庇い立てしてくれている男性の背中を見ながら淡々と告げる。
死ぬ以外の道筋もあるにはある。奴らと同じ、屍人になるという。
しかしそのためには“赤い水”とやらが要るという。逆に言えば、屍人に襲われた者は屍人にならない――らしい]
赤い水の流れる川――なるほどね。
[先程視えた光景を思い出し、ひそやかに納得する]
[女性が教えたのは教誨所の位置。
それ以上の情報は期待できそうにない、と肩をすくめた]
信仰になど興味はありませんよ、それより―― え?
どうして友達の名前を?
[表情にも声音にもわずかに動揺が広がる。
一歩前に出て、警棒を手にした男性の表情を窺うように見やる]
[そしてすぐにまた一歩下がり、男性が落ち着いた頃]
……話は後です。
私は教誨所に行きます。
[急くように進む。
目的を果たさぬままここで朽ちるわけにはいかないと、全身で示すかのように**]
籠目 籠女
籠の中の 鳥は
[黙々とか細く空へと昇る煙を眺めては、
見つけた日記の途中に見つけた、
走る文字を振り返る。]
いーつー いーつー 出遭う
夜明けの 晩に
[――不朽体。
独自の宗教で崇めている者が存在するのか]
あそこ信仰の要というほどかな。姫の聖遺物とかならあるけど。ん?
[男への浸食を察し笑み。
こちらをかわしながらも何かを知ってると思しきオトハの真意を、探るように一瞬鋭く見やり]
信仰に興味ないのに教誨所行くんだ。
…暴くのは止せ。どうせ無駄だ。お前も、お前も。もう逃げられない。
まーまずは、赤い水の所へ行こ? そのあとなら何でも自由ー!
[一歩踏み出す]
[そして。ふっと、瞳の色が緩んだ]
あんた。なんでそんなに、必死かなー
鶴と亀が滑った
[護る。
綴られた文字と途切れた意思――]
うしろのしょうめん
[もし、不朽体の存在自体を壊してしまったのなら。]
だあれ?
[この村へ抱く謎は、すこしは晴れるだろうか?]
逃げられるものなら、そうしているさ。
……友達、か。
いや……今、君の視界が見えて。
言葉が幾つか、頭に浮かんだんだ。
さっきもそうだった。
サイレンが鳴る前に出会っていた少年の視界が見えて……言葉が浮かんで。
……君の姿が見えていた。おねえちゃんというのは、君の事なんだろう。彼は今?
[踏み出してきた彼女に返答する。最後は不意に前方の姿に向けて、尋ねかけ]
教誨所。……君は何の目的で……
[歩き出す彼女に向けた疑問は、しかし疑問の形には成り切らず。心配と、信仰への興味から、共に行こう、と思う、その意思が言動に浮かぶのも、遅れて。
ただ、前方を牽制するように構える。教誨所を目指す彼女は、足早に遠ざかっていったか]
……ふ。
[牽制するように構える来伝をせせら笑い]
あいつのこと? さあね。鬼になったか、かくれたのか。…あんた、そんなこと聞いてどうすんの。
[笑みを深めた]
―ジャック・弟の視界―
[どこで調達したものか、弟は弾薬装填済みの拳銃を手にしている。屍人ではあり得ない冷静さを伺わせる手つきで銃を扱い、やがて廃集落へ至り、来伝と、遠目にオトハを発見した。物陰へ潜み、銃口だけを人間の方へと向け――]
[銃声。バレッタが地面へ]
[銃口の前へ立ち塞がっていた女は、弟が涙を流しているか否か、見ず。弾丸を受けた身を折る]
酔狂なんてもんじゃない
ま。この一度だけ、ね
[軽く別れ告げるよに手を振り、背を丸めた*]
……無事かどうかくらいは、気になる。
[頭が重く痛むのを感じながら、男も教誨所の方向へ歩き出そうとして――息を呑んだ。前方の相手が、撃たれ、身を丸める姿を見る]
……――
[撃った姿を確認しようとはせず。男は先に行った彼女を追い、走り出し――]
― 教誨所へ進む前 ―
……分かってますよ、逃げられないってことくらい。
でも暴くのは止めない、赤い水のところにも行かない。
目的意識を失くした生きる屍と化すくらいなら、死んだ方がまだマシ。
[言い切る。最後は少しだけ語気を強め。
それでも女性が一歩踏み出せば距離を戻そうと一歩下がり]
……へ?
[呆気にとられた表情で、問いを放った女性を見やった]
見たいから、それだけよ! 文句あるのっ?
[気の利いた台詞ではないが紛れもない本心。目的を問う声にも答えた形となったか]
―― 地下道 ――
さぁ、時間ですよ。
[梯子を降りていくとすぐに光は乏しくなり、闇となる。
視界は一瞬赤く点滅し、やがて誰かの気配が近づいてくる]
[ちゃぷ、ちゃぷ、ちゃぷ。
足音は、段々と水が増えて行くことを示す。
それが近づいてくるまでただ地下道で立ち尽くしていた]
像はどこで手に入るのかな?
― 教誨所へ進む途中 ―
[遠くから銃声が聞こえて、びくりと立ち竦む]
……まずいかしら。
[派手な音を聞きつけて、屍人が集まってくるのは時間の問題だろうか]
どうか無事で。
[言い残し、再び進む足が、何かを蹴った。
足元を見る。月明かりを反射して鈍く光る何かが落ちている。
拾い上げたそれは重く、手元でじゃらりと鎖の鳴る音がした。
銀の懐中時計]
これってソラのじゃない。
[持ち主は――相棒は、どこに?]
お届けモノだよ。
[ポケットから手紙を取り出す。
湯治場、教誨所、火の見櫓、それらの地下を流れてきた赤い水が、足を飲み込んでいく**]
「知ってる?」
[問いかける、幼い声]
何を?
[問い返す声もまた、幼い]
「この村はね?」
[ラジオノイズ。
砂嵐のように乱れる、視界]
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