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神社の奥から漏れ聞こえるお囃子は、
仄かな灯りを守りささやく如き遠さ。
人出は、肩が触れ合わない程度の雑踏。
広い参道の両脇と、
左手の小道へ立つ縁日が賑わいを見せる。
「よーってらっしゃい、見てらっしゃい
福引、ふくびき、
福を引いてお行きなさい
テキ屋のネギヤおじさんが、
今夜は特別賞を用意したよお」
もぎゅもぎゅと、隣屋台のイカ焼きを齧る
福引屋が客引きの口上をつるつる呼ばわる。
「ほーら、銘刀國宗だ。
そこの坊っちゃん、宝物殿は見たかい?
見ていきなよ、なんたって国宝だ。
伝家の宝刀 抜かぬが華よ
オモチャの刀と知れはせぬってねぇ、
へっへ…」
どこにでもある玩具刀を掲げながら、
調子のいい福引屋はもちもちと笑う。
祭り心地につられて話し込むことがあるならば、
地元訛りのある福引屋はいかにも秘密ぶって
"思い出屋"のうわさを語り聞かせるはずで**
/*
執事国伝統のおまかせおおかみ 知ってた。
他にもおまかせのかたいらしたのかなー。
めでたく開始できました 愛しかない。
ありがたい限りなのです。
[前日の降灰も掃き清められた参道。
福引屋の前で足を止めたのは、
大学ノートを小脇に挟んだ作家。]
…いや、僕は
"坊っちゃん"なんて年じゃ――
[福引屋が呼び止めた対象を探す態で、
背後の雑踏へうろりと視線が彷徨う。]
──あー、やっぱり昨日と全然雰囲気違うんだ。
[昨晩と同じように、歩きながら辺りに視線を走らせながら]
『そこの坊っちゃん、宝物殿は見たかい?』
[夜店の客引きの呼ばわる声に、顔をそちらに向けると]
?
[眼鏡をかけた男性─同世代ではなく、かといって親の世代にしては若く見える─と目があった。]
あの、なにか……?
[視線がぶつかったのは偶々ではなく、相手が元から自分を見ていたような気がした。**]
[手元でリンの澄んだ音がなる]
そうよねぇ。
[合わせた手をほどくと、足元に添えた。背後で部活を終え帰宅した娘が階段を駆け上がる]
なーに、そんなに急いで。
[問に答える代わりに、浴衣を手にした娘が再び駆け降りてきて]
いい加減浴衣の着付けくらい覚えなさい。
ほら、動かない。
父さんの髪そっくり。
扱いにくいったらないわ。
[結い上げた髪をぽんと叩いた]
でもね、本当だったら素敵だなって思ったの。
[慌ただしく下駄を引っ掛けた背中をいってらっしゃいと見送った後、語りかけた相手は去年と変わらぬ姿]
あら、心配?
大丈夫。お友達って言ってたわ。
わたしも婦人会、いってくるね。
[言いながら財布と携帯だけ放り込んだ小さな鞄を手にとった]
[追憶に意識が吸い込まれそうになる、
その刹那を掬うように声をかけられた。
我に返る作家は、
会釈に足りない身動ぎと目礼をする。]
ああ、すまない。
[目の前の若者に、"会った"とも
"見かけた"とも言うのは何か違う気がして]
思い出の中に、
君がいた気がしたんだ。
[作家の補足は奇妙な言い回しになった*。]
[昨日のことであれ、
過ぎ去った時間の記憶はみな思い出だ。]
商品にはならない、思い出だけれども。
[自身のものであるという事実が肝要だ。]
あ、いえ、別にその……。
[すまない、と詫び言をいわれてしまった。
因縁をつけてしまったように思われたかと、少々困ってしまう。
──が。]
思い出の、なかに、ですか?
[あまりにも予想外な言葉が続いた。
思わず相手の顔をまじまじと見つめる。]
それは、今のこの僕?それとも──
そう問いかけた相手の顔に、何か見覚えがあるような気がして。
……ああ、ごめんなさい。変な突っ込み方をしちゃった。
[相手の顔から視線を外して、ぺこりと頭を下げた。
この人は、多分土地の人でも近隣の県の人でもないのだろう。
そう、さっきの相手の言葉を思い出しながら考える。**]
……
[瞬く作家が無言で首を横に振ったのは、
詮無い謝罪合戦になるのを防ぐ些細な業か
はたまた『今のこの僕』を否定したものか。
まじと見つめられても、掠めた思い出は
未だ相手と共有するものではなくて――]
[福引屋が呼ばわる。
福を引いてお行きなさい。――――
ごそり、作家の片手がボケットを探る。
つかみ出した500円玉をおもむろに
福引屋へ渡しながら、若者を見遣った。]
よかったら。
…君も、ひとつ*どうだろう*。
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[思い出屋村の一日目]
現在、定時更新が【07/08 23:00】になっております。
このまま進めるか、
ログのキリよいところで今夜更新するか、
一言メモにてご希望をお聞かせください。
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──「思い出屋」?
[説明するような男性の口調だったが、いかんせん意味が。
屋号なのか業種なのか]
いか焼き・福引き・お面売り……
[何かが心に引っかかる。]
[ウエストバッグを探って、財布を取り出す。]
お目当ては何かあるんですか?
[誘ってくれた人の後ろにつきながら、そう声をかけた。]
あら。
[神社の境内の並ぶ屋台の一角で目に入ったのは、先日婦人会に顔を出した男と少年]
いかやき、ふくびき、おめんうり…
[毎年真しやかに囁かれる噂話を思い出す。言葉を交わす二人の後ろをするりと通り抜けた]
[アセチレンランプと灯籠の明かりに、つやつやとした色白な顔の福引き屋の笑顔が浮かぶ。]
……美味しそうだ。
[店主の食べているのは、たぶん隣の店の売り物。]
[景品を見回した作家が指さすのは、
重ねてぴっちりとラミネートされた
分厚い『シツジノ学習帳17冊セット』。
…前日のご婦人が通りすぎるのは、
新井式廻轉抽籤器の回し取っ手を
慣れぬげに摘んだ作家の背後。]
シツジの学習帳ですかぁ。二本以上当たるなら僕も欲しいかも。
[製造元こそあまりメジャーではないが、なかなか使い勝手の良いノートである。]
もしかして、学校の先生ですか?
[そう尋ねる横を誰かが通り過ぎていった。]
… 美味しそうだ。
[福引き屋が食べるイカ焼きについては、
うまそうであることに作家も同意した。
感想を付け加えるに、]
正面から買うイカ焼きよりも、
たぶん、ずっと。
[隣屋台から手を伸ばす其れゆえに、
きっとあれは旨いのだろう――と]
[『1等が出たら、ごちそうするよ』。
――福引屋が、もちりと不敵に笑う。
『なんだったら、
"思い出屋"から買った思い出の話も』。]
… む、…
… いや、文筆業というやつだ。
[若者の問いには、遅れて応える。]
だから、これも"あたり"なんだ。
[堅物なりに判り難く道化てみせた。]
んー、そういえばつまみ食いって美味しいですよね。
[思わず、くすっと笑ってしまった。]
当たりますように。
[先客の背中にそう声をかけた。
にんまりと笑みを浮かべた主がかけた言葉は聞こえない。]
「 ガランガラン コトン 」
……あ。
[転がり落ちた小さな玉を見て、福々しい男が取り出したのは細長い箱──たぶん中身は鉛筆──。]
ノート、だめでしたね。
[鉛筆1ダースを手にした男に声をかけた。]
へえ、作家をしてらっしゃるんですか。
[男の返事に、目を丸くする。
脳裏に浮かんだのは、この人が、鉛筆を手に原稿用紙と眼鏡越しににらめっこする、そんな光景。]
ノートが当たったら、半分こしましょう?
[言って、福引きの器械の前に立つ。]
「 ガラガラン コトリ 」
[白く丸いものが転がった。]
ええっと……4等?
『はいよ、坊ちゃん。』
[手渡されたのは、大きめな布製の筆入れで。]
『──ふむ、そろそろかな?』
[立ち去り際、福引き屋がそう呟いたのが聞こえたような気がした。**]
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>>#5の件、髪結いさんのご意見をお待ちしています。
本日正午までにご反応がなければ時間を進める予定。
なお、2日目冒頭に天声アナウンスはありません。
各自ストーリーラインに沿った
状況把握RPをお願いいたします。
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