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[六月燈の祭りを明日に控えた神社の社務所。
口下手な作家の取材は、こころよく応じてくれる
ひとびとの陽気さに大いに助けられながらの其れ。
婦人会による灯籠貼りの様子を見学しながら、
手元の大学ノートに絶えず熱心にペンを走らせる。
文豪の回顧録ほどに人生の重みは乗らずとも、
綴る言葉は自身で濾したものであれと 常に。]
[糊を乗せた刷毛を手にするご婦人がたは、
ふと顔を見合わせあうと、誰からともなく
さらさらと竹やぶの葉擦れのように笑って
――作家へひとつ、うわさ話を聞かせた。]
"思い出屋"、ですか……?
[ ――がたたん ごととん―― ]
[いくらかの時間をかけて取材をしたあとに
いくつかの旧跡を巡った作家は、市電に乗った。
芝を植えた軌道敷はTVで見たような覚えがある。
ふたつ先の電停まで、僅か数百mのちいさな旅。
このくらい歩けと咎める知り合いもいない土地。
信号待ちで自転車に追い越されてはまた進む。
物思う作家の横顔照らす陽は、やがて夕刻のいろ。]
[ ――がたたん *ごととん*―― ]
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[思い出屋の開始可否]
遊びにいらしてくださって有難うございます。
開始予定を今夜としておりますが厳しい予感。
今夜23時時点にご参加5名以上で開始、
今夜開始できなかった場合は
廃村期限まで粘りつつ、ご参加4名以上で開始します。
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[かっ こう。かっ こう。
歩行者信号が青になる。電停から歩道へ。
緩く歩を出す作家は、先刻を思い起こす。
――『 あれって本当なんですか? 』
灯籠貼りのご婦人がたのなか、語尾を上げる
そのひとは作家の目には少し垢抜けて見えた。]
[口々に呈されるうわさ話を
ひとしきり聴きおえたあと、
作家がそのひとへ言ったのはこうだ。]
――『 本当かどうか…
確かめてしまうのは、
野暮なたぐいのお話かもしれませんね。』
[そのひとは作家の目には少し垢抜けて見えた。
言い換えると、
野暮をするようには見えなかった。
問うた『本当』は口下手な取材者への
ささいな助け舟だったかもしれないが、]
お祭は明日かぁ。
灯りがともったら、また様子は変わるんだろうな。
[何かのコピーらしい紙切れを手に、鳥居の向こう側をキョロキョロと見回している。
昼間とは違ったTシャツにGパン。近くに寄れば、仄かに石鹸の香りがするかもしれない。]
[赤から濃紺に変わってゆく空の下、白く鳥居が浮かぶ。]
少し中を見てみよっかな。
[ポケットの中に、小銭があるのを確かめると、明日の祭の舞台に向かって歩き出した。]
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