おや。
おや、おや。
[スキャナーの切符読み取りログが明滅する。
アンと、バクと、パオリンと、グリタの数値が急速に増加し、モニタから桁がはみ出して消えた]
ありがとうございます。
[白き女性はウミに声を掛け、汽車を降りる。
キャリーバックを手に、不釣合いな楽器ケースを肩に掛けながら]
(ここから、また――)
[一際大きく列車が揺れ目を閉じ衝撃をやりすごす。
目を開ける前。座席の感覚が消え、ふ、と身体が宙に浮いた]
…いて
[無感動な声。あたりを見渡せば其処は[コピー室]――]
コピー機…ってことは
100年前ではなさそうだな
[頭を掻いて立ち上がる。
扉に手をかけ、深呼吸]
…迷子にも、ほどがある
[{3}年前、いや、その起点が何時かというとよくわからないが、暫く前。扉や窓、あらゆるものが時空を超えてしまう体質に変化してしまった]
もう慣れたし…どうしようも ……ない!
[気合を入れて扉を開ける。その向こう、広がった世界に息を飲み――**]
随分と重い荷物ですね。
[ツキハナの楽器ケースに目を細めた。
女の背中に向かって、低く呟く]
過去の自分に会ってしまうと、時空の間に飛ばされてしまうのでお気をつけて。
……予定外の時間に飛ばされたね。
過去の自分に出会う可能性がゼロな
ところはマシかもしれないよ。
だけど、このままでは間に合わない……
そうね?
寄り道でロスタイムよ。