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[悩んでいた一瞬のうちに、友人は、シンちゃんの傍にいた男性に声をかけられ、なんだか邪魔出来ない雰囲気に、そろそろと後ずさる]
[ふと藤の木を見ると、樹村くんが真剣な眼差しで、語りかけているのが見えた]
[ゆらり、ゆらゆら、回りの藤が、どこか嬉しそうに揺れる]
[その後、再会を喜んだ勢いで告白されたり、一足飛びに将来を約束しちゃったりしてるのを、横目に見つつ]
[ゆっくり、よちよち、相変わらずの歩きにくさに閉口しつつ、藤の木に歩みよる]
[藤模様の扇子 開いて 差し伸べる]
『たとえ、やがて散るのがサダメとしても、花は開いて香るもの』
[あの時は 造花の藤を 振ったのだったか]
『だから、咲きましょう。大好きな、あの人のために』
[ひとを愛した 藤の精の それが願いだった]
きっと大丈夫、みんな、居るから。
[ね? と 見やったのは]
会えて良かったね、キクちゃん、シンちゃん。
[にこり 笑った *ちょっと羨ましいけど*]
[藤の木の傍 もう一人 見つけたのは]
あ、お弁当屋さん!
[まだ 名前は 覚えてなかった]
ごめんなさいね、怪我してない?
[よちよち 近付いて 手を取ろうと]
[伸ばされた手 両手で 握って]
あなたも優しいのね。
ほんと、ごめんなさい。私ったら、逃げてばっかりで。
[ここに 呼ばれた人は みんな優しい]
[そろそろ後ずさる視線の先、友人が手にした豆腐を、話しかけて来た男性に渡すのが見えた]
[顔は隠れていても、微妙に照れているのが、仕草で判る]
[すると、あの絹ごし豆腐は彼へのプレゼント用の豆腐だったのか、と、納得した...してしまった]
頼られてるっていうか、ほんとに同調しちゃってたのよね。
[咲きたくて でも 怖くて]
でも、今までは気付いてなくて...気付けたのはお弁当屋さんのおかげもあるから。
[鍵と言われた その時に だから]
ありがとうございました。
[にこり 微笑んで お礼を言って]
何かお礼したいんだけど...あ、お弁当!
今のロケ弁、あんまり美味しくなくて、不評なのよー。
レンさんが通ってるお弁当屋さんなら、間違い無く美味しいわよね。
[友人は 良い物を見分ける 感性を持ってるから]
監督に頼んでみるから、戻ったら見本のお弁当お願い出来るかしら?
[一石二鳥 私って 天才、かも?**]
[暢気にお弁当の話をしている、そのすぐ傍で、妹のような気がしてる少女と、なんだか気になっていた青年が、懐かしい話をしているのが、切れ切れに聞こえる]
[そういえば、そんな男の子もいたっけと、今更ながらに思い出した]
[『シンちゃん』と、そう呼んだのは、あの頃の思い出が無意識に顔を出したせいだったかも?]
[再会、出逢い、交わされる約束]
[微笑んで、藤の木を見上げると]
[柔らかな風に揺れる満開の八重藤の姿が、見えた気が、した…]
『ツキちゃーん!お待たせ!本番いくよー!』
[耳に届いた声に はっと 我に返る]
あ、え…?
[きょろり 辺りを見回しても 藤色はもう視界にはなくて]
…まさか、熱射病の幻覚?
『ツキちゃん、急いでー!巻いてるから!』
あ、はーい!
『おい、ちょっと待て、それそのままにしといて!なんかいい感じだから!』
[監督の声に応じるように ふわり白無垢の上 藤色が揺れる]
[きっと このシーンは カットされない]
(後で監督に、ギンさんちのお弁当の話しとかないと)
[私は 幸せな花嫁の笑顔を浮かべて *よちよちと歩き出した*]
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