情報 プロローグ 1日目 2日目 3日目 4日目 5日目 エピローグ 終了
[1] [2] [3] [4] [5] [6] [7] [8] [9] [10] [11] [12] [メモ/メモ履歴] / 絞り込み / 発言欄へ
肉親に死を望まれる、ひとカケラ分でも……
[視線を上げ、カウコの頬へ指先を滑らせる。
そこには触れる感じなどあるはずもなく]
あなた達にも、絶望はあった?
[明確な答えを口にしないまま、後ずさり俯く口元は、いつかと似た弧を描いた**]
[一度身震いをして、ぐし、と鼻のあたまを擦る。
憮然とした面持ちの蛇遣いは何かを探す態で室内を
見回し――獣医の記帳机にあった紙を手に取った。]
…耳印、オラヴィ。低体温…
…耳印、ヘイノ。低体温、酷い涙目…
…耳印、ヘイノ。低体温…
…耳印、ヴァルテリ。低体温、過眠症…
…耳印、ユノラフ。低体温…
[読み上げるそれには、ウルスラが診ていた馴鹿の
症状と持主―耳の切目にて知れる―が*並ぶ*。]
ウルスラ先生、…やっぱり…
[人手を求める間ヘイノの家の後に盲目のマティアスや屈強とは言い難いラウリも訪ねたが、どちらも留守であった。彼らが森の傍で会話せずも互いに近くある事も知らず、ひとり戻ればトゥーリッキの視線と言葉―――藪睨みに怯むより前髪に隠れる眉を顰めた]
………はい…
[本来なら人手すら連れて来れぬ侘びを紡ぐのだろうが、ヘイノの姿が脳裏を過ぎりただ同道に肯定を示した。少しでも手伝えればと橇引くロープを求めた差し出しに預かるものはあったか―――息あがるトゥーリッキではなく、横たえられたウルスラを見て息を吐く]
…………
[トゥーリッキが読みあげるトナカイの症状は、ウルスラの書き残したものだろう。項垂れ膝の上で握りこむ拳が震え、歯を食いしばった]
[矢継ぎ早に零される言葉。]
……答えになってねーな。
[ごちるも、問いを重ねることはなく。]
不安なら、お前を捧げる前からずっと。
無力さなら、お前を見捨てた時からずっと。
だから俺は一度も祭壇へは行かなかった。
[指先に滲む赤は何をも想わせず。
娘の赤散る花飾りに視線をやる。]
考えてしまったら――あるいは絶望したかもな。
肉親の死を心の底から望む者なんかいない……。
だからと言って、お前より長老が辛かった
なんて言う気はさらさらないけどな。
[後ずさり、いつかと同じ笑みを称えるに眉根寄せ]
お前の気持ちは、実際にそうならなきゃ実感出来んし
判るとか陳腐なことを言うつもりもない。
[右手で帽子を被り直すもあまり実感はなく。]
が、やはり――気の毒なのは、ドロテアだ。
[呟き、視線を落とした地には今はその冷たさも感じぬ*白*]
[使者の男は、ウルスラの死とその無実を伝えていった。ナイフをしまい、眼鏡と手袋は外しても――見た目は常より赤いまま。己が殺したと。明言しなかったとしても、相手には察せられただろう]
……必ずしも。
苦境を、惨事を、終わらせんと。
[長老に報せる時は、そう付け足して。雪を踏み締め、歩いていく。その足跡は既に赤くなくなっていた。はたと、立ち止まる。感覚を失いかけている両手を見つめ]
……
[ゆらりと、己の小屋へ向かった]
…「やっぱり」何でしょう。
[途切れるトゥーリッキの言葉に、のろのろと顔をあげる。キィ…―――車椅子は軋み、トゥーリッキに向き直った]
………ヘイノが……亡くなってました。
他にも亡くなった方がいるんでしょうか…
[先の言葉への返事も含めヘイノと近しく見えた相手に報せる態で、死者のある場で別の死を紡ぐ。直接的に誰かに殺された様子でない事は、言葉からも知れようか。
眠りの先で感じた気配を想い、語尾はあがらずも零す声は重い。ウルスラを肩越しに振り返り、そこにある死を前に眼鏡の奥の眼差しを*細めた*]
[己の小屋に帰り来ると、赤が散った髪と顔を濯いだ。赤く染まる雪解けの水。噴き出た血が雪に広がっていったように。眼鏡のレンズを磨き、かけ直して]
……、
[火を入れた暖炉の傍に椅子を置いて腰掛けた。
小さな小屋の中には、必要最低限といえる家財の他には、幾らかの書物しかない。
指先で首飾りを摘み、眺めるでもなく見る。やはりところどころに血が付いたそれの中心、錆び付いたタグの裏には、ごく小さく細い文字で男の名前が書かれている。――アルマウェル・“J”、と]
……終わらせなければ。
そうでなければ……
私も、死するか? ……
[炎へ視線を移し、呟いて。
瞼を下ろし――短い眠りへと*落ちる*]
[ウルスラの骸引く橇に、手伝いをと差し出される
レイヨの手へは――す、とビャルネの杖を渡した。
引手の弱さにふらつきがちな橇の軌道は、車椅子の
青年が後ろからその杖で進みゆく傾きを調整すれば
蛇遣いがひとりで引くよりも安定していただろう。]
…
[ウルスラの小屋にて…物言わぬ彼女のしかばねを
横たえた部屋にて。蛇遣いは、レイヨが歯噛みする
微かな音を聴く。憮然とした面持ちは変わらない。]
… ひとが、トナカイに。
病を伝染(うつ)しているのだ。
[「やっぱり」。続きを問う相手への応えは短い。
レイヨは反応でなく、新たな、そして思いがけぬ
死者のあることを告げた。蛇遣いは僅か目を瞠る。]
…? ヘイノの奴が、…死んでただと?
[集められた当初、ヘイノとの遣取りが周囲の目に
どう映ったか当人はしらず。ただ、寒がり同士の
応酬に蛇遣いがにこりともしなかったのは確かだ。
今は完全に気を取られるとはなくも、紛れもない
驚きを隠さずに眉根を寄せる。一度押し黙り――]
夕刻に会ってきたばかりだぞ? いったい…
…「殺されていた」わけではない、のか…
[他にもとレイヨが呈する可能性へは応えず。
蛇使いの指先は、机に置いたウルスラの記録を
ゆっくりと辿った。病気のトナカイの持ち主に
散見されるのは――誰あろう、ヘイノの名。
よくトナカイの傍に居て、絶えず撫でる男の。
毛皮を幾重にも着込み、寒い寒いと言う男の。]
――…
[険しくする面持ちの儘…レイヨを見遣った*]
[男は、多分ラウリであるであろう死体を、肩へと背負った。
ざくり、雪踏む足が深く沈む。
片手に杖と帽子を持ち、足を踏みだした]
寒い、な…――
[背負うものに語り掛けるかのように
独りごとにしては大きな声音を
びょう、と強く吹いた細雪混じりの風が攫って行く]
…色々、俺なりに、考えた…――
長老に報いられるのは、今だろう、と…
――だが、…
[肩の温もりなきものに、語る。
低い声音は低いまま 歩は遅い]
…お前は、傍観出来るなら愉しいと言ったが…
――傍観出来る立場でも、俺は、愉しいとは…思え…――
[ふと
ざくり踏む雪の感触に、足を止める。
積もる柔らかい雪の下に、踏まれ固められた感触が足裏に届く。
もう一歩踏む。
やはり、さくりの下に固まった雪]
…――?
[男は、自身の横に広がる森の方へと顔を向けた]
[そして向かった男は、見付ける事になる。
生(なま)の臭い。
シャリリとした細かい霜柱のような氷に触れれば、自身の体温で溶けたそれは、べたりとした粘ばつきと濃いにおいを届ける。
まだ凍り切らぬ臓は、触れると表面に這う氷が割れて指を押し返してくる。
白い雪の中 千切られた腸が伸びる様や
見返す事の無い抉られた眼窩を見れぬのは
男にとって幸いだったのか不幸だったのか。]
…――…、カウコ、か…?
[千切れた髪の束を掴み鼻まで持って行って匂い、
思い出すのは、――]
[1] [2] [3] [4] [5] [6] [7] [8] [9] [10] [11] [12] [メモ/メモ履歴] / 絞り込み / 発言欄へ
情報 プロローグ 1日目 2日目 3日目 4日目 5日目 エピローグ 終了