[しばらくぶりの[廃屋]の地を踏みしめていた]
懐かしいな……ここの空気。
あれから、どれぐらい経ったんだろう。
[まずは馴染みの場所に顔を出そうとそこに*向かう*]
― 廃屋前 ―
[その鬱そうとした佇まいを見上げる]
懐かしいなあ…
ここだ、ここ
ここに何か、忘れ物をした、ような。
いや…
[ゆるく首を振った後、再度見上げる。そして、そっと*廃屋へ足を踏み入れた*]
うぬ、ぬぬぬ……っ
[玄関の引き戸は、長い年月を経て人の出入りを拒む有様だった。
指が白くなるほど力を込めると、ぱらぱらと埃とも砂粒とも知れない物が落ちてくる]
こなくそー!
[足をつっかえ棒よろしくサッシにかけて、踏ん張る。廃屋の軋んだ音に冷や汗が出るが、他から入ろうとは思わなかった]
[緩急を付けて戸を引く。ぎし、ぎし、と鳴る音と共に、ようやく人一人通れるほどの隙間が開いた]
……ふう。
[額の汗をぬぐう]
馬鹿なことしてると思ってるんでしょ。うるさいよ。
[満足そうな顔に、ほんのりと笑みを足して]
ただいま。
[いつかと同じように挨拶すると、埃の舞う屋敷へ上がり込む*]
うへっ、相変わらず埃臭い…
[注意深く吸い込んだ空気に顔を顰め、
一歩、また一歩進んでいく。]
そうそう、この廊下を進むと[ふとん部屋]があるんだよね。
…あんなに賑やかだったのになぁ。
[狭く静かな廊下を歩きながら思う。あの頃と同じ狭さだけど、あの頃とは違う静けさ
ギッ、ギッ
足音が響くけれど自分以外の声は響かない]
ぬおっ
[廊下の一部が腐っていたようで足をとられる。床下は低く怪我などはなかったが、靴下が汚れてしまった。それとあと、]
び…っっっくりしたあぁあ…
[廊下にすわり足を引き抜きながら、大きくため息をついた]