[水面の揺れる音に、ふと我にかえる]
あ、あれ?オレ何やってんだ?
[繋がらない記憶に戸惑って辺りを見回したけれど、不思議と怖くはなかった。あるべき場所に帰ってきたような安堵感を覚えた]
誰かいるのか?
[闇に向かって問い掛ける]
[闇の中から現れた見知った人影を認めると]
木下か……。
こっちって、どういう意味なんだ?
何かまだオレ……。
[言葉を続けようとした時、不意に、唐突に、記憶が繋がった]
あ?え?
……そうか。
オレ……死んでたんだっけ……。
何で……死んだんだっけ。
木下は?
[「交通事故だよ」と答える彼女の言葉に]
奇遇じゃん。
オレもー……。って、え?
それって、バス乗ってたんじゃねえ?
[新聞の片隅を賑わせたであろう、片田舎でのバスの事故。死傷者は合わせて……]
お前も同じバスに乗ってた気がするんだよな。
あと……あのサングラスのイギリス人も。
それから……。
[他にも見知った顔があったような。そういえばアンも乗っていただろうか?考えようとするが記憶は曖昧だ]
まぁ良いか。
とりあえず、わかってる事は、ここはオレ達が長居して良い場所じゃないって事だよな。
[マシロと言葉を交わしつつ、在るべき場所へと向かいながら。あちら側に残して来た人たちを思った]
[水面の向こう側。誰かが泣いている気がして手を伸ばす]
何?何で泣いてんの?
[思わず伸ばした手が、一体誰を慰めるためのものだったのか自分自身にもわからなかったけれど。懐かしくて柔らかな感触が手の平に甦える]
泣くなよ、な。
[呟くと、その感覚を確かめるように、手を*握りしめた*]
[マシロの穏やかな様子に頷きながら]
だよなぁ。
案外、静かな気持ちだよな。
[心を乱されるのは、残してきた人たちの悲しみの気持ちが伝わってくるからで]
引き止められると、このままいくのは辛い。
なぁ?木下。
そういえば。レン……。
[泣いていた悲しい魂を思い出す。多分、あちら側にとても大切なものを残してきてしまったのだろうな……と思って]
あれ?てことは、オレ、相当薄情かも。
ごめんな。父さん母さん。それから……。
[と、向こう側に思いを馳せて。マシロの言葉>>+16に]
うん。そうだな。
オレ達、多分、笑顔でおくってもらった方が幸せだよな。
随分勝手な言い分だけど。
[これが、あちら側とこちら側に別れてしまった存在の違いなのだろうか]