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[雪崩か。
村瀬の言葉に若干思い当たって目を逸らす。
ごくたまに発生する事はあっても、そんなに頻繁ではないはずだ。
机の上は常に整然としている、とはあまり言いがたい状況だが]
あっ、お前ら、気をつけて帰れよー
[下校の生徒が大勢集まる玄関で、すべての会話は聞き取れない。
ひとまず、身近な生徒たちに声をかけつつ、自分も学校を後にする]
─松柏駅─
あ、恐れ入ります。
[小鳥遊から差し出された水筒を受け取る]
そうですね…やっぱり男なんで、どちらかというと多い方だと思います。
お茶、美味いですよ。ありがとうございます
[熱い茶を一口すすったところで、同じ警笛を聞いて顔を上げた]
─列車の中?─
[何か警笛のような音を聞き、まばゆい光に包まれたかと思うと、いつの間にか場所が変わっていた。
どうやら列車のような内部。
傍らに小鳥遊が居る事を確認した後で、周囲をこわごわと見回す。こんな体験は後にも先にも初めてだ]
…なんだ、ここ…?電車の、中…?
[列車に乗り込んだどころか、改札を通った記憶もなかった。
ただ、分かるのは、周囲には同じく困惑顔をした複数の男女…そのほとんどが、顔を見知った学園の生徒だと知る]
お前ら…?どうして?
[何が起きたのか、すぐには飲み込めない。以前聞いたかもしれない偽汽車の噂についても、すぐには思い出せなかった]
───!
[動揺していると突如悲鳴のような声を聞き]
二宮?おい、どうした?!
[小鳥遊と共に倒れた女生徒の側に駆け寄る。
身体にまとわりつく鬼火は本物なのか、幻想なのか。炎が消えた後で、恐る恐る彼女の身体を改める。
鼻の上に手をかざすが、息が当たらない。
首元に触れるが、そこに脈動はない]
な、んだ…これ。
[どこかで気が触れたような椎名の声を聞いた気がしたが解釈するまでに至らない]
[椎名の声の代わりに、やたらと響いて届くのは誰が発しているか分からない声。
鬼がどうとか、帰してやろうとか、…一体なんの事だ]
……。
[呆然としている片手には、小鳥遊から借りた水筒が握られている。
持ち主がその手から取り上げるのは、いとも簡単にできるだろう]
あんた、何言ってんだ…?
[現実ともつかない状況に、突如拍手を伴い雄弁に語りだす見知らぬ大人。
狂気に取り憑かれているとしか思えない]
この状況について、わかってんのか?
そもそも、あんたの仕組んだ状況なのか、これ
[近藤に食ってかかるように詰め寄る。鬼がどうたらはともかく、それを…どうするだって?
あまりにも非現実的で、それを受け入れる事は出来そうになかった]
[この状況に置かれた憤りを、近藤にぶつけている最中に、小鳥遊の声が間に入る。
…ああ、そうだ。
隣の車両に移る…それもよくわからないが、そうせねばならない、という事だけは何故かわかる]
え、…ええ、そうですね。
小鳥遊先生の仰るとおりだと思います。
[彼女に同意を示し、ついでに差し出された水筒をもう一度受け取った。
ひとまず、落ち着ける状況でもないが、落ち着こうか。**]
[小鳥遊から借りた水筒で茶を一口頂く。
すぐに持ち主にそれを返すと、塾講師と名乗った近藤と共に二宮の遺体を座席シートへと移した]
……。
[青ざめ物言わぬ顔は眠っているようだ。授業の時を始め、生前の様子を知っている故か、痛ましくてたまらない。
今いる状況から帰れたとして、保護者にどう説明をつければいいのだろう]
[だがそれを悩むのも、ここから出た後の事だ。
どうやら、半年前の青玲学園で起きた事がこの身の上に現実として起きているのだと自覚をする。
椎名の豹変や、この状況を待ち望んでいたかのような近藤の態度は怪しいが、少なくとも戯言ではなさそうだと解釈する]
…これも、使おうか。
[スケッチブックを取り出し講釈を垂れる近藤の後で、ポケットから手のひらに収まる大きさのボイスレコーダーを取り出す。
パトロールの際、万が一有事が起きた時のために、情況証拠を保存しておくための備品として、学園で配布したものだった]
まだ混乱して、状況が把握できない生徒も居るだろう。
落ち着けたら後で会話を遡れるように。操作が分からなかったら、先生に聞いてくれ。
[既に死人が出ている状況が現実だと受け入れざるを得ないのであれば、この状況から打開する策を講ずる必要がある。
不安そうな顔を向ける生徒たちに、繰り返し案ずるなと頷き返す。
こうなるきっかけとなった深夜外出に関しては、無事に帰れた後でみっちり小言をくれてやればいい。
同僚の小鳥遊や生徒たちに向けて、空いている座席へと腰を下ろすように促す。
座るという行為だけで、いくらか落ち着けそうな気がした]
二宮をこうした元凶…あの鬼火を操る者がいる。
[得体のしれない何か。頭の中に直接訴えかけてきた声に従うと、どうやら何かしらの手を打たないと、自分たちも二宮の後に続く事になるらしい。
周囲を見回す。
どうやら、それを執り行う人物がこの中に二人、含まれている…と。
ほとんどが今日、学校で会った生徒たちばかりだ。今は皆パニックに陥っているが、その様子は平常に居た姿からは何らかけ離れてはいない]
…つまり、見た目にはすぐに分からないって事か。
それを見極めるためには、特殊な能力が要る…。なるほど、…つまり俺たちの対抗手段は、その能力って事なのか。
[頭の中を整理しながら自然と独り言が漏れる]
あー…俺も…いや、先生もその意見に賛成だ。
ひとまず、見える者だけ名乗りでればいいかと思う。
[小鳥遊や村瀬、櫻木の声の後で同意を示し頷く]
本当は全員把握したい所だがな…鬼の立場からすれば、能力を持つ者は邪魔だろう。
邪魔を排除しようと、…二宮と同じ目に合わせないとも限らない。
…で、隣の車両へ移る者を各自が希望を出し、投票する。
同じやり方で、聞く者がどうにかして名乗り出る。
[投票で決めた人物を隣の車両へ移らせるというやり方が、果たして正しいのか分からない。
ただ、鬼と疑わしい人物を何らかの方法でこの場から外さねばならない、という使命感に似たようなものは抱いている]
…こんな状況だが、少しでも休める者は休んでくれ。
投票で誰かを移らせる…というのは、よく見極めなければならない。少しでも冷静に…取り乱したら、鬼の思うツボだからな。
[少し前の自分にも言い聞かせるように伝えると、シートに深く腰を埋めて瞑目した。
眼の奥に圧すような痛み。頭が鉛のように重かった]
[この状況になれるには、もう少し時間がかかりそうだ。
だが、次の鬼火が現れる前に…──敵が仕掛けてくるなら、必ずあの炎は現れるだろう──手を打たねばならない]
やられる前に…やらないと…
[周囲の会話に耳を傾けているうちに、疲労からか、わずかな間だけ意識が遠ざかる。
もう少し、色んな人物の声が聞きたいと願いつつ、その間の会話はボイスレコーダーに拾わせる事にして、しばし休息を取る事にした。**]
……ん…ッ…
[短い間のうたた寝から目を覚ますと、目を瞬き周囲を見回す。
一瞬、列車の中でなければいいと考えたが、その願いは虚しく消える。
ボイスレコーダーを操作して、意識を飛ばしていた間の会話を振り返る。
列車の中を見まわりに出た事や、名乗り出る方法について意見が交わされている事を知る]
…自己紹介か。
遅くなりましたが、私は煌星学園の生物教師です。一、二年生の生物を受け持ってます。
[唯一初対面である近藤に向けて軽くお辞儀をしてから述べる]
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