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―日本列島の南に位置するとある県―
『閑静な山奥で、リフレッシュしませんか?
みんなで昔のことを語らいましょう!』
[お世辞にもわかりやすいとは言えない地図が添えられた手紙。
その場所が何を意味するのか、アンは知っていた。
やがて彼女は北へと向かう]
―煉瓦の家―
[建物は一階建てに見える。
呼び鈴らしきものもなく、扉に鍵はかかっていなかった]
誰かいませんかー?
[薄暗いが、埃ひとつ積もっていないことは把握出来る程度だ。
屋内の壁は漆喰で塗り固められており、床は煉瓦が剥き出しだった。
スニーカーを脱がずに廊下を進んで行くと、いくつかの部屋があった。木製の扉に鍵はない。どの部屋にも小窯が一つあるようだ。
煤けてはいるが、それがいつのものなのかアンにはわからない]
[探索を続ける。その家は井戸水とランプの明かりで過ごすように出来ていたが、ランプのつけ方がわからない。
建物の奥、大広間へ辿り着く。
傍らの黒板に自分の名前が書かれているので目を見張った。
視線を移すと、装飾が施されている扉が突き当たりの壁に]
―地下貯蔵庫に続く扉の前―
[その先が地下貯蔵庫に繋がっていること、更に奥には偶像と祭壇、大窯があることを、今のアンは*知らない*]
―鈍行列車のボックス席―
何年経つんだっけ?
[達筆な毛筆体の手紙を眺めている。
故郷を離れたのは、村が無くなるより数年前だった。
記憶に残っていることなどほとんどない。
父の新盆にすら向かわなかった土地に、遅い夏休みを利用して訪れようとしていた]
食料足りるかな。
[隣の席に置いた、キャミソール姿には似つかわしくない大きさのリュックサックを見やる。
ジーンズのポケットに手紙をねじこんで、窓の外を*眺めた*]
ホントにこの先に村なんてあるのかな。
生き物の気配が無いんですけど。
[細かく枝分かれした田舎道を、右往左往しながら]
ちくしょー!こんな地図描いたの誰だー。
[手紙とともに送られてきた手描きの地図を、怒りにまかせてビリビリと破いた]
……あ。
―村までの道―
[駅から村までの道のりは予想以上に長い。
晩夏とは言え、日差しはまだ強く、木陰に入る]
目に優しい景色ではあるけど…。
体力的に厳しいのは、もう若くないってことかな。
[困った様子で溜息を*つく*]
[ペットボトルの水をあおり、襟元から風を入れる]
これは…外国のカラッとした暑さがうらやましくなるな。
なんだって、僕は手紙一枚で呼び出されてるんだか。
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