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─煌星学園・教室─
[土曜日。
本来学校は休みだが、少し前に流行ったインフルエンザで学級閉鎖が行われたため、一部のクラスでは補修が行われていた。
明らかに不満顔が並ぶ生徒たちの前で授業を行い、終業を伝えるチャイムが鳴るや否や、教室中が開放感に沸き立つ]
クレープは一旦家に帰ってから行けよ。
[ぼやく生徒、成瀬の声が耳に届いて軽くたしなめる。
下校中の寄り道は禁止と校則で定められている以上、お決まりの小言を口にするのが教師の役目だ]
[ざわめく教室を後にして廊下に出る。
職員室へ戻る途中、この後の予定について考える]
……パトロール、かぁ…
[せっかくの土曜日だが、今夜は仕事だ。思わず重い溜息が出る。
教師たちが交代制で、学校や主な通学路の周辺をパトロールする決まりになっていた。
半年前、同じ市内の青玲学園で集団失踪事件が起きてから、保護者たちの強い要望もあって、PTAと教師たちの見回りが始まった。
それなりの成果はあって、実際に生徒たちが非行に走る割合も減ってきている]
[集団失踪事件の直後、戻ってきた生徒たちの話によると、オカルトの噂について検証しようとしたのが発端だったらしい]
オカルト、ね…
[そういえば、この学校にもそんな話があったかどうか。
生徒から聞いたかもしれないし、別の場所だったかもしれないが……すぐに思い出せるほど、その記憶はずっと深くに埋もれていた**]
─職員室─
[補習から職員室に戻ると、椎名バクと入口ですれ違う]
おま、椎名…!
[声をかけると、相手は小言を免れようとしたのか廊下を駆け出す]
私服で学校に来るな、こら!
[あっという間に小さくなる背中に向けて、その場から声を発するが、果たして届くかどうか]
…あいつ、出席日数足りるんですかね?
[自分の席に着くと、隣に居る小鳥遊に声をかけた。
あいつとは無論、椎名の事だ。
椎名が私服で学校に居たという事は、おそらく補習に出るためではないだろう]
[会話を交わす最中で、椎名と小鳥遊のやりとりを聞いたかもしれない。
ああいったタイプが、夜中に校外でなにかやらかすんだ、と一瞬嫌な胸騒ぎがして、すぐに首を振って打ち消す]
そういえば、小鳥遊先生…今夜のパトロールですが、参加されるのでしたっけ。
[彼女もメンバーだったかもしれないし、違うかもしれない。違うならきっと否定するだろう]
どちらのコースですか?
私は松柏駅の方面なんですが。
どのみち、帰りは終電がなくなる時間です。
私は一旦帰宅してから、夜に車で学校に来ようと思います。よかったら帰りは送りますよ。
[そこに下心はない、はず**]
─職員室─
[隣席にいる同僚の小鳥遊と、少し会話を交わした後で帰り支度をする]
それじゃ、小鳥遊先生。
お先に失礼します。今夜またよろしくお願いします。
[会釈して席を立つ。
これから一旦帰宅して、腹ごなしをしよう。あと、取れたら仮眠も少し…なんて思いながらも、録画した映画や積んだ本の消化に当ててしまいそうだが。
補習を終えた後に教室で成瀬に言われた通り、目下彼女なんてのも居ない]
忙しくてなぁ…彼女を作る余裕なんてないんだよ。
[誰ともなしに、そっと一人でごちてみる]
─廊下─
[昇降口へ向かう途中、自分が受け持つ教室の前を通りかかる。
生徒たちが数名残っているようで、何やら賑やかに話し合う声が廊下にも聞こえてくる]
……?
[誰かの声が、松柏駅と言ったような気がした。
今夜、自分が見回る場所と合致する地名に一瞬嫌な予感がする]
───ガラリ。
[教室の扉をわざと音を立てて開ける]
こらー、お前たち。
補習が終わったんだから、さっさと帰れ。寄り道すんなよー
[松柏駅が何だと言うのだ。
頼むから面倒事を起こすなよ。みんないい子だから、今夜は大人しくしていてくれ。
祈ったところで、果たして彼らに届くかどうかはさておき]
[教室から出て行く生徒たちと一緒に、他愛もない会話を交わしながら昇降口へと向かう。
その中に、私服姿の村瀬六花の姿を見かけたら声をかけただろう。
補習に彼女が欠席していた事をすぐに思い出す]
村瀬ェ、今日補習だったの、忘れちゃったか?
[軽く笑いながら、彼女の頭をクシャリと撫でる]
仕方ないなぁ…──その代わり、来週は宿題たくさん出すからな。
寺崎に手伝ってもらってもいいぞ。
[なんて付け足してみる。
一学年の頃、寺崎が村瀬に何かと世話を焼いていたのは知っている。**]
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