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……もう、三人しかおらんくなってしまったな。
[ヨシアキとナオを見て呟く。アンとシンヤについては、はぐれているだけだという可能性もあったが、あまり期待は出来そうになかった]
そうやな。
もう、とにかく行くしかないのかもしれん。
[こくりと、頷いて]
そう。
確か、一階の……
一年三組の隣んとこだった筈や。
こっから降りると、丁度近いじ?
[ヨシアキの確認に頷き]
ほうやな。何とか頑張らんと。
長便所しとる場合やないさけ。
[ナオの様子を窺ってから、階段を降り始めた]
何なら写真撮ってやるじ?
二年男子Y・S、夜中に女子トイレに侵入!
なんて、タイトルも付けて。
ほうしたら、やらし赤飯確定やな。
[軽口にはやはり軽口で返す。沈黙が躊躇われるのは、少女も同じだった。かつり、かつり。一歩一歩、下層へと向かい]
何言うとるん、祝い事はあるに越した事ないやろ?
何でもない日万歳もアリなくらいなんやから。
食べるなら、赤飯よりちらし寿司かなんかがいいわ。
鳥飯とか。
あと、そぼろご飯なんかもいいじ。
ナオやったらどうや、何食べたい?
[ナオにも声をかけつつ、踊り場を踏み]
アレや。
ヨシアキ君も大きくなったなあ……みたいに。
親戚のおじさんとかがしみじみ言うんやよ。
赤飯パーティーなんて、いいかもしれんな。
いや、飯パーティーか。
好きやぞー?
やっぱり日本人やからな。
日本の米。米米米米。
納豆にネギを刻むとうまいんだー、ってな。
[知る歌の歌詞を口にしては、笑い。最後の踊り場を通り過ぎる。廊下に着けば、一旦止まって]
だら。飯は健康食やぞ?
食べ過ぎでもせんなら、むしろいいもんや。
[などと話しているうちに辿り着いた廊下。其処に満ちる気配に、ふっと口を噤む。あらぬ視線を、肌に触れる冷たさを、感じた。袖が掴まれたなら、避けはせず]
……
[ただヨシアキの方を一瞥し、続けてナオの方を見やり、無言で頷いた。正面を見据え]
ほうか。菓子なら持ってきとるさかい。
後で一緒に食べんけ?
[ナオには、そんな風に言っていただろう。「後」は必ず来る、というように]
ん。ほんなら、行こうか。
……二人とも、気を付けまっし。
[かつり、廊下を歩き出す。二分とかからず、目的の女子トイレの前に辿り着いた。もう着いてしまった。そんな事を、一瞬だけ思いはしたが。
入り口から、トイレの中を見る。此処からでは並ぶ個室は見えない。奥にある小さな窓が、きしり、と小さく軋む音を立てていた]
手前から二つ目の扉を三回叩くんや。
ほんで、花子さん遊びましょ、って言うんよ。
……ほんなん。
私がどう言うかなんて、わかっとるやろいね。
[ヨシアキの問いには呆れたように、笑い混じりに返した。ヨシアキに先行の危険を冒して欲しくはなかった。そして、ナオにも]
私が行くわ。
ヨシアキは、「そん時」止めてくれんけ?
信頼しとんやからな。
[ヨシアキをじっと見据えて言い]
どうしてもそれが駄目なら……
私とヨシアキで、じゃんけんや。
[半ば冗談半ば本気のように続けて、に、と笑った]
良し。
[ヨシアキの返事を聞けば頷き]
おいね、しっかり握っとるげん。
ちゃんと引っ張りまっし。
[再度頷きながら、差し出された手を左手で握った。握り合わせた手を一度見てから、トイレの中に入り込み]
……行くじ。
[二つ目の個室の前で止まり、その扉を見つめる。左側に立つヨシアキを一瞥すると、一つ深呼吸をしてから、扉を叩いた。こん、こん、こん。三つノックの音が響き]
……はーなこさん。
遊びましょ。
[個室に向かい、声をかける。と、次の瞬間、ばたん、と大きな音を立てて扉が――外開きの筈のそれが――内側に開いた。個室の中は、一面が血で真っ赤になっていた。便器からも血が溢れ出していて]
[便器の前の床には、頭があった。床が血の水面であるかのように、それは顔を覗かせて笑っていた。おかっぱ頭の、真っ白な肌の少女――花子さん]
!
[それらを視認するが早いか、花子さんの頭の横から、やはり真っ白い手がぬるりと長く伸び、素早く少女の右足首を掴んだ。そしてそのまま、ぐい、と引っ張る。それはヨシアキが左手を引っ張るのとほぼ同時で]
ヨシアキ……!
[その名を大声で呼ぶ。どぷり、と右足首までが赤い床に――血の沼の奈落に入り込み]
[酷く強い力で、足が引きずり込まれていく。恐怖のせいもあったか、体が固まったようにうまく動かなかった。それでもヨシアキの手を離す事はなく]
っ……!
[ずるり、足が滑る。体がどぷりと血の沼に落ち込む。ヨシアキの手を握る手に、右手も重ねた。視線はヨシアキと花子さんとを順に見て]
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