情報 プロローグ 1日目 2日目 3日目 4日目 エピローグ 終了
―少し前―
[ゆらりと、一瞬きすると蝋燭の炎のように消えてしまった老婆を目にして、椅子を蹴飛ばすようにして立ち上がり、厨房へ駆け込む。
そこに居るはずの少女の姿はなく、代わりに墓守が一人、布巾を洗っている。]
―あ。
遅かったか…な。
あの子も。
結局>>2:67僕の呼びかけに、どんな顔をしてくれたのか…、見られなかったか…。
―――ん?
>>5 踊り子さん、いや、キャロル。これを見てください。
メイの使っていた、マグカップの中に入っていました。
[そこには一枚の桃色をした小さなメモ。
少女らしい、丸みを帯びた字で書かれている文字は
『皆大好きだよ・・・じゃぁね!』]
そしてデボラさんは最後に>>2:131「死んだとは思えない」と言っていましたね?
つまり僕は、生前の、はちきれんばかりに幸せな気分で、曾孫のセーターを編んでいた、あの頃に戻っていたのだと思うのですよ。
いささか勝手な解釈なのは否めませんがね。僕はそう信じます。
つまり…。私も目が覚めたよ。悔いを残したままでは死んでも死に切れない。
ハーヴェイ。まずは結婚おめでとう。
そして―、
何をそんなに怒っているのか、聞かせてくれないか?
理由は君を処刑にかけた事自体ではないだろう?
その前から、何故か君は苛立った様子だった。
何か他に理由があるんじゃないのか?
[と、真っ直ぐに青年の瞳を覗き込んだ。]**
―今となってはいつか解らない時―
[はらはらと。雪のように舞い散るのは林檎の花。
日曜の、礼拝に向かうような改まった服装で少女は目の前に居る。]
え―…。今なんて?
[聞こえているが、理解すらしているが。聞き返されて、生真面目に少女は繰り返す。]
シスターに…って。解ってるのか?それはつまり、「神の―
[花嫁」に、と続けようとして、17歳の少年にはいささか刺激が強い言葉で口篭もる。]
「牧師様と何度も話し合ったわ」
(親父…!)
「そしてこれは私の決断でもあるの」
[勢い込んだところに、穏やかに言われ、怒りが別の感情へと変化するのを感じる。]
「だって―、いずれあなたも、牧師様になるのでしょう?そうすればずっと、ずっと一緒に―…」
(頬にかっと血が上るのを感じる。)
「僕は牧師になんてならないよっ!こんな村に、閉じ込められるのなんてまっぴらだっ!」
(言ってから、しまった、と思う。
本当に言いたかったのは、そんな言葉…?)
(傷ついた表情に、いたたまれなくなって駆け出した。)
父さん…!ぼくを、僕を隣町の音楽学校に通わせて下さい!
(その足で、父親を探し出し、これまで何度となく出した要請をする。)
「神学校へ通う学費なら、出してやる」
(そしてまた、何度となくなされた問答。
その夜、僕は村を出た。)
―今となってはいつか解らない夜―
「こんな時間になんだよぅ、―ネリアスぅ」
[幼い頃にしていたように、楡の木を伝って、少年の部屋の窓から進入する。目をこする姿に、少し悪いと思う。]
なあこれ、―テラに渡しておいてくれないか?
「うん、いいよ。でもどうして?
あとで渡したらいいのに。───…コーネ……。」
いいから、頼んだぞ。
「……ねえ、どうして…」
詩の勉強、続けろよな!いいのができたら、曲つけてやるから!
(多分、遠い世界のどこかで。)
[それだけ言うと、するりと窓の外に抜け出す。]
(渡したのは大事な、母の形見の十字架。
そして僕自身の形見。
その時は、けっして故郷に戻るつもりはなくて。)
(彼女は僕ではなく、「神」を選んだ。
そう思って恨んでいたけれど。
実はそれしか、彼女には選択肢が無かったとしたら―?
彼女の「特別な」何かの故に。)**
―少し前―
[>>27 以前には決して見ることのできなかった、睦ましげな親子に、これまでのようににこりと微笑むが、>>29墓守の言葉にふとひっかかりを感じて眉を曇らせる。
だが一瞬後、にやりといたずらっぽく微笑むとこう答えた。]
>>2:119「ある。と思えば、そこにある。」
と、言ったのはあなた自身でしょう、ユージーンさん。
私は私なりの見方を信じるだけだ。それは、たぶんあなたも。
[週に数度、同じ食卓を囲んでいた顔を眺める。
(「ぼっちゃん」は止めてくれと、何度も頼んだものだった。私は彼を、その職業を尊敬していたんだ。)
はて?
[ほろりと、無意識な疑問。]
あなたのことは、誰が埋葬したのでしょうね…?
―現在―
ハーヴェイ!
(取り乱した青年をなだめるように強く抱きしめる。
今はぐったりとしたその体に、無心に「ごめんな、ごめんな」と口にしようとして、それは何に対した詫びかとふと我に帰る。
その視線を辿ると…)
流れ者?
(「旅」
私と彼との共通項だ―。)
『なんだ、同郷かぁ?!』
(豪放な笑い声が耳に蘇る。)
私が、彼を…いや、彼と村に―?**
>>51 ―――っっ!
ハーヴェイ!!
[突き飛ばされて、追いかけようとするが足はそのまま止まってしまう。]
(解らない…。
彼が怒りを感じているのは、私が流れ者を連れて来たことなのか、それとも私の帰還自体になのか…?)
[去り際の書生の気迫に触れ、ここで新たな、根本的な疑問。]
そもそもなぜ私は彼を処刑した…?
それは謂れの無い事ではないはず。
―少し前―
>>59 そう―ですか、シスター。
良かった。ありがとう。
[言うと同時に、馴染みとなった眩暈と共に思い出すのはいつかの光景。
雪原に、既に二つの山は運び込まれ、簡素な暗い色のコートを着たシスターが、その一方の傍に膝まづいている。]
(今日も誰よりも先に来ている。
挨拶しようと思うが、今正に「祈り」の最中のようで、声を掛けるのは控える。
ぽうっ、と手にした十字架が光を放つ。
それは元々は私の母の物。
もしかしたら、母もこうした力を持っていたのかも知れない。)
「見つけましたわ…。この方がじん―」
(気配に敏感な彼女は、私を認めると、泣き笑うような表情で呟く。
そこには勝利の高揚感はなく、ただ、ただ、やりきれない思い。)
(やっと解ってきた。
この能力のため、彼女は教会に組み込まれる運命だったのだと…。)
―少し前―
(ユージーン>>53には、彼らしいと感心するものの、「しあわせ」なら問題なかろうと苦笑して、返答は差し控える。)
>>55 はい、残念ながら私もユージーンさんがどうなったのかは、覚えていません…。
実は自分がどうなったかのすらとんと…。
どうせろくな事にはなっていないと思うのですけれどもね…。
[と自嘲する端から>>69が耳に入り]
流れ者さんの言う通り、いずれ誰かが墓守を引き継いだと思いますが―…。
生きながらに、ここに…?ですか?
[少しぎょっとする。]
>>74 ギル…??!
[豹変ぶりもさることながら、耳朶を打つ言葉に耳を疑う。]
『村人は、旅先で出会う人々の誰よりも騙しやすかったぞ。』
[これまで思い出した僅かだが、確かな記憶が一気にフラッシュバックする。
「村の総意」の名の下に手に掛けた命たち―。]
きさ――ま―…!!!
[我を忘れて踊りかかった。]
きさま!人を何だと思ってる?!
人の気持ちを…一体なんだと…――!!
[馬乗りになって、首をぎゅうぎゅう締め付ける。
男の顔は見る間にどす黒くなってゆく。
―が、その時、脳裏に刺すのは一つのたおやかな影。]
ステラ…。
(思わず零れる名前。
隣人たちの死を、見詰めつづけて来た目。
思い出す旋律。)
>>82 …すいません、ヒューバートさん。
[よろよろと立ち上がり、仕立て屋を助け起こすと、竪琴の前に掛ける。]
思い出したよ。
母から、十字架と一緒に貰った歌を。
(いつか、あの子に歌ってあげなさい、と。
母はこの日を見越していたのだろうか?
その曲の名は、「悲しみの聖母」(Stabat Mater))
[竪琴の弦が柔らかな音を奏で、朗々としたテノールが部屋を満たす。]
悲しみの母は立っていた
十字架の傍らに、涙にくれ
御子が架けられているその間
呻き、悲しみ
歎くその魂を
剣が貫いた
ああ、なんと悲しく、打ちのめされたことか
あれほどまでに祝福された
神のひとり子の母が
そして歎き、悲しんでいた
慈悲深い御母は、その子が
苦しみを受けるのを目にしながら
情報 プロローグ 1日目 2日目 3日目 4日目 エピローグ 終了