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[だって、たいしたことは話していない。
なんで、そんなふうに思ったのかなんて聞いてはいない。
何も知らないのは、同じだった。
繋がっていても、知らない。
聞くこともしなかったし、話すこともなかった。
それなのに、どうして――]
[一度、心に決めた選択。それを再び音にした。
利害ではなく信頼で繋がるを求めるならば、
返らずとも、こちらからそれを切ることはしない。
切ってはいけないと、あの時見た金の目に思う。]
……グリタの世界に映す光は、
やはりグリタ自身の世界を照らすべきものじゃないのか。
2ndを守ることで10thの信じるを守った気になるのは、
あなたの思い違いなんじゃないのか。
それで彼が…グリタが喜ぶのか。
…俺は、違うんじゃないかと思う。
だからあなたがマシロを守る理由に、俺は頷けない。
ただ、2ndと会って彼女を好ましいと思うなら。
彼女自身を生かしたいと思うのなら。
ゼンジさんは、ゼンジさんの心のままにあればいいとも思う。
だから俺は……、
……あなたが2ndと出会って、どんな選択をするのか。
それを、見ていようと思う。
[静かに告げて、口を噤んだ。*]
[グリタの死体を見る。
とりとめのない疑問は浮かんでくるけれど。
口に出す事はしない。
ただ、人を守るより、自分を守ればよかったのに、と思う。
長いやり取りを交わしたようで、たいした言葉を交わしていない、過去のやり取りが手帳に残っている。
互いに確認したのなんて、ただ、生き残る意思だけ。
それも、叶うかどうかもう分からないけれど――]
生き残る、よ。
[小さく、口の中で呟いた]
そう、グリタさんは私には何も大事なことはおっしゃらなかった。
多分、私はグリタさんにはなんでもない存在だったのでしょう。
それは、よくわかっています。
[思い出す。
声をかけて、彼は振り向きもしなかった。
そう、グリタの心の中は、とても忙しかったのだ。]
だから、
もし、マシロさんがそうならば、守ろうと思う私の気持ちは私のエゴです。
きっと正解ではありません。
でも、私はそれでも、彼の世界を愛して生き抜こうとする彼を応援したかったのです。
そう、実は、彼を殺したことを、後悔しています。
貴方から聞いただけではなく、ちゃんと、グリタさんに聞きにいくべきだったと、
グリタさんの守りたい者というのをきちんと聞くべきだったと…。
しかし、彼も、彼の世界も返りません。
だから、はい、
マシロさんには、きちんと聞きます。
聞いて、
彼女の世界、グリタさんが守りたかった世界、
それをまず、確かめたいのです。
[そして、やや、沈黙のあと…。]
ええ、ありがとうございます。
[それは、カノウのほうを向いて…。]
[ただ――
きっと、あの長いような短いような、そんな言葉のやり取りの空気を表現するなら。
家族とか、兄弟とか。
仲間とか。
そんな、感じかもしれない]
おお、熱いけど味はいーじゃん!
たこやきうめーっ。
[絵日記を開きながら食べていたので、
しょーもない感想が、
神の日記によってうっかり実況された]
・・・・・・うわ、?!
[自分の発言が赤い吹き出しとして現れたので、
慌てて擦った。しかし指先で消せるものではない。
発言は、消えない。
言った言葉は、戻らない。
だから何かを喋るということは、
それを、覚悟するということだ。
…改めて思う]
[…なお一番読んでいたのは、知ることが出来るようになった1stの行動だったりする。
カボチャはこういう時に親切だから、
ことさら詳細に1stの行動を伝えてくる。
昨夜の5thとの遣り取りも、しっかりと。
かみさまのにっきは、任意の言葉を運ぶけれど
自己申告のものしか伝わらない。
けれど日記は別だ。
未来には嘘もあるけれど、
過去は嘘をつかない。]
…そうか。
[ゼンジのこたえに、長い言葉は返さなかった。
返したのは、ごく短い了承の意のみ。
丁寧な礼に、同じく目を伏せて気持ちのみを表す。
それから暫く。
日記は、2ndの現状を伝えて来た。
”2ndは5thと合流した”
”2ndは4thと会談した”
それらを、端末は機械的に耳朶に転送して来る。]
サバイバル・ゲーム…、か。
[理不尽なゲームだ。
気持ちや肉体の強さによらず、
運や、少しの行動の差が生者と死者を分かっていく。]
悔いも何もなくせない。
そういうこと…、なのかな。
[独り言が零れた。
いつしか思考はゼンジとグリタに向けたものから、ソラのことへと向けられている。
深い、ため息が落ちた。*]
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