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[恒例とも言うべき、親戚の集まり。
家を出てからは、両親と顔を合わせたくないというのもあってずっと顔出しはしていなかったのだが]
……行けるかどうかは、親父次第かな。
[父と文字通りの大立ち回りをして家を飛び出した話は、果たしてどこまで伝わっているのやら。
いずれにしても、まずはそちらとの和解が優先なわけで]
ま、ここから戻ったら、家にも連絡するから。
その結果次第?
[冗談めかして言いながら、軽く肩を竦めた]
さーて、んじゃ仕上げるぞー。
反対側、確り持てよー?
[話題切り替え、頭を乗せるべく声をかける。
今はとりあえず、やりかけている事を。
ちゃんと仕上げたい、という気持ちが強かった。**]
[凄かった、という言葉に滲むのは苦笑。
うっかり互いに本気になった挙げ句、二人揃って母に廊下で正座されられた、というオチまではどうやら伝わっていないらしい]
あー……そっか。
久々に全員揃えそうなのかぁ……。
[大分会っていないいとこも多い。
もし会えるなら……と。
そんな事を思いながら持ち上げる手に力を入れて]
……っせい、っとお……!
[気合と共に、頭を持ち上げる。
ちょっとずれそうになったが、強引に真ん中に寄せて落ちつけた]
……おま、バランス考えろよ、って、昔から言ってんだろーが。
[なんとか固定した所で、突っ込み一つ飛ばして、それから。
淡い陽射しと空色を覗かせる空を見上げて]
……さて、と。
他はみんな帰ったっぽいし。
俺らも帰るかあ。
[雪玉ころころしている間に、冬木たちの姿も見えなくなっていたから。
ごく軽い口調で、そう言った]
……転がして来る間にまた膨らむだろ。
[そんな突っ込み重ねつつ、顔を作るのは任せて。
頭の上に乗せられた飛行機どっから出てきた、と思いながらも突っ込みはせずに]
ん、ああ、そーだな。
ばーちゃんとこなら、結構降るだろ。
[決定事項のようにいわれる言葉に苦笑しつつ、空を見上げる。
雪色に染まった街は、少しずつ少しずつ、溶けていくようで。
──きっと変われる。
根拠はないけれど、そんな気がした]
ん、じゃ、行くかぁ。
[右手を突き上げての言葉に同意して、雪だるまを転がしている間はおろしていた相棒をまた、肩に担ぐ。
それから、一歩を踏み出そうとして]
…………。
[ずっと、上手く纏まらなかった言葉。
それが、掴めそうな気がして。
早く帰って、捕まえないと──なんて思いつつ、一歩、踏み出した。**]
[一歩目は、まだ雪道だった。
二歩目は、なんか妙な壁を潜るみたいな感触があって。
三歩目で、足元の感触が変わった]
……ここ……。
[ぐるり見回せばそこは、見慣れた駅前。
行き交う人は忙しなくて、こっちの事なんて気に留めた風もない]
……戻って来た……んだ、なあ。
[呟いて、空を見上げる。
目に入ったのは、曇った冬の空]
[時計を見る。
バイトの時間まで、まだ余裕はある。
飯は中華まん押し込めば何とかなるだろうから、と。
一度畳んだ装備を開いて、相棒を掻き鳴らした。
お気持ちお願いします、のボードは出さない。
だって、今は、自分が弾きたいから弾いてるから。
そんな気持ちで奏でた音、響きが少し違うかもなんて事には、思いも寄らないまま。**]
[夢中になって一曲弾き終え、は、と短く息を吐く。
久しぶりに感じた想いが何なのか、上手く言葉に出来ずにいたら、いつもよりも拍手が大きく返ってきて]
……へ?
[うっかり惚けた声が出た。
けれど、それはいつもより嬉しく思えたから、ふかぶか、頭を下げて]
さて、今度こそ飯食ってバイト……。
[アンコールにまた今度、と拝んで返し、相棒をしまって。
ふ、と視線を感じた気がして顔を上げた]
……あ、れ?
[帽子屋さん、という呼びかけは届いていなかったから、気がついたのは今初めてだったけど]
……えーと…………三輪さん?
[見覚えの在る姿に、惚けた声が、上がった。**]
[雪色に閉ざされた空間での一件の後。
最初にやったのは、昔のバンド仲間へのメールと、それから、実家への電話だった。
父には怒鳴られた。そらもう怒鳴られた。
勢い余って怒鳴り返した。
……同居人が留守にしてて、ほんとに良かった、とは後で思った事なのは余談として]
……とりあえず、さ。
今年は、ばーちゃんちの集まり、顔出す。
他の連中、みんな、これそうなんだろ?
[怒鳴り合いが一段落した……というか、鈍い打撃音の後、交代で出た母に向けて、告げる]
ん、ちょっとあってさ、真白と連絡とる機会あって。
んで、聞いた。
……全員揃うって時に、俺がいかない訳にはいかねーじゃん。
[なんて、冗談めかして笑って、それから]
んで、さ。
その後、もっかい、話聞いてほしいんだ。
俺がやりたい事の話、もーいっかい。
[それでも納得してもらえないなら、本気の縁切りも覚悟の上で告げた言葉に。
母はあっさり、わかったわ、と返してきて。
その後はまあ、近況について色々根掘り葉掘りされて。
同居人不在でよかった、と二度思う事になったのはまた、余談。*]
[出したメールに返った返信は、ひとつ。
後の二つは、届く先がなくなっていた。
そして返って来たひとつには]
……まっさか、だったよなぁ。
[一番最初に、受験だからと離れて行ったベース弾き。
彼からの返信には、色々あって、また音楽を始めようとして、でも行き詰っているのだという愚痴が綴られていた。
だったら、とまた一緒にやるか、と水を向けた。
まあ、こっちも停滞中だけど、という但し書きもついてはいたけれど]
[そんなメールを返した後、唐突に同居人に泣きつかれた。
この所、バンド内の擦れ違いが酷い、と相談は受けていたけれど。
どうやらそれは、解散という形に落ちついてしまったようで]
……んで、どーするんよ?
『どーするもこーするも。
ドラムとキーボードだけじゃ……』
[言いかけられた言葉はぴたりと止まり。
じい、とお互いを見るだけの空白が生じた]
『……なー。
バっくんはさぁ……』
[言いかけた言葉を遮ったのは、メールの着信。
ちょい待ち、と手で制しつつ開いたそれに綴られていたのは──]
[そんなこんなで、昔の仲間と、最近の知り合いと。
一緒に動き出せそうな取っ掛かりを掴んで、色々と動き出したある日。
いつものように、駅前で路上演奏に勤しんでいた]
曇り空の下彷徨い歩いて
いつも 空回りして
愛想笑いだけ巧くなっていく
自分に呆れてた
ひらり 雪の落ちる街
つめたく冷えていく
だけど諦めないなら
この 熱は消えない
[歌うのは、雪色の街から帰って来た後に書き上げた歌]
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