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―学校―
[キーンコーンカーンコーン……
終業の時間を告げるチャイムが、校舎に鳴り響く]
はい、今日はここまで。
縦笛は貸し出すから、次の授業までには、全員「さくら」を吹けるようになっておくこと。
年長の子は下の子に教えてあげるように。いいね?
[はーい、と元気な返事が返ってきた。
満足そうに頷いて見せると、オルガンの前の椅子に座る。
和音を号令代わりにして、生徒たちは起立、礼、着席した]
解散。
[その一言を合図に、子供たちは一斉に席を立つ]
『せんせー、ありがとうございました!』
[声を揃えて礼を言うが早いか、生徒たちは教室を飛び出していった。
喧騒が遠ざかった所で、そっと溜息を吐く]
先生、だってさ……。
[独り言ちるその姿は、教師にしては随分と年若い。
とはいえ、既に働ける年齢には達していたし、何より学校備え付けのオルガンを弾ける者がこの村ではごく限られていた。
そのため、週に何回かは、こうして学校に赴き音楽を教える事になったのだ]
さて、そろそろ帰るか……。
夕飯の「料理」はどうなってるかな。
[今晩の食事に思いを巡らせながら、校舎の中をざっと見回る。
誰もいないのを確認すると、青年は帰途についた**]
―滝―
[村から少し離れた所にある滝つぼ。...は手した木桶たっぷりに水を掬うと、難儀そうに桶を持ち上げて]
はぁ…水汲みは面倒くさいな。
さて、急いで戻らないと…
[言葉とは裏腹にのんびりとした歩幅で村へと戻っていく]
[薄暗い森の中。
木の根や枯れ葉に足を取られる度に、母の白い手に引き上げられる。どのくらい歩いたのだろうか]
『まだ?』
[母は振り返ることなく歩き続ける]
『お母さん、どこに行くの?』
[母の白いうなじの後れ毛を見ながら、何度も口にした問いを重ね──
─小料理屋─
目を開けて、障子から注ぐ光りに薄目になる。
誰の気配も無い事に気付き、手を付き半身を起こし振り返る。するりと寝巻が肩から滑り落ちた]
起こしてくれればいいのに。
[小さく呟く。
頬に掛かる金髪を無意識に耳に掛けると、布団に視線を落とす。
しばらくの間そうしてぼんやりとして、ぺちりと頬を叩いて気合いを入れ、寝巻を直し、布団を上げる。
細々と動きまわり、金髪を纏め、身支度を整え、最後に日の当たる一角に置かれた折り鶴の隣に水を置く。正座をして線香を上げ、手を合わせ目を閉じた。経を唱えることもなく黙祷した後に目を開けて微笑む]
おはよう母さん。
[そうして毎朝の日課を終えると、ゆっくりと立ち上がる]
―帰り道―
[学校から自宅へと戻る途中、重たそうに桶を運ぶ人物を見掛けた。
村の中に知らない顔はない]
やあ、ダンケさん。
水汲みか? 大変そうだね。
[しかし手伝う程でもなさそうなので、隣に並んで歩いた]
ところで、今日の飯ってどうなったか知ってる?
誰か捌いてるのかな。
うん。
[手際よく出汁を取り終え、味見をして満足そうに頷く。
店の厨房で貯蔵庫をあけ、確認をしながらぽつり]
葉ものが無い……あと、冬瓜とかぼちゃがあるといいな。
[割烹着を肩から落とすと、籠を手に取り外へ]
─畑─
居ない。
[ダンケの畑にたどり着く。
水を汲みにでも行っているのか持ち主の姿はない]
貰いますねー。いいですよー。
[一人で受け答えをすると、『野菜頂きます。ポルテ』とメモを残し石で押さえる。
剪定用はさみで手際よく冬瓜とかぼちゃを収穫し、籠に収める]
ポルテさんの店かな?
……腹減ったな。
[ぽつりと呟く。
のんびりした歩調のダンケに合わせながら、ゆっくりと目的地へ向かった]
―畑への道―
やあ、清治くん。
ははは。まあ、大変だけど、添える野菜が無くちゃ料理するのも大変だろうしね。
君は今日も学校かい?偉いなぁ。
[畑に戻る途中、やってきた清治と言葉を交わしながら、相変らずゆっくりと歩いていく]
今日の飯?ああ、もうそんな時間か。僕は聞いてないけど、誰かが用意してるんじゃないかな?
…噂をすれば良い匂いが。
ああ、きっとポルテさんの所だろうね。
ははは、清治君は若いんだし、沢山食べないとね。
おっと、畑はこっちだ。それじゃあ。
[雑談を続けつつも、畑への分かれ道に来ると、清治と別れて畑へと戻った]
―畑―
よっこいしょっと。
ふー、重いなぁ……ん?
[桶を下ろすと、地面に置いてあったメモに気付き]
おやー、ポルテさん着てたのか。もうちょっと早く帰ってくるべきだったかな?
まあ、水を撒き終わったら一度お店の方に行ってみるか。
[メモを懐に仕舞うと、さっそく水撒きを始めた**]
─小料理屋─
[かぼちゃの煮付け、とうがんの煮付け、豆のふくめ煮などを次々と作り、その合間に米を炊く。
炊き上がった米をお櫃に移し、ふと何か違和感を感じる]
緑が無い……あ、葉もの。
[先ほど畑に行った時のことを思い出し、ため息をついた]
忘れてた。母さんに笑われるわね。
[胡瓜と紫蘇で和え物を作り、まだ足りないという顔で漬物も刻んで見るけれど、なんとなく納得のいかない*表情*]
―畑―
ふー。今日の仕事終了。
[木桶の水が空になると、満足げに伸びをして]
さて、ポルテさんの所に行こうかな。
トマトにナス、キャベツと大葉。南瓜は…減ってるから持って行ったかな?
[空になった木桶に採れたての夏野菜を詰めると、ゆっくりとポルテの店に向かった]
―自宅―
……ただいま。
[習慣になっているのでつい口に出すが、家の中に人気はない。
薄暗さに目を慣らしつつ、擦り切れた唱歌の本を片付けた]
飯は……今日も御馳走になればいいか。
[一人暮らしではあるものの、料理をする事は滅多にない。
学校に通う子供がいる家に頼めば、大抵お裾分けを貰えるし、料理屋だってある。
ただ、儀式の当番に当たった時は別で、この時ばかりは手伝わない訳にはいかなかった。
その代わり、この日は村人全員が豪勢な食事に在り付けるのだ]
でも、ポルテさんの腕に敵う人はいないよね。本職だし。
[呟いて、帰り道に漂っていた良い匂いを思い出し、いそいそとポルテの店に向かうのだった]
―小料理屋へ―
―ポルテの店―
こんばんはー。
よいしょっと…採れたての野菜持って来たよ。
[ポルテの店に付くと、野菜の入った木桶を見せて]
お腹すいちゃって。これで何か作ってくれない?
[ポルテに頼む]
―小料理屋―
[ポルテの店へ向かう途中、さっき別れたばかりのダンケとも出会っただろうか]
あ、こんにちは。
[店に到着すると、丁度家を出る所のポルテと出くわした。
金髪の女性の微笑みに、こちらも小さく笑みを返して]
今からお出掛け?
夕ご飯を頂きに来たんだけど、少し待った方がいいかな?
[割烹着を脱いだポルテに問い掛ける]
― 村の外れ ―
[家屋は途切れ、田も畑もなく、それ故に人通りも少ない、村の片隅。虫の声や葉擦れの音しかしない其処に、男が一人佇んでいた]
……
[地味な紫の着物を纏った男は、山の木々を、空を見つめ、そっと目を閉じる]
お、丁度良い。
良かったね。そんなに待たずに食べれそうだ。
[ご飯が炊けたところと聞くと、嬉しそうに来る途中で再び合流した清治に声を掛けて、席に座る]
お、冬瓜の煮付けか。いただきます。
[出された冬瓜の煮物に嬉しそうに手を合わせると、ゆっくりと食べ始めた]
はい。
[ポルテに促されるまま店内へ入り、カウンター席に着く。
目の前の卓には冬瓜の煮付けが置かれた]
頂きます。
[両手を合わせてから箸を手にとり、冬瓜を口に運ぶ]
うん、美味しい。
[前菜を腹に収めながら、ダンケの野菜に期待の眼差しを向けた]
[鰹節で出汁を取り、輪切りにした茄子を軽く炒め、出汁に入れる。
最後に味噌を溶かし、椀に盛り、小口切りにしたネギを散らして2人に差し出した]
はい。お待ちどうさま。
[木桶の野菜を流しの水に晒しながら、2人が食べる様子を眺めている]
最近天気が続くけど、畑の様子はどう?
子供たちも元気なのかしら?
……嗚呼。今日も、空が綺麗ですね。
[再び目を開き、呟く。向ける相手もなく、しかし語りかけるような丁寧な口調で。
語り。男は「語り部」だった。己が記憶する様々な話を、子供に語って聞かせたり、儀式などの際に演じ語ったりするのが男の村での仕事だった。
そして、村の時を――幾つも生み出されてきた虚偽や錯誤も含めて――語り継ぐのが]
……、
[熱を孕んだ風が吹く。男の髪が、着物の裾が、微かに揺れる。左の袖だけが大きくはためいた。右手でついと押さえるその下に、左手はない]
そんな事はないよ。
たまにはこう……あっさりしたものも、いいよね。
[米と野菜が中心の献立に、満足そうな表情を浮かべる。
ご飯の量は多かったが、漬物の塩味で食が進んだ]
あれ、夏ばて? 気を付けないとね。
うん、冷汁もまた今度食べさせて貰えると嬉しいな。
[目の前で作られた茄子の味噌汁を有り難く受け取って、一口啜る]
うん、美味しい。
……ああ、子供たちは元気だよ。
夏場はちょっと森に入れば虫が捕れるし、川遊びも出来るからはしゃぎ回ってるんだ。
ただ、授業中はもっと大人しくして欲しいかな?
[言って、苦笑する]
とは言え、こっちの言った通りに練習するばかりじゃ、あいつらも詰まらないんだろうな。
音楽って、何かの役に立てるための勉強でもないしね。
[笑顔には軽く自嘲も混ざっていた]
とっても美味しい。
ありがとう。ポルテさん。
いつも美味しく料理してくれるから、僕も仕事し甲斐があるよ。
うん。南瓜の煮付けも美味しい。
[出された料理にゆっくりと舌鼓をうつ]
大丈夫かい?最近暑いよねぇ。
僕も最近はよくぼんやりしちゃって、仕事が捗らないんだ。
[...の仕事が捗らないのには暑さはあまり関係がなかったりするのだが]
[ポルテの手際のよさに感心しつつも、茄子の味噌汁が出されれば、それも同じように絶賛したりして]
ウチの野菜たちも最近は暑さにやられてちょっと元気がないみたいなんだ。
ほんと、子供は元気だね。先生役も大変だ。
そんな事はないって、音楽だってほら、その…ま、まあ、覚えて無駄な事なんて無いよ。
[普段音楽と縁がない...は無理矢理ながらも清治を励ましてみる]
大変……か。
いや、ダンケさんほどではないと思うよ。
食べ物がなくちゃ生活が成り立たないんだから、責任重大だ。
[ダンケの無理矢理な励ましにくすりと笑い]
ありがとう。学校があるんだから、教養や娯楽だって、きっと必要とされてる……って、思う事にするさ。
[教室の片隅に置かれた、古びたオルガンを思い呟いた]
[男には先天的に左手が存在しなかった。左腕の肘から先がない状態で生まれたのだった。その特徴から子供の頃に儀式の対象に選ばれかけた事もあったが、結局男が神に奉げられる事はなかった]
高きにおわす 天の御神よ
迷える我等を 導き賜わん
[小さく祈りの歌を口ずさむ。歌声は柔らかくも凡庸なもの。ゆるりと踵を返すと、草履の軽やかな足音を響かせながら、村の何処かへと*歩いていった*]
……ご馳走様、ポルテさん。美味しかった。
[出された料理を平らげた所で、席を立つ]
貰ってばかりも何だし、何か手伝う事があったら言ってよ。
……お役に立てるかわからないけど。
[料理の腕は言うまでもないし、オルガン奏者らしい細い指は力仕事にも向いていない。
それでも、感謝の気持ちだけは伝えたくて、そう口にした**]
いやいや、この仕事はのんびりしてても怒られないからね。
結構気軽で楽しいよ。
[清治にそう言って、笑みを向け]
そうそう。それにほら、儀式の時だって神様に捧げる音楽を奏でるしさ、必要とされてるんだよ。
[儀式の時に奏でられる音楽を思い出せば励ますようにそう言って]
そうだな。また収穫の時期になったら、その時はお願いするよ。またね。
[家に帰る清治を見送り]
さて、僕もそろそろ帰るよ。ごちそうさま。
また、野菜が欲しい時には言ってくれれば持って来るよ。
[ポルテに料理の礼を言って、店を出た**]
セイジ君はもうお帰り?
え? 何か……?
[>>33 セイジの申し出に考え込む]
あ。子供たちと森に行く時にでいいんだけど……。
いちじくやあけび、ざくろ、スベリヒユが有ったら採ってきてもらえないかしら。
フキやヤマブドウは遅いし……クコはまだまだ先だものね。
私、この季節はすぐに赤くなってしまうから、外に出る時は大変。
[セイジを入り口まで送りながら、頼みを口にする。
扉を開く手は、昼の野菜取りの時の名残か、ほんのりと赤い。
ふと何かを思いついたように、いたずらっぽい笑みを浮かべた]
あ。ゲンジモノガタリって知ってる?
昔の人って歌を贈らないと一夜も過ごせなかったのよね。大変よね。
歌とか音楽ってそれくらい大切なものだったんじゃないかしら。
じゃあ、またいらしてね。
─小料理屋─
[やってきた村人に料理を振る舞い、代金代わりの食材や物品を受け取る。
そうして誰も居なくなった頃]
まだ早いけど、いっか。
[お櫃に残ったご飯をおむすびにして、ごまを振り大皿に並べる。
痛みにくい惣菜を小鉢にとりわけ、布巾を被せる]
『留守にしております。ご自由にお召し上がり下さい』
[割烹着を畳み、住まいの入り口の脇に置くと、メモをカウンターに残す]
─夜道─
[月明かりの下、うちわをもてあそびながら、下駄の音も軽やかに夜道を歩く。
川までたどり着けば、臆すことのない足取りで岩場を下りて、川岸へ。
下駄を脱ぎ岩に腰掛け、足を川に落とす]
もう蛍も居ないわね。
[うちわで扇ぎながら、のんびりと星空を眺めている*]
―回想・小料理屋―
うん。了解。じゃあ、明日にでも持って来るよ。
[言われた野菜のメモを取る。帰り際、聞こえてきた小さな言葉には、振り返るでもなく、ただ、少し困ったような笑みを浮べ]
ありがとう。また来るよ。
[背中を向けたまま、ポルテにそう言うと、小料理店を後にした]
―自宅―
ただいま。
[家に帰り着くと、誰に言うでもなく、声に出して]
いやー、今日も疲れたなぁ…
[寝床に寝転がり、窓から夜空を見上げる]
おや、今日は満月か。綺麗だな…
─川のほとり─
[月明かりに反射する水面を楽しそうに見つめていたが、しばらくすると足を遊ばせるのに飽きたのか、夜空を見上げ、そのまま仰向けに岩の上に寝転がる]
痛たた……。
[頭を打ったのか、右手を後頭部に置いた。
足を水に浸し空には満月と星が見える]
……
[いつしか*うつらうつら*]
― 診療所 ―
[消毒液を滲みこませた脱脂綿を赤い膝にちょんとあてる。]
わ、… わわ。
沁みちゃったかな?
んー、もう少しで終わるからねー。
――― はいっ、これで大丈夫だ。
お大事に。
─川のほとり─
[東の尾根から太陽の光が覗く頃。
横になったままもぞもぞと動き、伸びをする]
痛い。さすが岩場。
[また何処かをひっかけたのか、苦笑い。
川に入れていた筈の足はいつの間にか引き上げられていた。
半身を起こし膝を抱えるように座り込む。
それでも手をあてるとひんやりと冷たい。
足にいくつかの赤い虫食いのあとを見つけると、しかめつらで爪で十字を入れてみる]
帰ろっと。
[徐々に日が上る中、唐突に立ち上がり、少しよろける。
着物を整え、体についた枯れ葉を落とし、脱ぎ捨てた下駄を履き、からころと小料理屋へ]
─小料理屋─
[店には誰もおらず、おむすびも惣菜もほんの少しだけ減っていた。
住まいに上がり、水で身を清めて着替え、折り鶴の横に線香を上げ、厨房に戻る]
母さんが居た頃は頑張って片付けたものだけど……さすがにひとりだと無理ね。
[言い訳めいた呟きとともに、余った惣菜は堆肥に出す桶に落とす]
すべてのおむすびをざるに入れ水で洗い、匂いを嗅ぐ]
大丈夫そうだけど……出すのは怖いな。干飯にしようか。
[大きな簾を水で洗い、手の平ほどの大きさに薄く伸ばしたご飯を並べる。
すべてのご飯を並べ終えると、店の前に石を並べて高さを出し、その上に簾を置いた。飛ばないように四隅にも石を置く]
今日も天気が良さそうだし、子供達が遊びに来る頃には出来るかな。
[だいぶ明るくなってきた空を見上げる]
―自宅―
[日がだいぶ昇ってきた頃。寝床で目を覚ますと、ゆっくりと伸びをして]
ふぁー……
………
ね、寝坊したー!
[既に明るい外の景色に、慌てて支度をすませると、走って、それでも速度はゆっくりと畑へと向かう]
―翌朝・自宅―
[朝焼けの赤が空から消える頃、清治は目を覚ました。
大きく伸びをした後、布団を置き出し服を着替える。
学校の仕事は休みとはいえ、家で寝ている訳にもいかない]
ふー、今日もあっついなー。
あ、アンさん、おはよう。
[ガラリと引き戸を開け、目の前を横切っていった人影に声を駆ける。
女学生のような姿だが実際はもう少し年嵩で、あの服は単にお気に入りのようだ]
忙しいのかなあ。
……そういえば、アンさんちの隣の爺さん、寝込んでるんだっけ?
[しばらく娘の去った先を見詰めてから、本日の仕事のために歩き始めた]
[すん、と鼻をならして店に戻り、厨房をいつもより時間を掛けて片付ける。
一段落した頃に、何を作るかと、上がり框に腰掛けてぼんやりと考えていたが]
あ。久しぶりに母さんの料理でも作ろうかな。
[楽しそうに手を打つと、住まいに上がると押入れを開け、置くから古い箱を取り出す。
黄ばんだ紙に細かい字で連ねられているのは、見慣れた母親の字。
眼を眇めて読み進める]
塩きついなぁ。
[母に習った筈なのに、いつの間にか自分好みに変えた分量を確認して苦笑い]
やっぱり、野菜料理が多い。
[魚料理は干物程度、肉類はあっても添え物程度だ。
他にも何か無いかと箱を見ていたら、小さな帳面が出てきた]
なんだろう?
[早朝の患者でも時間を問わず診療をする小さな医師の姿を、扉の陰からじっとみつめる更に小さな人影。その手には昨日からずっと縦笛が握られていた。]
おはよー。
上手に吹けるようになった?
[影は首を横にふるふると振ってしょんぼりとした顔を見せた。]
[ページを開くと、先ほどよりさらに読みづらく小さな字で書かれている。
後ろのほうに進めば、見覚えのある名前がいくつか。読み進めるうちに眉を顰めた]
ばち当たりな。
[まじめな顔は長く続かず、ぷっと噴き出す]
『肉ばかり食べているとくさい』って酷い。
母さんが作るわけじゃないでしょうに。
あ。もしかして、だから野菜が多い?
[ページの最後で指を止める]
母さんの味ってどんなのだったっけ?
[しばらく考え込む。
さらりと母の名前だけを書いてゆるく首を振った。
帳面を閉じ、箱にしまい蓋をとじる]
―診療所前―
[井戸から水を汲んで、老人や女子供しかいない家へと運ぶ作業の途中。
診療所から駆け出して来る子供を見付けた]
あ、テンゴ。
おーい、あんまり走るとまた転ぶぞー。
[声を掛けるが、テンゴは『わかってるよー』と答えるだけで、振り向きもせずに行ってしまった]
やれやれ、あいつ一人でワカバさんの仕事増やしてそうだよな。
[呟いてから、桶を担ぎ直し]
こんにちはー。ワカバさん、水使います?
[診療所の中に向けて声を掛けた]
[清治の声に、縦笛を持った影はぴゅっと家の奥へと消えていった。おそらくそのまま食事を済ませて学校へと向かうのだろう。]
はぁーい。
今、行きまーす。
[ぱたぱたと扉の方へと出向けば開いて]
せーじくん、おはよ〜。
いつもありがとねー。
[ほにゃっとした笑みを向けた。]
[そのまま箱を押入れの奥に入れ、襖をとじる。
膝の上に残されたのは母の書いた調理法の帳面]
さて、何をつくろうかな。
[どこか上の空で、ぱらぱらとページを*眺めている*]
―畑―
ふぅ。今日も暑いなぁ…
[畑の草をむしりながら、落ちてくる汗を手ぬぐいで拭う]
おや、テンゴ君。元気だねぇ。
[途中、畑の横を通り過ぎたテンゴに声をかけたりしつつも、ゆっくりと作業は進む]
あ、おはようございます。
[現れた若葉に挨拶を返す。
彼女にも学校に通う年齢の子供が居たはずだが、既に見える所にはいなくなっていた]
いや……こっちが具合悪い時は、お世話になってますから。お互い様ですよ。
[柔らかな笑みを向けられて、少し戸惑ったような表情を浮かべる。
実年齢は彼女の方が年上のはずだが、顔だけ見るととてもそうは思えなくて、どうも接し方に迷ってしまうのだ]
そういえば、さっきテンゴが診療所から出て行ったでしょう。
あんなにしょっちゅう世話をしていたら、子供が二人居るようなものでは?
[冗談めかした表情で訊いてみる]
お水はそこの甕に入れておいてくれるかな。
無くなりそうだったから助かっちゃった。
[診療所と自宅の間に、子供がすっぽりと入る程度の甕が設置してあった。]
うん、デンゴくんは常連さんだね。
[続く言葉に、ふ、と眉を下げて]
――― あははっ
1人いれば2人いても3人いてもかわんないよぉ。
はい。……よいしょっと。
[桶の中身を甕へあけながら、若葉の笑う声を聞く]
う?
うーん、そういうものなんだ。すごいなあ……。
僕なんて、生徒が一人増えたらそれだけで随分と苦労するのに。
[自分の学校での経験を思い出し、頭を掻く]
[からり、からり。男はいつものように村の中を歩いていく。緩慢な歩調で、時折景色を眺めながら。人に会えば微笑んで挨拶をしつつ]
……ふう。
[降り注ぐ日光、熱を蓄えた空気。額に滲んだ汗を手の甲で拭った。日陰になっているところで少し休んでいてから、また歩き出し]
ダンケさん。
おはようございます。
[畑に作業をする姿が見えれば、そう声をかけた]
せーじせんせーも、大変だね。
[笑い終えた顔でそう言い]
うちの子、昨日から縦笛お気に入りみたい。
がんばってね。
[軽くプレッシャーをかけるような口調だが
子をあやすように背伸びをして清治の頭へぽふり手を置いた。
そのまま、またほにゃっと笑みを向けてから手を放して、爪先立ちしていた足をすとんと元に戻した。]
でも実際のところ
もう1人くらい子供は産まなきゃね。
1人じゃ少ないって、よく回診にいく先のお爺さんにも言われてるんだ。
[童顔とはいえ自分の年齢は理解している故の思いはあって、今度は少しだけ困った顔をみせた。**]
ん?ああ、栂村さん。こんにちは。
今日も暑いですねぇ。
[草むしりの途中、声を掛けられると栂村に挨拶を返して]
そういえば、もうすぐ豊穣祈願の儀式がありましたね。語り、楽しみにしていますよ。
[もうすぐある儀式を思い出せば嬉しそうに言う]
え、あ……はい。
[頭の上に、小さな手が置かれるのを感じた。
子供に対するようなそれに、顔が赤くなるのを感じて視線を逸らす]
うん……でも、妊娠、とか、子育ても、いろいろ大変だと思うし。
無理して産む事も、ないんじゃないかな……。
[弟妹のいない自分には、女性の妊娠や出産は余り身近な出来事ではなく。
男の自分がどういう態度を取ればいいのかもわからなかった]
ああ、でも、子供が増えるのは良い事だよね、うん。
それじゃ、また明日来ます!
[若葉に向けて片手を上げると、診療所を出て行った]
ええ、今日も暑いですね。
こう毎日暑いと、体調を崩される方も多いでしょうから……少し心配です。
ダンケさんもお気を付けて。
[青く眩しい空を仰いでから、ダンケに向き直って言い]
そうですね、もうそろそろで……
直に準備も始まるでしょうね。
有難う御座います。へまをしないように頑張りますよ。
[儀式の話に、静かに笑んで頷いた。最後は冗談のように言って小さく首を傾け]
[必要な所へ水を運び終えると、仕事を探しに畑へと向かった。
と、片袖を風に揺らす人影が見えた。
少し離れて、畑の中にダンケの姿もある]
こんにちはー。
栂村さん、どうも。ダンケさんは昨日ぶり。
[二人に向けて挨拶をする]
そうですねぇ。今年は特に暑いですからね。ポルテさんもちょっと調子悪そうだったし。
僕は大丈夫ですよ。
丈夫なことが取り得ですから。
ははは、何度も儀式をやってるけど、ヘマなんてした事ないじゃないですか。
[栂村へ笑みで返す。清治が来るのが見えると手を振って]
やあ。昨日ぶり。今日は学校の手伝いはお休みかい?
そうですか、ポルテさんが。
もう幾らか涼しくなれば楽なのですけれどね。
ふふ。今日もお元気そうで何よりです。
今回もそうであれば良いのですけれど。
今から緊張していますよ。
[笑いつつダンケと言葉を交わしていて。ふと声をかけられれば其方に顔を向け]
今日は、セイジさん。
[軽く辞儀をしてから挨拶を返した]
[自室の机にうつぶせになっていた頭が身じろぐ]
ふぁ……。
あ、こんな時間。
[伸びをした後、時計の針の位置に気付き、立ち上がって開けたままだったカーテンを閉めようと窓に近付く]
あれは…誰…かな…?
[窓から見える畑を見やり、独りごちる。そのまましばらく見つめているが、我に返ると]
いかんいかん。こんなことしてる場合じゃない。風呂はいって寝よ…**
ええ、もう少しで……浮き足立ってくる頃ですね。
[そのうちに村は儀式の準備に追われ出すだろうと。準備に関しては、男自身は片手しか持たない故に、あまり力添えができないのが常だったが]
有難う御座います。
セイジさんの笛、楽しみにしていますよ。
[音楽を得意とする相手を見、目を細めて笑んだ]
[それからも幾らか言葉を交わしていたか。そのうちに別れる段になれば、会釈をし]
では、また。
[裾と片袖とを翻して、歩き去っていった*だろう*]
んーーーーっ、よぉーし。
[玄関先で伸びをしてから診療所の中を通り居間へと向かえば、食べ終えた食器がひと組残されていた。
冷めてしまった朝食を取り終え、ふた組の食器を洗い終えれば診療所の方へと戻る。
そこで壁に掛けられた暦を確認して]
学校は今日じゃないよね。
あ、儀式もう少しだ。
忙しくなるなぁ。
―畑―
本当にそうですねー。この暑さはさすがに堪えますし。
ははは、栂村さんならきっと大丈夫ですよ。
[栂村に返しつつ、やって来た清治に学校の事を聞けば]
今の子たちは大変だなぁ。僕の頃は字の読み書きぐらいしかやって無かったよ。
[最近の授業の内容に感心した様子で言う]
ええ、そろそろ準備の時期ですね。忙しくなるから、僕も頑張らないと。
[しばらく話を交わしつつも、栂村がそこ場を去ると、また今度。と見送って]
さて、忘れない内にポルテさんに野菜を届けてこようかな。清治君。それじゃあ。
[木桶に昨日頼まれた野菜を詰めると、清治に別れを告げて、小料理屋へと向かう。]
―小料理屋―
ポルテさんこんにちは。
[いつものように小料理屋のドアをくぐると、調子の悪そうなポルテの様子を見て]
大丈夫かい?体調が悪いなら無理しない方が良いよ。店も休んでね。
他の人には僕が伝えておくから。
野菜は流し台の所に置いておくから、しっかり食べて、しっかり休むんだよ。
[半ば無理矢理休むように言いつけると、しっかり休むようにと釘をさして店を出る]
はあ、困ったな。今日のご飯どうしようか。
[外に出ると、そんな事を呟きつつ、まずは医者であるワカバに知らせるためにワカバの家へと向かった]
[診療所の椅子に腰を落としてカルテを確認する。]
回診は午後に二件、…と
明日は学校だから―――
…あれ? 患者さんかな?
はぁい、いまぁーーす。
…あれ、ダンちゃん。
どこか具合悪いの?
[彼が娘の父だと知ってはいてもそれを娘に話す事もないまま7年。
その月日もあってか彼と接する態度も何ら昔と変わらずのまま話す。]
こんにちは。ワカバさん。
ああ、僕じゃないんだ。
ちょっと、ポルテさんが調子悪いみたいでさ。後で診てあげてくれるかな。
[ワカバが出てくると、小料理店でのポルテの様子を伝えて]
それと、今日晩ご飯を分けてもらえないかな?野菜持って来るからさ。
[苦笑いを浮かべて頼む。]
ポルテさんが…?
[ダンケの言う症状を簡単にメモを取れば頷きを返して]
うん、うん。
解った、これから行ってみるよ。
……
[ぱちりと一度瞬いてから]
ん、いいよ。
うちの子もダンちゃんとこのお野菜美味しいって言うんだよー。
ああ、よろしく頼むよ。
良かった。じゃあ、一通り皆にこの事を知らせたら野菜を持って来るよ。
[ポルテの事を頼みつつ、晩御飯の了解を得ると嬉しそうに]
そういえば、フタバちゃんは元気かい?
[話に出た彼女の子の事を聞く]
うちの子は風邪も引かずに元気でやってるよ。
でも、テンゴくんの元気を少し分けてもらってもいいかなー。
[今頃学校で勉強をしているだろう彼女を思いながら、目の前のダンケを見れば ほにゃっと笑う。]
じゃあ、また後でだね。
―現在・自宅付近―
[ダンケ、栂村と別れて、一旦家に向かって歩いて行く途中。
ふわり、と、ポルテの店とはまた違う香りを嗅いだ]
うん?
なんだろう……ダシの匂い?
[匂いの方向に顔を向けると、大振りの鍋が焚き火に掛けられ、周囲を4、5人が囲んでいた]
『あ、清治くん。良かったらどうだい?』
[どうやら振る舞われているのは、だし汁に醤油などで味付けし、葱などの野菜を入れて煮たもののようだ]
はい。……頂きます。
[椀に取り分けて貰った物を口にする]
『いやー、やっぱり骨の髄まできちんと食べてやらねぇと』
[ワッハッハと豪快に笑う声を聞きながら、汁を飲み干す。
頭の中で、ここ数日に出た死者の事を思い返していた]
……ご馳走様でした。
[動物らしい濃厚な出汁の汁を飲み終えて、椀を返した。
しかし、汁だけではどこか物足りないような気がして]
米、とか、欲しいな……。
ポルテさんの所に行けばあるかな。
[微かな期待を籠めて小料理屋へ向かうが、店先で見た物は『臨時休業』と書かれた札であった]
あれ?
……うーん、具合でも悪くなったのかな。
[お見舞いにはいずれ伺おうと思いながら、再び村の中を彷徨い始める]
そっか。うん。子供は元気が一番だね。
テンゴ君は元気すぎる気もするけど。
[ほにゃっと笑う彼女にこちらも笑みを返して]
うん。また後で。
[村人にポルテの事を知らせるべく、診療所を後にした。]
はーい、またね。
[ダンケを玄関先まで見送ってから一度診療所の中へと戻り
回診用の使い古された皮の鞄に荷物を詰め込み、診療所の入口に
『回診中』
の看板を掲げた。
その足で、小料理屋へと向かう。]
― 小料理屋 ―
ポルテさん、お邪魔しますねー。
[臨時休業と書かれた扉から内へと入れば、奥の部屋で横になるポルテの元へと向かう。
彼女の様子を見ながら、問診もしつつ]
んー、ちょっと熱いですよー。
どこか寒い場所にずっといたりしませんでしたかー?
今は安静にしてて下さいね。
また明日来ます。
[会話はしながらも濡れた布を額の上に置いて定期的に取り換えるように伝え、簡単な処方箋を枕元に置いた。]
それじゃあ、お大事に。
―清治自宅付近・焚き火―
こんにちは。僕も貰っていいですか?
[清治の自宅付近。で、焚き火を囲む村人たちを見つけると声を掛けて]
『おお。ダンケさん。食ってけ、食ってけ。あんたみたいに元気な人には、沢山子をこさえてもわらねえとなぁ』
ははは、頂きます。
[村人たちに苦笑いで答えつつも、椀を受け取り、中身をゆっくりと食べる]
んー、いいダシ出てますねー。
あ、そうだ。ポルテさんなんですけど…
[振舞われた料理を味わいながら、ポルテの容態を説明したりしつつ、話に花を咲かせる**]
[どこからか漂う匂いが何なのかは解ってはいるけれど、先に回診の仕事を済ませる事にした。]
おじーちゃん、お加減どーですか?
昨日より顔色いーよ。
ん、…やだなぁ。
ちゃんと解ってるよ。
何かあればおじいちゃんを、残さずみんなで戴いてあげるよ。
はい、それじゃあこれ3日分のお薬。
ここに置いていきますねー。
―集会所―
[儀式の日が近いせいか、普段は人気のない集会所も、この時ばかりは頻繁に人が出入りしていた]
こんにちは……。
え、ポルテさんが?
[小さな村だけに噂の回りも早い。
大事はないという事を確認し安堵する]
良かった。ポルテさんの料理が食べられないのは困りますからね。
[差し入れの握り飯などを期待して来たのだが、まだ時間が早かったらしい。
ここまで来て何もしない訳にも行かないので、しばし練習をする事にした。
祭具の置かれた蔵から、儀式に使う笛を取り出す。
長い間受け継がれて来たのだろう、年季の入った色合いだ]
――――
[軽く息を吸い、音を確かめるように吹き込む。
空気を震わせ高い音が響いた]
よい… しょっとぉ。
[鞄を手に村の道を歩く。
回診は問題なく終り、空いた腹が音を小さく立てた。]
――――― あ
[遠くから聞こえる笛特有の高い音。]
もう少しだもんなぁ。
― 診療所 ―
[結局その足で帰って来た。
昼も過ぎていたので家にあった漬物をつまんで飢えを凌ぐことにしたのだった。
回診中の看板を取り、診療所の中へと戻ればカルテに必要事項を書き込んでから暦をもう一度見た。]
……うん。
[一曲分吹き終えて、それなりに満足がいった顔で笛を下ろした。
集会所に来ていた顔役の老人が寄って来て、細かな指示や注文を付ける。
素直に頷いていると、中年の女性がお盆を手に入って来た]
『はいはい、休憩休憩!』
[お盆の上には期待通りのものが載っていて、思わず顔を綻ばせた**]
[明日の回診の準備と同時に、別の準備を始める。]
…、…
[ここ数年何度となく繰り返されてきたこと。]
『 ただいま。 』
[小さな声と共に帰宅を告げる娘の声。]
おかえりー。
ばーちゃーん。
ばーーちゃーーーん。
[呼びかけながら立ち上がると、数学の問題が目に入ったので、ぱたりと閉じる。
台所や厠など祖母が居そうな場所を探してみるが、見つからず]
…こりゃ、またワカバ先生のところにでも行ったかな。
[祖母は診療所に集まる皆と世間話をするのが楽しいらしい。その場に居合わせると何かと言われるので苦手だったが]
…しかたない。散歩ついでに寄ってみるか。
今日はダンちゃんも来るから
一緒にご飯食べようね。
[こくんと頷いてから奥の部屋へと向かう双葉を見送った。
診療所の待合室は日課のようにお年寄りでにぎわう声が聞こえてきていた。]
[塩味と梅干の握り飯を一つずつ頂いた所に、若いのだからとおまけでもう一つ。
若者は、この小さな村では貴重であった]
『セイジくんは、そろそろ子供の一人や二人こさえたかね?』
[そんな無遠慮な、といってもこの村ではさして恥ずかしがる事でもない質問も飛んで来る]
え、いや、僕は……
[口籠もっていると、老人らから大声で笑われた]
『最近の若い子らは奥手じゃのう!』
『ワシらの若い頃は……』
[そんな昔話が始まって]
……まだ何も言ってないのに。
[つい、目を逸らして小声でぼやいた]
―清治自宅付近―
ごちそうさまでした。
僕はもうちょっと回ってポルテさんの事を皆に知らせてきます。
[村人に会釈を返して、その場を離れると、その後もしばらくはポルテの容態を知らせて村の中を回る]
さて、この大体の場所は回ったかな。野菜を届ける用事もあるし、一度畑に戻ろうかな。
[一通り、村の中を回れば、一度畑に戻る]
[サンダルをつっかけて診療所へ。出会う人に祖母を見かけたかどうか尋ねながら]
― 診療所の外 ―
[中に居る人に見つからないように、そっと覗き込む]
……あれ、いない?
[裏側にまわって、ドアをトントン]
…ワカバせんせー。
ん…、あれ?
はーーい。
[ぱたぱたと音のする方へと向かい裏の戸を開く。]
マシロちゃん。
…どうかした?
[年頃の女性の訪問は色々と気を使う部分がありやや真顔のまま彼女を見上げた。]
[ワカバの表情に気付かず]
あ、ワカバ先生。
今日うちのばーちゃん見ませんでした?
てっきりこっちにいると思ったんですけど…。
森の方に何か採りに行ったのかな…。
[マシロの言葉に瞳を瞬いてから]
…今日はまだ来てないみたいだね。
診察室は相変わらずの様子だけど、…
あ。
急ぎの用なら来た時に伝えておこうか?
[老人たちの昔話は、こちらを放りっぱなしのまま続いている]
……僕は一旦抜けますね。
それじゃ。おにぎり、ご馳走様でした。
[差し入れへの礼を言うと、話の邪魔をしないようにこっそりとその場を抜け出した]
……はあ。
[小さく溜息をつくと、次の仕事を探して歩き始める]
[村の片隅。木陰にある岩に腰掛け、疎らな人通りを眺めていた。話しかけられれば挨拶を返し、時には世間話をしつつ、時を過ごす。平時、男の仕事は少ない。欠損を持つが故にだろう、子供を望まれる事も、同年代の者と比べれば多くない]
……
[ただ静かに、流れる雲を仰いでいて]
[お腹が減ったから探しているとは言えず、目を泳がせて]
いや、急ぎの用ってわけじゃなくて…うん…。
ま、そのうち帰ってくると思います。
それじゃ、失礼しますね。
――少年宅――
はい、出来上がり。
さっぱりしたね。
[坊主頭になった少年の上半身を覆っていた布をバサリと取り去って、起立を促す]
はい、次は誰だ?
[挙手した子供を呼び寄せ、鏡台の前に座らせる。
シャキン、という音と共に、髪の毛がはらはらと落ちた]
ありゃ、そうなの?
わざわざ探しに来たのに…
ん、うん。
それじゃ、おばあちゃんに宜しくね。
[ほにゃっとした笑みを向けた。]
はい、またよろしくお願いします。
[合わせてほにゃっと笑ってみたつもりだが、ワカバのようにはいかずぎこちない笑みを浮かべた]
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