[1] [2] [3] [メモ/メモ履歴] / 絞り込み / 発言欄へ
―眠りに落ちる寸前―
[ビセの悲鳴やバクの声が、フユキとゼンジの声をかき消す。
そして、死者の声は波の音に紛れる]
……胎動。
[この村で夜を明かした以降、ずっと耳鳴りのように響いていた音。
それが、とうに忘れ去った音に似ている気がした]
[神様を殺す、そう言われてようやく腑に落ちた。
窯神様を崇めるのは、この村の存在を知る者だけ。
崇める者が全て死に絶えたのなら、]
神は、死んだ―――…、とそうなるわけですか。
[後ずさったポルテに、眉を顰めて]
動かないで下さい。
窯には近寄らないようにと、言ったでしょう?
>>1
[フユキの声は聞こえなかった。
ただ、その表情だけが目にはいり、意識は途切れる。
間際に聞こえたのは、*爆ぜるような音*]
[ポルテとフユキが対峙する様子を少々の距離を置いて眺めていた。それ以上近付く事はなく、声をかける事もなく]
……終わる、のかなぁ。
もう少しで?
神なる狂気が……消える?
[呟く声に含まれるのは、問いの調子と愉悦の色。どちらも仄かなものではあったが。
小さい、欠伸をして]
[意識の落ちたポルテの躯を支える]
―――…ヂグさんは、摂りこまれましたか。
[オオカミとしての感覚が、ヒト一人が消えた事を告げた。
つまりは、]
このヒトが終われば、後はぜん兄だけですけど…。
起きている間と寝ている間、どちらが良いですか?
[尋ねる声は、他者に向けるものよりも温かみを帯びる]
[意識を失い崩れ落ちるポルテの身体。それがフユキに支えられるのを見、零される言葉に]
ヂグさんが。
……ああ、やっぱりもう終わるんだねー。
[淡々と、だがどこか感慨深げに言い]
どちらにするか? どうしようかなぁ。
どうせだから眠る前に、っていうのも良いかなぁ。
[温かみを含む問いには微かな笑みを浮かべる。声色に怯えはなく、ただ穏やかな雰囲気を纏い]
[抱えた腕から伝わる熱は、昨夜と変わらず焦燥を駆り立てる]
…、 ―――……っ
[露になった咽喉に牙を突き刺して、その血を啜る。
腕を爪で抑え、腹を食む姿は、飢えた獣の荒さ]
……ッは。
そう、もう……、終幕、なんです。
[声は、微かに震える]
[開いた口唇は、ポルテの命の朱に濡れ]
ぜん兄は…、 ……
[怖くないのか、尋ねかけて止める。
少し視線をさ迷わせ、微笑にも泣き顔にも似た表情を浮かべた]
どうしてぜん兄は…、そう、なんでしょうね。
[フユキに一歩一歩と歩み寄る。ポルテの血が少しく跳ねて襟の辺りに付いたか。一尺と少し離れた位置で足を止め、紅く染まるその姿を見据えた]
静かだねー。
[終幕という単語に、ぽつりと]
静かな終幕なんて、なんだからしすぎてらしくない気もするなぁ。
なんていうとあまり捻くれてるかな?
[視線の先、相手の唇は酷く紅く]
どうして? ……どうしてだと思う?
[問いに問いで返す。やや、間があり]
答えはねー。
わたしにもわからない、だよ。
[ふざけたようなその言葉からは、それが真実であるのかどうかは恐らく窺い切れず]
だから代わりに考えてくれると嬉しいかなぁ。
なんて、冗談だけどねー。
…静か、ですか?
ああ、そう…ですよね。でも、
[ポルテの躯を離す。
床に落ち、血の跳ねる反響音。
けれど、それが静まっても]
僕には、ぜん兄の鼓動が…この距離でも聞こえていますから……。
[その音に誘われるように、ふらふらと近付いて]
ぜん兄が捻くれているのなんて、それこそ20年以上前から知っていますよ。
[問いを問いではぐらかすのも、冗談めいた言葉遣いも、昔から知っていた。
その真似をし始めたのは、何時からだったか]
―――…冗談ならば、考える必要はなさそうですね。
[浮かべた穏やかな微笑。
確か、これも幼い頃に真似たもの]
[ポルテの身体が落とされるのを目で追った。静かな空間でよく響く、水面に雫が落ちるような音。鼓動が、と言われて胸元を軽く片手で押さえ]
心臓が動いているの……聞こえるかい?
わたしはこうしてようやく自分の鼓動を認識できるよ。
でも、フユキ君には聞こえているのかな。
[なんだか不思議だなぁ、などと、どこか楽しそうに。胸に当てた手をそっと下ろし]
なんだ、知ってたんだ。
[わざとらしく残念そうな表情を作ってみせ]
必要がないのは……
まー、そうなんだけど。
考えられないのもそれはそれで寂しいかなぁ。
[どうしようか、と悩むような素振りをしてから、相手の微笑に微笑を返した]
[ゼンジのすぐ傍らに立ち、直前まで彼自身の手が置かれていた場所に、朱に濡れた右手を添える。
爪を変じれば、間違いなく、この響きは止まるのだろう]
―――…色々と知ってはいますけれど。
幾ら真似ようとも未だに…、ぜん兄の本心は理解できませんね。
[一瞬の躊躇い。
真似を止めて、真剣な…少し苦しげな表情で見据える]
本当に、これで良いんですね?
[尋ねるのは、きっとこれが最後]
[添えられた右手を中心にして、薄い青色の着物にじわりと紅い色が滲む。
一たび、目を細め]
本心が理解できない、か。
わたしが芸術家ででもあったら、芸術は理解されないものだ、とでも言えたんだろうけど。
飴屋だとどう言い様もないなぁ。
[その口調は尚変わる事がなく。一瞬の間。程近い、曇ったような相手の表情を見つめ返し]
――いいよ。
[短い沈黙と同様、短い返事を口にして]
君がしたくないわけでないのなら、ね。
猫が煮干しの頭を食べ残すのに似てる。
[フユキに一部喰われ放られた自分の身体を、中空から眺める。
テレビを見ているかのように*他人事*]
[1] [2] [3] [メモ/メモ履歴] / 絞り込み / 発言欄へ