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嗚呼
探求のおこころで、
もしおんなで無くとも取り込むお心算なら
僕は――止めたほうが良いですよ。
きっと後悔なさいます。
[去り際の肩越しに
嫌悪を飲み込む事はせず
独り言のような音を返す
撫でた下腹の奥 腸の突起うねる音を裡で聞いた]
[浜辺 腐った木壁の扉無き船小屋が男の塒
頼まぬも常ように置かれる薪に石で火を灯す
湿り土に消える火を数度 熱取る為に着け直し
流木に座る背は常にしゃんと伸び
過去の生活が高みにあったらしきを垣間見せる]
さむい。
[身より大きな上着の前を掻き寄せて
黒でぎゅと合わせ白い息を吐いた*]
[男は、風に衣類を靡かせながら、飄々と歩いていく。
ひょろりひょろりと足取りは軽く。
向かう先は、寂れ切った教会。]
―…かのお方は、いつ現れるのか。
そのお姿、早く拝見したいものよ。
[見えぬ瞳は三日月になってから、また道化のようにのっぺりとしたものになる。
そして、教会中その司祭のいたはずの場所に座り込むと、先程放つことのできなかった熱源をさらけ出し、自身で刷り上げ始める。
ただ、最中、呼吸の乱れは一つもない。]
[潮騒は遠く近く、不安を煽るような響き。
長柄の斧担ぐ男がやがて浜辺へ降りてきて、
――どさり。桟橋の渡り口に薪束を置いた。
とらわれの贄に声をかけることはなく。
まして火種を添えてやることもしない。
最後の薪束からは1本抜き取って――――
浅瀬で死体さらいをしながらぐらつく男の
背中へと、正気づかせか無造作に投げつける。]
残りがあまりいちどきに死んでしまうと、
ああする意味がなかろうよ。
[夜警装束を着込んだ男へ、檻を示して言う。
学者が遠巻きに熱っぽく関心を寄せる其れ――
生きて冬を越す。そのためだけの儀式殺人を。]
…そういえば、
今日の薪はサトウカエデの株だった。
[暗い。深い。冷たさですらない、痺れ。]
( こぽり… )
[遠く蒼い水底から気泡が昇る音がする。
湧くものであるのか、沸くものであるのか。
音を立てる親しき気泡は、名を悪意という。]
樹液が採れずに切り倒したのだろうが、
[微かに流れくるのは焚火の匂い。
砂を踏む。置いていくひとり言。]
煮出せば
あるいは少しくらい甘いのかもしれんね。
[ラウリの死体は、*上がらない*]
小男の姿が見えない
[怯えた小さな姿は見えない]
ここは死臭すらも乾いている。何もない枯れた土地。だから死体を大地に還す我々がいるのにな。
最後の功徳を与える、そして天に送る術を私は、餓えから食ってしもうた。
救いのないこの地を救う私が。
[カラカラの乾いた声
虚ろでおぼつかない足取りで向かうのは贄がいる檻]
そうですね、もう誰もこんな目に遭わない方がいいですね。
[息絶え絶えの贄に男は何もなさない]
貴方は充分徳を積みました。次の生は有意義でしょう。送ってあげますよ。
[口から出るは偽善。己の信仰以外は信じない。
それ以外は認めない。]
[熾火の匂い辿る歩が、網小屋の前を横切る。
ちらと見遣る。其処を塒とする無気力そうな男
――――エリッキが出てくる様子はまだない。
"漁"を空振りで終えた男――ヘイノがやがて
小屋へと濡れた網を投げ込むかもしれないが、
通りすがりは特に知らせもせず先へ向かった。]
失礼を。
[声をかけるのは、扉のない船小屋の入口で。
認識する"境界"の手前に直立し、火種を分けて
もらえないだろうかと依頼するのも慣例めいて*]
楽にして欲しいですか。
貴方は今、正しい道筋で死を目指していますからね。
救いの手は差し伸べません。
[指先に絡んでいるのは朝露に濡れた蜘蛛の糸ではなく、釣り糸]
ああ、勘違いしてますね。これは正しい道筋で死を目指す人間を邪魔する者を沈める救いの糸。
貴方はが死んだら、私が鳥達のように最後の功徳を施し、天に運びましょう。
[何も映さない目、虚ろな声]
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