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[天へと昇っていたはずの雪が]
…あ
[ゆっくりと再び、地へ降り積もり始める]
――。
[幾度目かの11月1日。]
ジュンタ……
[彼はどうなったのだろう、と。
"送信完了"の文字をぼんやり見つめ、思案する。]
[メールを送った後に食器を洗い終わりリビングへと戻ろうとする。
ふと携帯の液晶に目をやれば新しい日が始まる1分前。]
…………。
[手の中にあるそれをぎゅっと戻り、リビングへ入ればデンゴとジュンタの姿。
ふいにリビングにある時計が0時を告げるメロディーを奏で始めれば、目の前にいたはずのジュンタの姿がふわりと消える。
彼がいた場所に舞う白い雪。
それはアンが消えた時と同じで。]
え………?
う……そ……。
[信じられないと目を見開く。どんなにその場を見てもジュンタの姿はなくて。]
どうして…?
ずっと傍にいてくれるって言ったよね?
[ぽろぽろと目から零れ始める涙。
ジュンタが座っていた場所へとよろよろと近づけば、へたりと座り込む。
彼がいた場所には彼の携帯と白い雪が残っているだけで。]
うそ…!絶対うそ…!
[それ以上、言葉は出なくて、繋いだ手の温もりも好きだと言ってくれたあの声も笑顔も鮮明に覚えているのに、今はここにいない彼。
隣で呆然と見ているかもしれないデンゴに]
どうしてジュンタなの?
どうして?
[そう言って誰かに縋らずにはいられなくて。小さいその子に縋って涙が枯れるまで泣き続けた。]
[自分の指で彼の名を入力しておきながら。]
――。
[もしも、ジュンタが死者で。
彼が"還されて"いたとしたら。]
……。
[考えれば考える程に、落ち着かなくて。
そわそわと体を動かしては、]
[彼に電話をかけてみようか、と電話帳を開いたり。
彼の名を選び、かけようとして…閉じたり。
やがて、自責にも似た感情を感じながら、
ぐるりぐるりと同じ挙動を繰り返す]
[かちかちとせわしなく滑る指。
目的を達せずに、幾度も滑っては彷徨うだけ。
電話帳に在る彼の名を見る度に]
――。
[自分が送信した内容がリフレインし]
―、じゅ
[無意識に呟いていた名の切れ端に重ね]
っ
[きゅ、と唇を噛んだ]
[すぅ、と息を吸い、瞳を閉じる。
ぷるぷると小さく、体が震えていた。]
――。
[ゆっくりと瞳を開き]
…かける、から
[自分に言い聞かせる様に呟いて、コール]
――。
[通話、を押下すればやがて呼び出し音が鳴る。
あちらでも少し遅れて着信音が鳴るだろうか。]
[明日は、大切な日。
そう告げる携帯のスケジューラ。
窓の外、降り始める雪。]
…っ!?
[一瞬、通り過ぎるヘッドライト。
けれど、車の姿は無く。
とっさに押さえたこめかみ。
指先にぬめる、鮮やかな赤。]
…嘘だ。
[震える手を見つめたまま、瞬く。
はらりと幻のように、痕跡は消え去って。]
そんなはず、無い。
[暫くそうして泣き続けていればジュンタがいた場所に残された携帯からウィンターホールが流れ始める。
流れていた涙の痕をごしごしと手で拭い、縋っていたデンゴには]
ごめんね…。
[泣きはらした目で謝り、鼻をくすんと啜る。
彼の携帯を手に取り、表示を見れば「イマリ」の文字。]
………。
[誰とも話したくない。でも、この状況を伝えるべきなんだろうかと考えながら、通話ボタンをぽちりと押す。]
…………もしもし?
…ああ、かけてみるといい。
[異変については言えぬまま、イマリに頷いて、]
…メール?
[そこには、無機質な名前が5つ。]
…ジュンタ?
[欠けた、名前。]
[どれ位の長さの呼び出し音だったか。
それはとてつもなく長く感じられた。
出て欲しいけれど、出て欲しくない。
どちらであっても…彼に正直な自分を見せる事が。
いつも通り、会話する事が出来る自信は無かった。]
…あ!
[けれど。繋がった、とわかる、とつい声が漏れる。]
じゅ、
[ジュンタ。そう、名を呼ぼうとした所で]
……ミナツ、ちゃん?
[聴こえてきたのは、違う声で。]
[彼の名前を紡ごうとした相手が自分の名前を紡ぎ直すのが聴こえてくる。]
………そうです……。
[何か言葉を紡げばまた涙が零れそうで。ただ聞かれた事にこたえるのみで。
今、目の前であった事を伝えなければと思うのに言葉が出なかった。]
[電話越し、何かを堪えるような小さな声が帰る。
相手は問い掛けた名で間違いない様で]
…あの、其処にジュンタ、居る?
………連絡、貰ってたんだけど…
[自分の記憶から逃げる様に。
とぼけた様な質問を。恐らくはミナツにとって。
酷くなるかもしれない可能性のあるものを、
投げる。]
[イマリの問いにまた思い出したように涙が零れ始め、嗚咽が漏れる。]
……うっ……ジュンタ…消えちゃっ……たっ…。
[そう言えば、堪えきれずに声をあげ泣き始め]
ど…して…?
どうしてジュンタなの…?
[電話の向こうの相手に聞こえる悲痛な叫び。]
[相手の嗚咽に乗り、伝わる事実。
其れが頭をぐらぐらと揺らし、携帯を落としそうになる。]
……あ、…あの…ぇ…ぅ……
[口から漏れるのは、子供の言い訳の様な。
しどろもどろの、言葉とは呼べない、音。]
……。
[ミナツの声。叫びの様な其れを黙って聞き、]
……ごめん、あたし…
ごめん、なさい……
[反射的に、ぽろりと言葉が口をつく]
[電話の向こうで何かを言おうとしている彼女の声。
何を言おうとしてるのかわからない。
それでも泣き続けていれば、紡がれる謝罪の言葉。]
……ごめん……って…?
[彼女が何故謝るのかわからず、嗚咽を漏らしながらも尋ねる。]
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