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[朽ちた大きな流木に凭れ 浅く数多く息をする
男は桟橋の先に置かれた檻を見つめていた
広がる暗く冷たい海の奥にはつめたい魔物がいる
識らぬも感じるは血に 否 腹の奥に。
白い息吐き痩身に添わぬ大きな上着の前を寄せ
黒い手袋を着けた手で逆の肩を擦り寒気ひとつ
これからの冬を越すには―――薄すぎる]
[じゃり…]
[微かに何かを擦るよなにぶく硬質な音がなった]
[見つめる檻に 折に歩み寄る人影ひとつ
細い目に映す先鉄に伸ばされる細長いうでと
握り籠める手 繋がる、白い肢体。
身を微かに捩ると ジャリ と音なるけれど
かの水音よりも低く聞こえる事もあるまい]
…生贄 とは、
よく言ったもの で…
[長い時間 寒く冷たいとき。
穿たれ続けたおんなから男が離れ
歩み去る様子も 海を背景として見つめていた]
[黒い手袋を着けた手を 眼球だけで見下ろす
大きな上着の長い袖は指の根本まで腕を隠すけれど
ジャリ…と 鳴らす擦るような硬質な音が
その手首に嵌る分厚い鉄の輪の位置を報せる]
…屑 が。
[吐き捨てる態のひとりごとは足元へ
想う憎しみは―――腹の中に溜め込むが常]
[つきり、と 下腹が痛むのを感じて
一度だけゆっくりとそこをそっと擦った]
[予感、だ]
[識るそれ―――へと
自身から漏れるそれ―――への、
漠然とした、外すことなき 予感]
[聞き慣れた金属とまた音程の違う似たそれ
気安い言葉に 向ける細い目は更に細められてから
こくりと 重い喉鳴りは想いを落とす]
「も」、?
あぁ、確かに。
「も」ですね…
甘いもの ですか。
[煮えたぎるように?
神経質そうな仕草に微かな優雅を盗み見て
眩し懐かしむように じっと見遣った]
[高い位置の眉を 強く顰める
眼鏡の奥のいろに そのままの顔を向けて
黒い手袋着けた手を ひらと振った]
…女、に、限らないでしょう。
いのち、です。
[じゃり と硬質な音のあと
声に乗せるのは、露な嫌悪の色。]
[長い上着の裾揺らし硬い砂を踏んで]
生きるため喰らういのちは。
[男へと背を向け歩き出した。
手首に嵌る鉄の輪には、
西の街の地下牢のしるしと数字が掠れ並ぶ*]
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