[内心では盛大なため息を吐きつつ。
アルマウェルと視線を合わせる]
さて。
仲間は恐らく無事ではないと思われますし。
土地勘もありませんので、一人あの場所に戻っても……なのです。
[ここへ来る直前の状況を暈して伝えつつ、悩ましげに視線を泳がせる。
寧ろこのまま、あの襲撃で死亡したことにして逃げてしまいたいとも思うのだ。同行者達の弔いもできないのは少々申し訳ないが、そこは皆覚悟していただろう所で]
アルマウェル殿はどうされるのですか。
[視線を戻し、小首を傾げて問い返した*]
[>>10呟きに向けるのは苦笑一つ。
明瞭な答えに、そうでしたか、と頷きかけ]
宜しいのですか。
いえ、私としてはとても有りがたいお話ですが。
[軽い口調の提案に一瞬躊躇しかけ、けれどこの先を考えれば利用しない手などある筈もなく]
……宜しくお願い致します。
今は何も持たぬ身ですが、私に出来る事があればやらせていただきますので。
[確かに、その先は無事に町へと着いてから決めれば良い。町でなら稼ぐ手段も幾らかあろうし、それから礼をするのもありか。
ただより怖いものはないとは今回の事でも思ったが。人の好意を全て断って生きられるほど人生も優しくはないのだから*]
こればかりは、良きご縁に感謝を。
[軽い口調での快諾に微笑みを浮かべ。
固さのない一礼を送る]
重ね重ね、お世話になります。
そういう方が私としても心強いですので。
[これまでずっと裏の世界で生きてきた。柵を断ち切るにしても、表のまっさらな世界で一人きりは少々ハードルが高い。
その辺りも良くしてくれるだろうことが、本当にありがたかった]
そうですね。
連れていって差し上げるわけにはいきませんし。
……失礼を。
[墓地へと運ぶことに賛同しつつ。
ふと思い立ってカウコ傍らに屈みこみ、手元から隠していた刃を伸ばして彼の髪を一房切り取った]
どちらからいらっしゃったのかは存じませんが。
このような場所に全て囚われてというのも、お気の毒に思いますので。
せめて一部なりと外へ。
[楽団の仲間に教わったものに、身寄りもなく旅の空で亡くなった者の遺髪を縁の深い地へと還す風習があった。
同じ理不尽に巻き込まれた間柄、何か出来ることはないかと考えて思い出した。
感傷でしかないだろうがと苦笑しながら、白い手布にそれを包み込むのだった*]
[酷というアルマウェルに一つ頷き、今度は自分も担架を支える。
無人の墓地に安置を終えて、黙祷を捧げた]
ええ、長居は無用です。
[促しに従い地上へ戻る。
ここには荷も失ってたどり着いた身。着替えればそれで帰り支度もおしまいだった]
まぁ。
迷うよりは良い、ということで。
[扉の外には、緋色の絨毯の向こうまで、それとわかる道が伸びていた。
呆れ口調に肩を竦めてアルマウェルに続く。
背後には霧が立ち込めてきて、幾らも進まぬうちに屋敷は見えなくなっていた]
そうですね。
二度は遠慮願います。
[心から同意して頷く。
髪を揺らし吹き抜けて行く風は、どんな世界へと導いてくれるものか。
背後を振り返ることはなく、新たな道へと一歩を踏み出した**]