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(ぐ…っ!そう来たか!!)
[密着した細い体を、そのまま反射的に抱き締めようとするが、軽くいなされ身を離される。
唇に残るのは、女の唇と同じ蜜の味。]
催眠薬―か?
あいにくと王家は毒殺が横行する場でな。
この程度の薬物には体が慣れておるよ。
[妖艶な笑みをそのまま楽しむ。
紙と木炭が無いのが残念だ、などとぼんやり思う。]
[と、虚勢を張ったものの、いささかくらくらして傍らのベッドに腰を下ろし、占い師の女に続ける。]
どうだろうかな?ここは一つ、手打ちと行かんかね。
正確に言うなら、我々は手を組めるのでは、と思うのだが、どうか?
[と、精一杯の意識を集中して、蒼い瞳を覗き込む。]
[そしてふうむ、と考え込む。]
さてもさて、どうした物か。
媚薬と言うのは、どれほどの効き目だろうかな。
コンパートメントに戻り、まかり間違ってアルマでも襲ってしまいやしないかと心配だて。
[頭を掻くと、ちょうど列車は小さな駅に停車する。
―と一つの考えが閃いた。]
[駅の短い停車時間、ホームに降り立つと物売りから、煙草の包みとクワスを3、4本買い求め、そのまま運転席の―機関部分の方へと回る。
煙草とクワスの助けを借りて、そしてまた持ち前の社交性を十二分に発揮すると、運転手にあれやこれやと機械について、またはこの行程について冗談交じりに質問して行く。]
[すっかり打ち解け、ヴァル、イワン、と呼び合うようになった頃、画商は運転席から自身のコンパートメントへと戻ろうとする。
つまり―。]
ジャジャーーン!今わしは、一等車両、一号室。
つまりはミズノフスキー閣下のコンパートメントに来ています!
…入る者には警戒するが、出てゆく者には、誰も注意を払わん、というあれだな。
[あまりに簡単に事が運び、ついつい含み笑いが漏れる。
もう少し、離れた所で静かに進行する出来事は知らぬげに。]
[...は、聞きようによってはシャンソンと取れなくもない鼻歌を歌いながら、懐から薄い皮の手袋を取り出し手にはめると、手馴れた様子で無人の部屋の捜索を始めた。
誰かに見咎められでもしたら…。
その時はその時だ。]
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