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貴方の言葉を…しんじます。
わたくしは――人として頂いた名は。
イェンニですわ。
神の子、…――ええ。
皮肉なものですわ…
[告げる言葉は凪のように静かな、
それでいて高い声と低い声の二重(ふたえ)。
自身の奥に渦巻く黒いどろどろとしたものは
いつ噴きだすか判らず まだ声は震えた]
レイヨ様。
嗚呼…ありがとうございます。
わたくしも…応えられますよう。
抗えなくなったとしても…
貴方だけは、歯牙にかけぬよう。
[本当に、嬉しかったから。
そして握る手に力を籠めて、
夜通し血の目覚めに呻いたのだった。
告げる言葉に、最早抗えぬと知る事混じるとは
まだ気付かぬままに*]
[そして 鳥の鳴き声や村のざわめきで朝を知る。
薄い隈を作った顔は少しの疲弊を示していたが
朝が来れば 血が騒ぐこともなく――]
…え、
まだ他に、どなたかが…
[聞こえた「声」に 戸惑いがちに声を投げた]
対抗しうる何か…?
嗚呼、ちょっと待ってください。
わたくし、何か昔に、聞いた覚えが、
[眩しそうにいつも眇めた眸を伏せて
思い出そうと暫し沈み――顔を上げた]
随分昔にとても遠くから懺悔に来られた方で。
人狼を護って見極められる者を殺してしまった、と
おっしゃっておられた方がいましたわ。
その時は何かの比喩かと思っておりましたが。
[もしかして、と添えてから、は、と目を見開いた]
あ、その、わたくし。
他言無用の懺悔の話しをしてしまってますのは、
どうか、目をつぶってくださいませ。
[肩を小さく窄め困り眉でぽつりと呟いた]
[ニルスの言葉にカップを持つ手が小さく震える。
その言葉が真実だろうと、奥の方で知っている。
夜でないと、自分は血が目覚めている事は無い]
…でも、死なないわ。
[100年前に死んだという人狼へと想いを馳せて
それでも自分はと くちびるを噛む]
…見極める者、は、怖いですわ。
だから名乗り出てくれれば――
[随分昔のその懺悔の内容を
覚えていたのもまた――眠る血の為す事か
名乗り出られての先に想いを馳せて
伏せた眸の奥に 赤い血の色を隠す]
[死なせない]
[力強い言葉に、嬉しそうに笑む。
視線を投げる事は無く ただ繋がりの気配を離さない]
あの、…どうして。
殺させないように、して下さるのですか?
レイヨ…さん、は。
人間ですのに。
[ふと 昨晩から浮かんでいた疑問を投げた]
いえ、必要tという訳ではありませんわ。
ただその…
…人に害成す存在な訳ですから
不思議に思ってしまいました。
[釘打ちつけられてこうして閉じ込められる程。
目覚めてすぐにそれを考えて、
あまりに酷ければ自殺でも考え兼ねない、
それほどのものだと思うのに――
レイヨの言葉は甘く優しく、ひどく嬉しい]
わたくしが、怖くはないのですか?
[自分はまだ今 じぶんが、怖い]
お母様の…。
――それは
長老様はご存じだったのでしょうか。
[知って居て、閉じ込めたのだろうかと。
ユノラフの言葉を聞きながら視線は石へ
一族だけが使い得るのであろうそれを見遣る。
レイヨの問いにユノラフへと視線を戻した]
…ヴァルテリ、様……?
[聞こえた小さな呟きに思わず視線を向けた。
そうだ。思いだした。
懺悔にきた男は確か
遊牧の隊が来た少し後にきたのだと]
ヴァルテリ様も、でございますか?
[声帯震わさず コエを想う]
ヴァルテリ様。
狼として――はい、わたくしは。
まだ…その、初めてのことで。
喉が渇いてしまいます。
[とても年上の彼の落ち着きが頼もしい。
想う声には、高い声に低い音が同時重なった]
――レイヨさんは、食べませんわ。
受け入れて下さる方を、
食べる理由はありませんもの。
[静かな声で告げる――口許は弧。
夜に現われた爪や牙、そしてきっと耐えなければ
もっと訪れたであろう変化を見ても。
彼なら怖くないと言ってくれそうな気がして
小さくこくりと 頷いた]
はい、その、…ヴァルテリ、様。
わたくし…――
その、ドロテアが…
大事、なのに。
死んでほしくないのに…――
ひどく、その、……
[それはきっと長老が供儀となる少女にかけた、
星詠みを始めとする不思議な力なのだろう。
彼女の白い肌が目に焼き付いて
思い出すのは酩酊そうな程の――甘い匂い]
狼とは、そういうもの――なのでしょうか。
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