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……にしても、やーっぱ、似てるよなあ。
[泉を離れて、奥へ向けて歩きながら、零すのはこんな呟き。
揺れる藤の花房は、容易に実家の裏山を思い出させる]
……帰って来い、って言われてるわけじゃあ。
ないよ、な。
[そしてその光景に思うのは、こんな事。
実家からは、高校卒業したら戻って来い、と言われている。
……多分、その方がいいんだろう、とはちょっとだけ思っている]
……でも、なぁ。
[でも、それをやると、抱えている夢が遠のく。
いつかは届くかも知れないけれど、掴めなくなる可能性も出てくる。
夢を咲かせるために命を削るか、夢を犠牲にして命を繋ぐか。
そんな相反する二択の答えは出ていない]
……ま、今はそれよりも。
[ふる、と首を軽く振って、思考ループをぽい、とする。
今は、帳の奥へと向かう事に、意識を向けた]
[あれやこれやと考えて、その幾つかは横に積んだりぽい、としたりしつつ。
揺れる藤紫の奥へ、奥へ]
……ん。
[どれくらい進んだか。
不意に、場の空気が変わったような、そんな気がした]
この先?
[誰に問うでもなく、呟いて。
幾重にも重なる藤の花房をそっと押しのける。
その先に、見えたのは──]
……なんで。
この木だけ、咲いてないんだ?
[満開の花の囲む小さな広場。
その真ん中に佇む木。
その枝の上には、藤紫も若緑も乗ってはおらず。
どこか寂しげで、力ない佇まいでそこにあった]
仮装じゃないなら、変装?でもそれ余計目立ってるわよ。
[言わない言葉の代わり 遠慮なく 突っ込み]
そりゃ暑いわよー。でもこれ衣装だから脱ぐわけにもいかないし。
[ぼやきながら ぱたぱた 扇子は止まる事無く]
うん、シンちゃんもキクちゃんもね、先に行くって自分で決めたみたいだから。
私は、後からでいいの。
[最後の方は きっと 微妙に意味不明]
キクちゃん、シンちゃんって子が、そっちに行ったと思うの。
なんだか、身体が辛そうだったから、会ったら気をつけてあげてね。
[心と身体が、連動して、負担になっているとは知らないけど、少し心配になって、伝えた]
[呼ばれていると、感じはする。それに逆らう気もないけれど]
[気遣ってくれた優しい青年が、どこかに消えて、それを確かめずに動けない]
[もしかしたらって、思うから]
もしかして...最初に零れ落ちちゃったのが...
[だとしたら、彼女を案じた青年もそちらに引っ張られたのかもしれない、きっと、それは...]
私のせい...?
[呟きは小さく]
[花のない木に近づいて、軽く、手を触れる。
葉も花もない所から、何となく察してはいたが、触れる感触もどこか乾いた感じで]
……枯れてる……っていうか。
枯れかけてる?
[植物の知識なんて大してないけれど、何となく、それはわかって]
……なあ。
もしかしなくても、俺呼んだの、お前?
[小さな声で問いかけてみる。
木からの答えは、残念ながらないけれど。
ずっと内に抱えている不協和音が、それを肯定するように、ひとつ、響いた]
そ、か。
[肯定してくれたのはいいが、内に響く感触は何気に負担になるらしく。
大きく息を吐いた後、木の前にずるり、と座り込んだ]
…うそ。
[友人の容赦ない突っ込み。
なんたることだ。
完璧だと思っていたが、目立っていたらしい。
い、いや、目的は自分だと気付かれなければいいのだから、目立つ目立たない大したことではない。筈。
だよ、ね?]
私も着替え、持ってないし。
[誰がここに居るかもわからないし。というのは心の中。
友人は本当に歩くのも大変そうだと改めて思う。]
…そう。
[シンちゃんは先程の新郎だと解ったがキクちゃんとは一体。知り合いだろうか。
よくわからないが、いいというならいいのだろうと深追いはせず。消えた友幸については。]
妹さんを?
そうなんだ、知らなかった。
[初耳のこと。
会えたかどうかも知らないと伝える。]
たまたま、踊っている所見かけただけだから。
あ、あと、兎と揉めてたような。
[光景を思い出すように付け加え。]
話してる最中にいきなり、ふっと消えるから驚いた。
[事実を淡々と話す。]
此処をでる、きっかけ…?
[掬子さんのことばを、くちにして反芻します。
この不思議な世界を出るきっかけ。
それは、あの真昼さん曰く「ウサ公」とお呼びするあのうさぎの言葉とどことなく繋がるような気がして。
――でも、いいのでしょうか。
何に対して、明確な理由は出て来ないけれど。
そんな不安がよぎるけれど。
真昼さんを一度見上げ、何かを確認するようにうなづいてから。
わたしたちは掬子さんの案内について行きます。]
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