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−屋根の上−
[飛んでいったレンズが落ちるような音は聞こえない。
もうずっと彼方に在るのだろう]
撃たないで、ときましたか。
[軽く肩を竦める。
まだ風は癖のある髪と長い外套を遊ばせていた]
…さて、どうしましょうね。
[軽く肩を竦めて、しゃがんだ体勢から立ち上がった]
>>3
おや、そんなに難しい顔をしていましたか。
[レンズのなくなった瞳で両手を広げた少年を見る。
銃口は外さないまま、軽く首を傾げた]
残念ですが、交渉は決裂です。理由は三つ。
[小さく肩を竦めて、それから撃鉄を起こした。かちん、と音が響く]
ひとつめ。どこの誰だかわからない相手の手を借りるのは好きではない。
ふたつめ。たとえMonsieurスモーバーが知っていようが…
ああ、ええとウルスラさん?その方が秘宝のありかを知っていようと、
別段構わないのですよ。私の目的はね、単なる秘宝ではないのです。
だから、宝を持って行きたい人間がいるならば、持っていけばいい。
勿論、Mademoiselle───貴方もね。
[ちらりと、機関室へと降りていくナイフを手にしていた彼女を見る。
軽く首を捻ると緩やかな癖のある髪が揺れた]
それから、みっつめ。
[ちら、と少年のほうを見てから微笑んで]
私の性別ひとつも見抜けない子供のに付き合うつもりはない。
まあ、そんなところかな。
[軽く肩を竦めて続ける]
私の目的はね───この列車と鉄道そのものだから。
私の腕の心配をしてくれてありがとう坊や。
東洋人の血は見た目は確かに若く見せるけれど、
西洋人の血は人の見た目を随分大人にさせるものだ。
[屋根の上で、眼鏡を失いながらも平気で立ち続ける姿は言う]
死にたくなかったら、秘宝とやらと一緒に逃げるといい。
私は、この列車を再起不能にさせるのが目的なんだ。
────どういう意味かは、解るよね?
[少年の足下を狙って威嚇のように一発。
酷い音が、天井を伝って客車に響いただろう]
そう、逃げてくれると助かる。
少なくとも、私はね。
[一歩下がった様子を見て目を細めた]
つまらないかい。何なら私を止めてみるかい。
そうしたら、少なくとも帝国から金一封くらいは出るかもしれないよ。
国の威信をかけた大事業の破壊工作を止めるわけだからね。
[かち。リボルバーが一つまわっていつでも次を打てる用意ができる]
それもいいね。だが残念ながら爆薬も火薬もない。
[うんざりとした顔を見て小さく笑う。ひらりと消えていく姿、追うことはない。
するべきことは他にあるからだ]
…Takaisin ylpeillä äiti maa minun tarkoitukseen.
(私の目的は祖国の誇りを取り戻すこと)
Wordin menettänyt maa, joka oli menettänyt, ja niissä on riistetty.
(奪われた言葉、奪われた国土、奪われた誇り)
Se on aarre, pyydän. Vain palata toivon.
(それが私の求める宝。取り返すことこそ、私の望み)
Se on ensimmäinen jalansija tuhota tämän rautateiden takaisin heille.
(この鉄道を破壊することは、それらを取り戻すための最初の足掛かり)
[言葉は小さく、薄い唇を滑って落ちていく]
Olen takaisinvalloituksen kaiken.
(私は、総てを───奪還する)
[脇腹をなぞる。そこには昔から痣があった。
自分を捨てた母の国は、醜いと痣どころか自分の存在すら認めなかった。
でも、その痣はスティグマに似ていたから、日本人として
正教会所属の免罪符を手に入れられた。
このままいけばイルクーツク。その先にはウラジオストク。
軍港のある街だ。
そこで列車が街に突っ込んだら、どうなるだろう。
目的は、軍と、列車と、国力と。総てに打撃を与えること。
そして、父なる芬蘭の大地に再び歓喜を取り戻すために]
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