[1] [2] [3] [4] [5] [メモ/メモ履歴] / 絞り込み / 発言欄へ
─ どこかの海辺 ─
[ざああ、ざあああ、と波の音が響く]
『……ねぇ、シオマネキ……って、ホント、なんでシオマネキいるし』
[波音の合間を縫って上がる声。
呼びかけられた蟹はんなもん知らんよ、の態でさかさか歩いて行く]
『だから、シカトしないでよー、話聞いてよー』
[さかさか さかさか。
てんてん てんてん。
夏の海辺で蟹はのんびり横歩き、兎は忙しなく跳ねていく]
『ねぇ、シオマネキ、ここ、色々とヤバいよね』
『……』
『『時計』の主の姿が見えないんだ』
『……』
『どこかに沈んじゃってるみたいなんだよ』
『……』
『……沈むと、全部沈んで『時計』も壊れちゃうんだよねぇ』
『……』
『どーすればー、いーと思うー?』
[矢継ぎ早、紡がれる兎の問いかけに。
蟹は終始、無言だった。*]
☆舞台設定
・プロ、エピ
日常空間。
時代設定は現代、場所指定は特にありません。
全員が同じ町にいる必要もありません。
・1d以降進行中
PCたち以外は誰もいない、海辺の街。
駅などの施設はひと昔前、と言った風で、どこか懐かしさを感じさせる。
街のあちこちに色とりどりの朝顔の花が咲いており、時折、どこからともなく歌声のようなものが聞こえてくる。
※街に何があるかは言ったもん勝ちです。
※歌声は、聴く人によって様々に変化します。
☆PC設定
ごく普通に生活している、(一応)一般人。
もしかしたら不思議な力を持っているかもしれないし、なんにもないかもしれない。
全員、『夏の海』や『朝顔の花』に何かしらの強い『想い』を抱えている。
その『想い』が特に強く海に沈んだ『何か』と共鳴した所が、『鍵』と『螺子』の依代となった。
☆時計兎
直立二足歩行する、謎の兎。懐中時計を手に持ち、てんてんと跳ね回る。
性格はマイペースというかゴーイングマイウェイ。
自分の話は一方的にするが、人の話は絶対聞かない。
『想い』が形を成して時を刻む『時計』の管理者らしいが、その仕事ぶりには疑問がつきまとう。
※状況説明が必要な時に、村建て発言で現れるNPCです。
※多重遍在してどこにでも現れるので、兎の話を聞くために集まる、という事はしなくても大丈夫です。
※質問事項があった場合は、こちらでお答えします。
☆狼側設定
・鬼(人狼)
海に沈んだ『何か』の『想い』と強く感応したもの。『時計』の『鍵』。
見つけてほしい、けれど、捜さないでほしい、という矛盾を抱えた『何か』の願いに共鳴(もしくは乗っ取られ)して、空間からの他者の排除を試みる。
が、時計兎の干渉のため、力は明後日の方向に跳んでいく。
※襲撃はランダムセットしてください。
※6人時にのみ編成される囁き狂人も、襲撃に関よ出来ないだけで基本設定は同じです。
☆村側設定
・占い師
抱いている『想い』の影響から、『何か』と共鳴した者を感知できるようになった。
が、『何か』の拒否反応のためか、力は明後日に跳んでいく。
※占いはランダムセットしてください。初回呪殺避けのダミー占いはありです。
・霊能者
抱えた『想い』から、『何か』と共鳴した者を感知できるようになった。
が、その力が発揮されるのは、対象が狭間の空間に落ちてからとなる。
狭間の空間を覗き見る事はできるが、直接の触れ合う事はできない。
会話は一応できるが、傍目には独り言にしか見えない。
・村人
『夏の海』や『朝顔の花』に『想い』を抱くが、幸い?おかしな力は持たずにすんだもの。
☆妖側設定
・狐
海に沈んだ『何か』の『想い』と強く感応したもの。『時計』の『螺子』。
宿した力が強いため、当人の意思に関わりなく向けられた力を弾いたり、或いは、向けられた力から何が何でも逃げようとしてしまう。
☆吊り・襲撃
吊り・襲撃共にランダムセット。
吊り・襲撃・呪殺、いずれの場合も対象者は霞のようなものに包まれて消えてしまいます。
・吊り:空間の綻びに囚われる事による、狭間落ち。
・襲撃:『何か』の拒絶の念による、空間からの弾きだし。
☆墓下
幻影の海辺と現実の狭間の空間。
海辺の街ではあるのだが、現実にも近い位置にあるため、そちらに干渉する事はできないし、特殊な力を持ってしまったもの(=霊能者)以外からは姿も見えない。
☆進行関係
【この企画は人数によって、進行方法が変わります!】
・人数がダミー抜き5人以下だった場合
編成:鬼狐霊村村
1dと2dを48時間にして進行。低確率で3dに突入しますが、その場合は24で進行してエピ入りします。
・人数がダミー抜き6人以上だった場合
編成:6人:鬼囁狐霊村村
7人:鬼鬼狐占霊村村
8人:鬼鬼狐占霊村村村
1dのみ48時間、以降24時間で進行します。
☆プロローグ
何事もない日常の、一幕。
が、時折視界の隅を時計を持った兎が駆け抜けたり、真夏の海辺が見えたり、と異変の欠片めいたものが発生している。
※入村後、簡単なプロフィールをメモに貼っておいてください。
全員が同じ町にいなくても構いません。
☆1日目
突然、柱時計のものらしき鐘の音が響く。
その後、風景は一変。海辺の街へ移動する。
時計を持った兎が各自の前に現れ、事情を簡単に説明。
『鍵』と『螺子』を見つけて、と一方的に依頼してくる。
※時計兎は、開始後に天声で簡単に描写。時計兎は多重偏在するので、この話を聞くために一箇所に集まる必要はありません。
※1日目開始の直後の天声の隅っ子でダイスを振ります。出目が偶数だったら鬼が、奇数だったら狐が『何か』の正体を決めてください。
☆2日目
引き込まれていた一人、アンが姿を消す。
時計兎曰く、「あ、空間から零れ落ちちゃったみたい☆(てへ」との事。
どうやら、『時計』の修復を望まぬものがいるらしい事と、空間自体が不安定なので強引に弾きだされる事があるらしい、とだけ説明して、兎はどこかに消える。
☆3日目以降
また数人が姿を消す。
『何か』の正体は何なのか、『鍵』と『螺子』はどんな道を選ぶのか──それは、それぞれの『想い』次第。
☆エピローグ
『鍵』と『螺子』は見つかるか、そしてその後の選択は──。
※『何か』にどう働きかけるかは、勝利陣営が決定できます。
※生存者の簡単な〆の後は、灰でフリートークに。その後ロールや補完は自由に展開してOK。
[ざああ、ざああああ、と波音響く。
音に紛れて、響く歌。
歌にあわせて揺れる色とりどりの朝顔は。
どこかしょんぼり、沈んだ態で。
吹き抜ける風に揺れていた、けれど]
[――はらり、舞い落ちたひとひら。
点々と木洩れ日の彩る並木道に、みどりいろ。
吹き抜けるようにさらり、風が頬を擽る。]
夏かしら。
[零れた、ことばは何処へともなく飛んでって
あたしはひとり、街を歩く。
あったかいような
なつかしいような
あなたの好きな夏。
あなたの好きな空。
きっと、今だって]
ふふっ。
[ひとりで笑って、きっと変。
それでもどこか嬉しくて、蒸れた袖をたくしあげて
ひとりでに、ぎゅうっと背伸びして
ひとりでに、足を鳴らす。
規則正しく躍る足は、楽しげに
てんてんと、木洩れ日の街を歩いてゆく。
反対に駆け抜ける風はうっすらと
渚の潮風そっくりで。]*
[ちゃぷん、と小さな水音が響く。
音の源は足元のたらい。
一杯に張った水に足を浸して一休み]
……ぅぁっちぃねぇ……。
まあ、それでこそではあるが……。
[ぱたぱた、手にした団扇で風を起こす。
そんな風に一休みできるのも、今の内だけ。
休憩が終われば、町内の夏祭り関係の経理事務との戦いが待っている。
それでも今は、と。
酒屋の若旦那は、麦茶片手にささやかな涼を貪る事に専心する。**]
[── 夏特有の強い日差しが頭上から差し込む。
飼い猫を抱えたまま家の玄関を出て、なだらかに下る坂の上から海を見遣った]
……今日も暑くなりそうだねぇ。
[視線の先にあるのは海傍にある古ぼけた灯台。
それを見詰めるウミの目は優しげだ]
さぁ、今日も様子を見に行こうか。
[抱えた飼い猫を数度撫でた後、一度家の中へと戻る。
ややあって、身支度を整えたウミが飼い猫と共にゆっくりと坂を下り始めた*]
[ぱしゃん、と音を立てて足をたらいから引き上げる。
跳ねる飛沫に目を細めつつ、傍らに置いた手拭で足を拭いて、下駄を突っかけた]
さーてと。
[手拭は畳んで懐にいれ、帯にはスマホと財布を挟んで]
ちょいと、情報収集いってくるわー。
[羽織を肩に引っ掛けつつ、奥に向かって声をかける]
[ちなみに情報収集=子供たちのたまり場である駄菓子屋に行く、である。
一応は、夏祭りの出店に何を出すかのリサーチも兼ねているのだが。
わりと真剣に、子供と遊んでいる姿はしょっちゅう目撃されていた]
「て、ちょっと、若ーっ!?」
なーんかあったら、メールしろー。
[後ろからの呼びかけもどこ吹く風と受け流し。
からころり、下駄を鳴らして歩き出す。*]
[並木道を抜けた先、ガラス張りのビル。
六階の出版社へとエレベーターに乗って
行き交う人波に、飲まれないように
都会はいつだって、ふとすれば溺れてしまいそう。
案内のベルが甲高い音で到着を告げれば、担当さんのデスクを探す。]
お願いします
[見つけては、抱えた封筒を渡して。
なんでもない話をしては少しだけ、喧騒を忘れられるよう。
そんなのもすぐだけど。終わればぺこりと頭を下げて、また同じ道のりを辿ってゆく。*]
やぁ、おはようさん。
[街の人と顔を合わせる度に挨拶をして、時折雑談を挟みながら坂を下っていく。
年のこともありその歩みはとてもゆっくりとしたものだったが、覚束無いものではなかった]
あぁ、灯台を見に。
わしの日課だからねぇ。
[今日も行くのかと問われて、柔和な笑みを浮かべながらウミは頷く。
とは言え、最近では長距離を歩くのが辛いため、灯台が良く見える丘まで下りて、そこから眺めるのが専らとなっていた]
海守。
[街の人と別れて足元に声をかければ、ゆらりと尾を揺らす飼い猫がウミへと視線を向ける。
行くよ、と言うように視線を投げかければ、歩き始めたウミに合わせて飼い猫もまたその隣を歩き始めた。
連れ合いを亡くしてから飼い始めたこの猫は、自由に歩き回ることもあるが、大抵はウミの傍から離れずその後をついて行く*]
[からんころん、と下駄が鳴る。
如何なる時も和装で通す酒屋の若旦那は、近所ではちょっとした名物扱いだ]
お、朝顔。
[賑やかな歩みがふと、止まる。
視線の先には色とりどり、揺れる朝顔の鉢植えが並んでいる]
今年も見事に咲いたねぇ……祭りに出すの?
[朝顔を世話する花屋の主人に声をかけ、交わすのは世間話。
内容が、祭りのそれへと偏るのは今は已む無しか]
ウチ?
あー、これから相談するとこ。
奉納のあれこれもあるしねぇ。
[酒屋はどうするのか、という問いに軽く返してけらりと笑う]
取りあえずは、祭りの賑やかしの意見も取り入れんとねぇ。
予算だけ気にして安いもん並べりゃいいってもんじゃあないし。
[数を捌くために質を落とすのはやりたくない、と。
そんな矜持をさらりと語ってから、花屋の前を離れて歩き出し]
……はい?
[目の前をてんてん、てんてん、と過っていったもの──直立二足歩行をしている真白の兎の姿に。
思わず、呆けた声を上げて瞬いた]
……あっれー?
俺、疲れてる?
[呆けている間に、白の影は消えて。
店の者が聞いたら、んなわけない、と総突っ込みが入りそうな呟きが、口からもれた。*]
[さらさら、水の流れる音だけが聞こえる川辺。
堤防沿いの道から降りてきた少女は、周囲を見回すと安堵の表情を浮かべた]
……やっぱり。
この時間なら人居ないと思ってたんだ。
[平日ならば通勤通学などで一定数の通行があるが、休日はそうでもない。
特に今の時期は耳を擽る涼やかな音とは対照的な日差しを避けたい人も多いだろう]
近くにおうちも無いし、散歩する人とかはもっと朝とか夕方とか涼しい時間選ぶだろし。
此処なら声張り上げても大丈夫だよね。
ま、もし怒られたら声出し控えて走り込みに切り替えればいっか。
[言いつつ目星をつけていたらしい木陰に荷物を置いて陣取り。
軽くため息をついた後にストレッチを始め]
ってか熱中症とか怖いから本当はカラオケ行きたいとこだけど、もう今月お小遣いやばいしなぁ。
なんでうちの学校日曜は生徒入れてくんないんだろ…ってか皆自主練どうしてんだろ。
[なんてぼやきを交えながらも準備運動を終え、発声練習に入った**]
…ふぁ…
[ふいに眠気を覚えて、並木道を逸れた小路へと。
用事は済んだけど、お日様は頭のてっぺんに。家路につくにはもったいなくて
ふらり、気ままに足を運べば、見慣れた児童公園。構わず足を踏み入れて、近くのベンチへ。
子どもたちの騒ぐ声に耳を傾けながら、あたしの姿も見えたようで
とてとてと、こちらへ駆け寄るのがみえて]
こんにちは。
[色付き始めた肌色の、半袖シャツの少年達にあいさつをする。
日陰の下のママさん達にもぺこり、お辞儀して]
「こんにちは、蒼井さん。今日は原稿?」
そうなんです、締切で
[気心知れた他愛ない話。
ちょっとは、有名にもなるかもしれない。
子どもも旦那もいないひとり働きの女が、こんな時間にひとり、しょっちゅう公園に現れては。*]
[首を傾げていたのは短い時間。
からころり、下駄を鳴らして歩いて行く。
目指すのは、子供たちの集まる場所で]
おー、今日も賑やか、善哉々々、ってか。
[児童公園の賑わいに目を細め、ふらりとそちらに歩みを向ける]
よーっす、今日も元気だなあ。
あ、デュエル? わりぃ、デッキ持ってきとらんかったわ。
[下駄の音に気付いて駆け寄って来た子供らに、カードゲームの対戦を挑まれ苦笑い。
元々、事務仕事前の息抜きも兼ねたそぞろ歩き、遊び道具の準備は忘れていた]
[とてとて駆け回る子ども達を遠目に、世間話に耳を傾け。
顔ぶれはもうほとんど覚えてしまった子ども達の話に、笑ったり驚いたり。
あなたはどうなの?なんて、あたしの話にも興味があるようだけど]
さぁ、どうでしょう
[そうやってあたしが首を傾げるのを見ては、ほんのちょっぴり呆れ顔されて。
世間的には考えるような歳ごろだろうけど
どうにも、ぴんとこなくて
照りつける日なたに少し、眩しさを覚えて
ふと、視線を彷徨わせれば。]
[徹頭徹尾、夏だ。
夏だから、くそ暑い。
もうすぐ夏休みだとか、休暇制度も無い自営業にはかんけーないんだっつーの、暑いんだよこんちくしょー!]
はい、出来上がり。
[浴衣姿のじょしこーせーに、仕上げの紅を差し、涼しげに微笑みかけながら、俺は内心悪態ついてたわけさ]
[俺は化粧師だ。まあ、いわゆる、めーくあっぷあーてぃすとだな、なーんて一応かっこつけてはいるが、要は美容師に毛が生えた程度のもんだ。
仕事場もお袋がやってる美容室で、稼ぎなんざ小遣い程度。
祭りの時は、踊りに出るとか浴衣に合わせて化粧したいとかっていう若い娘やらのおかげで、ちょっと潤うけどな]
はい、次は、美穂ちゃんだね。
うん、ピンク系?君にはオレンジ系の方が似合うと思うよ。
絶対ピンク?彼氏の好きな色なのか、そうか、じゃあちょっと肌色調整しようね。
[女の化粧に口出す男とかろくなもんじゃねーぞ、やめとけー...と、言ってやる筋合いも無し]
[チリン、と扉の鈴が鳴った]
『ガムラさーん、速達でえす』
[ガムラじゃねえ、ンガムラだよ、と突っ込み入れるのは10年前、中学と同時に卒業した。もともと漢字で書けば『我邑』だ。
先祖代々『ンガムラ』と読むんだっつーのは親父のこだわりだったが、とっくにおっ死んだしな。
そも呼びにくいんで、クラスメートなんかみんな「ムラ」って愛称でしか呼びゃしねえ、意味ねえっての]
はい、ご苦労様。
[印鑑押して受け取った速達は俺宛だった。
誰だよ?俺に急ぎの用がある奴なんて...]
.........あ、ああ、ごめんごめん。
ちょっと下地塗るから目を閉じてね。
[俺はその手紙を、封を開けること無く着物の懐に捩じ込んだ**]
よっこい せ、と…。
[年を取るにつれて自由が利かなくなった身体を動かし、丘の上 ── 展望台のベンチに座る。
その膝上に飼い猫が乗り丸くなるのを待ってから、ウミは灯台へと視線を向けた]
……お前さんも年を取ったのぅ。
[かつては真っ白だったその壁も、今では雨風はもとより潮風にも晒され錆なども目立ち始めている。
灯台を去ったのは10年程前のこと。
もう遠い過去のようにも思えた]
[波音を聞くには場所も耳も遠く、聞こえてくるのは周囲の車や人の声が辛うじて。
ただただ海の景色を視界に捉えていたウミの異変に気付いたのは、膝上で丸まる飼い猫の方だった。
一瞬途切れた周囲の音に飼い猫はピクリと耳を動かし、僅かばかり首を持ち上げる]
…………?
[ウミもまた、刹那に見えたものにゆっくりと瞬きを繰り返した。
遠いはずの海岸線が目の前に広がっていたのだ]
…気のせい、かのぅ。
[首を傾げ呟いた言葉に、飼い猫が「なぁう」と小さく声を返す。
気のせいではない、と言いたげだった飼い猫の意思は、ウミには伝わらず終い*]
あ、あ、あー、あー。
[堤防を降りた川辺は人影は無いが、遠くに子供の遊ぶ声や車の走る音などが聞こえてくるから一人でもそれ程寂しくはない。
だが、すぐ木陰に入ったから強い日差しを直接受けることは無いが暑いことには変わりなく。
凍らせてきたペットボトルのお茶を飲んで適度に水分補給兼休憩をしながら、音程と抑揚を付けた発声を繰り返していたのだが]
…ん?
[ふと、誰かの声が聞こえた様な気がして、練習を止めて周囲を見回した]
[その目に飛び込んできたのは、今まで見えていたそれと似たようで全く異なる水辺の煌きで]
…え……、は、あ、え?
何これ、海?なんで?
[唐突な変化に困惑した声をあげ、瞬きを繰り返すと数回程で景色は戻り]
…………あれ…?
気のせい?…でも、確かに…
[気のせいにしては、今さっき見た光景はリアルだった様に思えて困惑は引き続いたまま、だったが]
……長居過ぎちゃった、かなぁ…?
[木陰の下とはいえ、炎天下に居続けたせいで幻覚でも見えたのだろうか。
そんなことを考えて、そろそろ引き上げた方が良いかもしれないと思いつつもまだ川辺の揺らめきから目を離せずにいた**]
おう、この時期は冷酒もいいもんだよー。
お勧めけっこーあるから、気が向いたら店覗いてなー。
[さらっと客引き交えて返し]
はっはっは、さすがに夏神さん家が夏本番にへたっちまったら、サマにならんだろ?
……ま、当代はちょいと置いとくが。
[当代店主である父が暑さに弱く、この時期は次代に諸々丸投げているのは知られた話。
それでいて、当の次代はこうなのだから、従業員の苦労は推して知るべしか]
─ 昼過ぎ・学生食堂 ─
……日本って、温帯のはずだったような。
違った?
[実験の合間の腹ごしらえ。
目の前の、半分ほど減った皿の中身は、初めて食べるものだったが、「冷やし中華」という代物らしい。]
へぇ、飲みたい!いつも麦酒ばっかりに寄っちゃうけど
お勧め、今度見に行くね。
[へらりと笑って。今あるお酒のストックが無くなったら、寄ってみようかと]
それもそうね、夏神様ってなんか素敵。あたしの分の元気も、ゼンちゃんに託しちゃおうかな。
そういえば、お父さん大丈夫なの?
[夏になると見かけない、当代さん。暑さに弱いのはどこかで聞いてて、夏のお店は大抵ゼンちゃんがいて。
同い歳なのに、すごいなぁなんて。
密かに感心してみたり]
[楽しげな表情につられて。
真似っ子してに、と口角を上げてみせる]
あら、おじいさん達は乗り気じゃあないの?てっきり好きかと思ったわ。
わぁい、あんず飴!楽しみだなぁ、屋台
[拾われたリクエストに、さすがゼンちゃんとばかりに喜んでみせて。
次々と要求を口にする子ども達に、圧倒されてしまいそうだけど
手際良くメモしてく手元を見つめながら、やっぱりすごいな、って。]
サービス?ふふ、もちろん浴衣で行くわ。
夏祭りといえばこれだもの
[どんな浴衣にしようか。家にあるのは、青い朝顔模様の浴衣。シンプルだけど、よく馴染んで
やっぱり今年も、それかもしれない。*]
あー、祭りはいいんだけど、予算が、ってそっちで渋るんよ。
毎年苦労してんのよ、次世代は。
[冗談めかした口調で言うものの、わりとここらはシビアな世界で。
活性化の必要経費、と主張する次世代と保守的世代の攻防は、熾烈なものとなっている……らしい。
最終的には、お祭り好きが勢いで押しきるのだが]
いやいや、来た人が楽しめるようじゃないと、仕掛ける側も楽しくないからねぇ。
[楽しみ、という言葉>>40ににこりと笑い、一通り、リクエストを書きつけていく]
おう、んじゃ、楽しみにしてるよー。
[浴衣への是の返事にも楽し気に笑んで。
一通り、リサーチを終えると、スマホをまた帯に挟み込んだ]
さぁてぇ……そろそろ戻らんと、さすがにまずいな。
[帯に挟む前、ちら、と見やった時計の表示にそんな事を呟いて、腕を上に上げて身体を伸ばす]
んーじゃあ、俺、店戻るわ。
ぼちぼち手ぇつけんとまずい仕事が待ってるんでな。
[腕を下ろしつつ、軽い口調でそう告げて。
子供たちにも、今度はデッキ持ってくるからなー、なんて呼びかけてから、またからころり。
下駄を鳴らして歩き出す。*]
[暫く水面から目を外せないままでいたが、さっき見えた景色が再び現れることはなかった]
…やっぱ、気のせい?
それか蜃気楼だったのかな。
…うん、そうかも。
こっから海ってそう遠くないし。
[蜃気楼がどうして見えるのかは良く知らないけれど、幻覚よりは若干心証が良く思えて。
無意識に自分を納得させようと思考を声に出しながら、此処から一番近い海のことを思い浮かべた。
自転車で三十分位の距離だから、子供の頃は良く行っていたけれど何時の間にか行かなくなって。
友達に誘われても断るようになったのは何時からだったか]
…そういえば、どうして行かなくなったんだっけ。
[思い出せないな、と小さく呟いた声は思いのほか大きかった**]
はい、これでどうかな?
ピンクが乗るように肌の色、ファンデで調整してるから、化粧直しはこまめにね。
え?祭りに出張かい?
はは、化粧師の夜店てのも悪くないかもね。
[こんにゃろ、無料で化粧直しさせる魂胆だな?
いまどきのじょしこーせーはちゃっかりしてやが...る?]
え?
[ちょ......なんだこれ?]
[まてまて、有り得ねーから、鏡の中に海岸と、うさ、ぎ...?]
.........
...............
あ、いや、ちょっと疲れ目かな。
[目を擦ったら、わけわかんねー光景は消えた。白昼夢かよ?笑えねー。
俺、そんなにストレス溜まってたっけ?]
かーさん、休憩行ってくる。
[疲れてるんだ、そうに違いない。今日はくそ暑いし、くそ忙し過ぎた。
店の冷房の効きは悪いし、喉も渇いた。
速達なんて......来るし]
『出掛けるなら、ついでに夕飯買ってきて。今日作ってる暇ないわ』
んー、わかった。ほか弁でも見繕ってくるよ。
[チリン...]
......外もあっちー、て当たり前か。
[確か海岸通の方に、新しいカフェが出来たとかって、お客が噂してたっけ...行ってみるかな?*]
─ 高校の音楽室 ─
[ヴァイオリンの弓をおろして大きく息を吐く。
集中が途切れると、セミの鳴き声が気になった。
アブラゼミだ。
夕刻時や夜間に鳴くことでも有名なこのセミの声が、
初音は嫌いだった。
あの事件を思い出させるから。]
――……。
[窓辺へと近づくと、初音はカーテンを引く。
窓を閉めたままでもこの音量だ。
開ければさぞ五月蠅いだろう。]
[明るいチャイムの音とともに下校を促すアナウンスが流れる。
思わずスピーカーと壁の時計を仰ぎ見た。
外の明るさに惑わされるが、アブラゼミの大合唱を考えれば、
とっくにそういう時刻なのだ。
初音は手早く弦と弓を緩め、ヴァイオリンケースに仕舞う。
忘れ物がないことを確認すると、音楽室を出て鍵をかけた。
毎日放課後に練習して2年半。
音楽教諭もいちいち確認したりはしない。]
[刹那の幻覚はその時限りで、ウミは日よけの下でただただ海を、灯台を眺めていた。
毎度思い起こすのは灯台守として過ごした日々。
出会いと別れを繰り返した懐かしい記憶が甦る]
…あの子達はどうしておるかのぅ。
[夏になれば街に住む子供達が海へと遊びに来た。
灯台守をしながら浜辺の管理も任されていたため、幾度か顔を合わせる機会もあった。
そういえば海の家はまだあるのだろうか。
そんな疑問を抱くほど、ここ数年は海岸へも足を運べていない]
本当に、年を取ったものだ。
[ふぅ、と疲れたような溜息が零れ落ちる。
時に抗えなかった悔恨が燻るかのよう]
─ 校舎→校門前 ─
[校舎の外へ出ると、ねっとりした熱気に包まれた。
海の近くの町なのに、暑さが和らいでいる実感はない。
ヴァイオリンケースと学生鞄を提げた初音は目を細め、
急ぎ足で校門を目指す。
校門前の桜の木も、この季節にはただの広葉樹にしか見えない。
足元の葉影に気を取られていたせいか、
門から一歩足を踏み出した瞬間、
波が目の前に迫っていた。]
えっ…………?
[反射的に後ずさる。
と、肩が門柱にぶつかった。]
[振り返ると、いつもの学校だった。
2年と数か月通い慣れ、見慣れた門柱と、門扉と、桜の木。
視線を戻すと、海岸も波もどこにもなかった。
目の前にあるのは、舗装された普通の通学路だ。]
……え……ええ?
[ヴァイオリンケースを抱きかかえ、初音は視線をさまよわせる。
暮れゆく空を眺め、校舎を振り返り、通学路と周囲の景色を見比べて、
足を運ぶ。
茫然と数歩進んで気づいた。
波の音がしなかった、と。]
[1] [2] [3] [4] [5] [メモ/メモ履歴] / 絞り込み / 発言欄へ