189 あおいろ幻歌
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[もう少し、もう少し。
聞こえる波の音と伝わるコエに向かい、強く足を踏み切って砂浜に飛び込んで。
そこに見えたのは、朝顔揺らぐ海の中から射す金色の光。
>>82その近くに立つ男性の顔に見覚えはなく、けれどすぐに誰かは解った]
ゼンジ、さん!
[全力で駆けてきたから、無理させて悪い、という声に返事する余裕は無く、代わりに顔を横に振り。
伸ばされた手、海の藍に染まった小さな鍵を乗せようとした所でふわり、空へと舞い上がっていった。
>>#1聞こえたコエは、やっぱり変わらない調子の、信用できない軽い口調、だったけど]
(96) 2016/07/24(日) 00:24:43[海]
う、ん。
──もう、逃げない。
向き合って、前に進むんだ。
[>>85海から上がってきたその人の問に返したのは、肯定の頷き。
ずっと、自分一人が悲しくて、申し訳なくて、目を背けてきたことから、もう逃げない。
だって、アタシが前に進まなきゃ、あの子もずっと、傷ついたあの子のままだから。
鍵と螺子が揃ったその場には、他にも人は集まっていただろうか。
>>85気が向いたら、と告げる男性や>>88検索してみてというゼンジの挙げた名称を記憶に刻んだ後、帰らないとな、という声を聞いて]
(97) 2016/07/24(日) 00:24:57[海]
アタシも、帰らなきゃ。
合唱コンクール、ソロパート貰えるかもしれないし。
頑張って練習して、胸張って歌えるようにならないと。
[思えば、ずっと歌は好きで、頑張ってきた。
それはきっと、あの子が好きだってずっと言ってくれていたから。
記憶を封じ込めても、それだけはきっと、忘れることがなかったんだ。
そう思った矢先、聞き覚えのある鐘の音が鳴り響いて。
あ、帰るんだ、と過った脳裏、聞こえた声は間違いなく]
『イマリちゃん』
(98) 2016/07/24(日) 00:25:16[海]
[驚きに目を瞠る。
姿は見えない、ずっと見えないけれど、ずっと聴こえていた歌声の]
『ボクね、
イマリちゃんが、だいすきだよ』
───、う、ん
[涙が零れる、止められなくて何筋も伝う、そのままに頷き、そして]
────アタシも、好きだよ。
ずっと、すきだよ。
(99) 2016/07/24(日) 00:25:34[海]
いつか、ほかに好きな人ができても、一番最初にすきになったのは、キミだから。
キミに恥じない、負けないアタシになれるように、ずっと、がんばっていくから。
ひどいこといって、傷つけてごめん。
またいつか、会えるときまで。
──ばいばい、海くん。
[そう言って、微笑んだ先。あの、優しい笑顔が見えた気がして、手を伸ばす。
その指先に触れる直前、世界はかしゃん、音を立てて壁が崩れ。
目の前に広がる藍は、川の苔生す匂いを伴うそれに戻っていた**]
(100) 2016/07/24(日) 00:28:55[海]
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