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[瞬きを、ひとつ、ふたつ。
動き始めた口を一度とじ合わせると、かすかに頷いた]
わかった。
俺には見えないけれど、場所は、わかる。
案内するよ。
……引率が終わったら。
[職務放棄はできないし? と、首をかしげて笑う。
視線を向ける先は、綿菓子を頬張る子ら]
[ぼんやりと、向こう側を見る]
[ここにきてから、向こうでは一年たったのか、と]
[紗の向こうから聞こえるやり取りに、そんな事を思って]
……そりゃ、不本意に決まってる。
[やるべき事を押し付けているようなものなのだから、今、は]
でも。
[だからと言って]
[花に願い事をして、帰るのが叶ったとして]
……そのために、また誰か、消えるのか?
[それじゃ本末転倒だろう]
[ふと過るのは、そんな思い]
ねぇ、少し出掛けて来ても良い?
[出番を待つ身としては賑やかな屋台の雰囲気は魅力的なもので。
鼻腔を擽るソースの匂いに思わず立ち上がる。]
わかっているわ、青のりが気になるから、終わってから食べるし。
[マネージャーの声。背に受けて。]
夏の一夜に咲く花や
願い叶えし祭の夜
開く常世の参り道
招く御手は何処へと
[我が子をあやしながら口ずさむのは、最近書き始めた神隠しについての物語の一節。
世に出す作品と言うよりは、あった出来事を書き記した手記に近い]
祠の裏?
そんな話をしていたわね。
[嘯いて訪れるは祠の裏。
願いが叶う、一夜限りの花が咲くという。]
でも、その花は、特別な人にしか見えないのだろうかね。
[見渡す限りの刈られた雑草の、
すっきりした面影に。
噂に聞くかの花は見つけられず。]
そうと決まればやり残しなく、だな。
[首を巡らす。
ひとつの屋台に目をとめた]
酒まんじゅうひとつ。
……え、むっつ買ったらひとつサービス? それ、俺にもなのか?
[思わず同じ店名の刻まれた自分の着物ををみつつ]
ああ、いいよ。むっつで。あとで誰かにあげよう。
あれ、シンヤか?
……未成年に酒まんじゅうは、すすめてもいいものだったかな。
[焼きそば屋の傍らに見えたワイシャツ姿と、まんじゅうを見比べた*]
それは特別な花だから。
簡単には見つけられない。
[謳うように、紡ぐ言葉は今年も目を覚まし。]
「この世」ではないから…
[ふと、噤む。]
さすが作家さん。
[モミジの口から紡がれる、心地よいリズム]
ええ、御元気になったみたいなんですが、もう年だからひとりでは無理とボタンさんに言われまして。
また来年、お会いできたらいいですね。
[赤ん坊のやわらかい髪が風にそよぐ様を見て、小さく頷いた]
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