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[血が付いてしまった眼鏡は、一旦外した。レイヨ程ではなくも、ぼやけがちになる視界。
伝達へ向かい、マティアスの小屋を訪れて見えた顔は、小屋の主であるマティアスと、もう一人、トゥーリッキ。殺したのか、と確認されれば、無言で頷いた]
……恨めば、良い。
[恨む、と言うトゥーリッキに、抑揚も薄く返し、去っていく姿を見送った。少しの間、マティアスの姿を見据えてから――言葉は落とさず、小屋を後にして**]
[使者の男は、ウルスラの死とその無実を伝えていった。ナイフをしまい、眼鏡と手袋は外しても――見た目は常より赤いまま。己が殺したと。明言しなかったとしても、相手には察せられただろう]
……必ずしも。
苦境を、惨事を、終わらせんと。
[長老に報せる時は、そう付け足して。雪を踏み締め、歩いていく。その足跡は既に赤くなくなっていた。はたと、立ち止まる。感覚を失いかけている両手を見つめ]
……
[ゆらりと、己の小屋へ向かった]
[己の小屋に帰り来ると、赤が散った髪と顔を濯いだ。赤く染まる雪解けの水。噴き出た血が雪に広がっていったように。眼鏡のレンズを磨き、かけ直して]
……、
[火を入れた暖炉の傍に椅子を置いて腰掛けた。
小さな小屋の中には、必要最低限といえる家財の他には、幾らかの書物しかない。
指先で首飾りを摘み、眺めるでもなく見る。やはりところどころに血が付いたそれの中心、錆び付いたタグの裏には、ごく小さく細い文字で男の名前が書かれている。――アルマウェル・“J”、と]
……終わらせなければ。
そうでなければ……
私も、死するか? ……
[炎へ視線を移し、呟いて。
瞼を下ろし――短い眠りへと*落ちる*]
[男は程無くして目覚め――辺りへ視線をやった。ぼんやりとしたのは一瞬だけ。すぐに覚醒し切り、立ち上がる。暖炉の火を消してしまうと、小屋を出て]
……嗚呼。
[零したのは白い溜息一つ。冷えた空気を縫うように、緩慢な歩みで、雪の上を歩いていく]
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