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――ふとした折にマティアスが聴くのは、――
[―――とおい潮騒にも似た 虫の羽音。
昨夜に頭上を飛び交った、
殺意の塊めくスズメバチの羽音ではない。]
[人びとが難を避けてなお、
窓を開けて逃がされたりはせず
根絶やしにされねばならなかった害虫たちは、
今朝方 湖の水面へうじゃりと浮いて
そのまま雨に打たれ沈んで魚の餌――]
─昨夜─
[そっと離れる体温を見送り、ユノラフの言付けを
伝えるためにマティアスの元へと向かう。
2階ではマティアスが一人、友が戻るのを待っていただろうか。]
ユノラフさん、シャワーを浴びに行かれましたよ。
[彼は頷いてそこで待つと言っただろうか。
…も、用が終わったので下に戻っても良かったが、
ふと、気になった事を口にする]
あの……失礼でしたらごめんなさい。
何も見えないというのは、どんな感じでしょう?
[盲目の世界とはどんなところだろう。
昏い、水底のような、そんな世界かしら。*]
─クレストが使っていた部屋─
[誰もいないがらんどう。
鍵がかけられていなかったのだろうか、
窓がキィキィと風に揺られて音を立てている。
降る雨がベッドを濡らしているから、
この部屋ではもう寝られないだろう。
部屋の隅に、ひとつ、置き去りの上着>>3:240。
ポケットから覗く紙を手に取ればそれは写真だった。]
ミハイルさんの、
[>>3:71今と寸分たがわぬミハイルの顔。
古い、旧い、とても昔の写真。
違うのは着ているものと、今よりも少し柔らかい表情だろうか。
もう一人映っている少年は、彼と共に逝った
青年にどこか似ているような。]
[必要が無いから置いていったのだろう写真を、
…は上着に戻す。
そして、もう一枚、写真とは違う紙が無造作に
押し込められていた。
その紙を取り出して何が書かれているのかを、見た]
『
Rusalkaがしあわせになれますように Vodyanoi.
』
[瞬間。
目の前が、真っ赤に染まる。]
[なんて言葉、なんて残酷、そして絶望、慟哭。]
私には、あなたのようにはなれない、
愛してくれる人も、愛した人もいないのに!!
[クレストと二人、幸せそうだった2人を思い出す。
ミハイルは仲間である…よりも、ただの人間を取った。
妬ましい、羨ましい。
自分には訪れることの無いだろう幸福。
それを二人に預けて、諦観したのに。]
いまさらこんな、ひどい、ひどいひどいひどい!!
[ぐしゃりと紙片を握って、その場にしゃがみこめば、
呼応するように雨音と風が一層強まり、空は悲鳴を上げる。
…の声は、ざぁ、と降る雨がそれを掻き消しただろうか]
おいていかないで ひとりにしないで
[苦しい、哀しい、怖い、寒い、切ない、辛い。
寂しい、寂しい、寂しい、さみしい──
ぐちゃぐちゃになった感情を曝け出す…は、
それこそ化け物の様に醜かっただろう。]**
―大部屋―
[特に行くあてもなく、その日も大部屋で一夜を明かした。
誰かと話したかもしれないし、話さなかったかもしれない。
朝、ニルスが入ってきてなにやら呟く。>>1
直後、ユノラフも入ってきてニルスと話し始めた。>>9
どうやらニルスとユノラフは、イェンニがナッキだと気づいている様子だった。]
>>13ナッキとわかっていて殺さない…ですか。
[ニルスにはっきりとそう言って部屋を出るユノラフを見送りながら、昨夜、蜂を水に沈めていたイェンニを思い出す。
彼がそう言う理由は、なんとなくわかる気がした。
一方、ニルスは彼女を殺すつもりの様子。>>15
人間なら、生きるためなら、それは当然の選択だろう。]
ナッキとは…何なのでしょうね。
[誰にともなく、そう呟く。]
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