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― 居間 ―
[幽霊なので壁抜けをしてきた]
[鎮痛な面持ちの面々、そして――]
……アイノ?
[声だけ覚えた。姿は多分あの子――といううろ覚えだったが。
同じように、存在感が希薄な姿を見つけて、声をかけた。
ただ、こちらは――包帯も、傷もない顔だったので印象は随分かわったかもしれない]
[アイノが、自分との同票で死んだと言う話は聞こえていた(>>52)]
[白紙票が混ざっていれば、気がつくだろう。なのに、何故?]
[無意識のうちに名前を書いていたのだろうか]
[それとも――。
そんな狡い思惑などお見通しだと言わんばかりに、誰かの名前が記されるよう何らかの細工が施されていたのか]
[居間のテーブルを見ると、そこに散らばる投票用紙(>>62)には、確かに自分の筆跡で“アイノ”と記されている一枚が、あった]
[居間のソファに、身を沈める。マティアスの血がこびりついたまま。虚ろな表情で]
[いずれにせよ。
絨毯に絡まったマティアスを、共に解放してくれた少女(>>1:160)を。
何か感謝を告げる方法はないか、と頭を撫でたら動揺していた少女(>>1:176)を。
自分の浅はかで卑怯な弱さと甘さのせいで、死なせてしまったのは確かなのだ]
[本来であれば、代わりに冷たくなっていたのは自分だったはずなのに]
………っ。
[喉を詰まらせ、頭を抱える]
[揺り椅子に座ったまま。
虚ろな表情のクレストがソファで苦悩する様を眺める。
口のきけぬ彼は、票を集めていた。
それがどういう意味か――]
……お前さんも、疑われておるなぁ。
[その名を記しておいて、しれっとそんな声を、かけた。
筆記用具をもたぬ彼の返事は期待せぬままに]
[ヴァルテリの話から、投票の顛末を聞いた。
クレストとアイノが同票で、そしてアイノを殺めたと]
――クレスト、が、どうして…?
[不理解が疑いを生んだのだと、理性は知っている]
クレストは、みんなのために、つらい話を、きかせてくれた、じゃん
ヴァルじいだって、人狼に直接あったことないのに、クレストは、騒動のこともしってるって……
[苦悩するクレストを励ます言葉も、庇う言葉も、届かない]
[どれほどの時が過ぎたあとだろう。
頭を撫でる誰かの手の感触>>65に、ぼんやりと顔を上げる。
靄がかかったような頭には、切れ切れに周囲の言葉が残っていた]
かわいそう……、 …?
[誰が。マティアスが?
聞こえた言葉>>55を鸚鵡返しに繰り返して、立ち上がる。
涙に崩れた顔をそのままに、
夢遊病者の如くにゆらりと調理場へと歩き始めた]
[調理場に居たのは、ニルスとイェンニか。
女はそれに構う素振りを見せず、杖をつき黙って歩く。
目指すものは、見渡すまでもなくすぐに見つかった。
流し台にある果物ナイフ>>65
少女の命奪った凶器へと真っ直ぐに歩み、それを手にする]
[湯を落としてから、棚へと手を伸ばしていると
掛けられた声に、顔を、向けた。
困った風に眉尻を下ろして、頷いた]
ひとを、殺すのですもの。
例えその相手が誰であれ―――、
ここを、無事に出たって。
引き摺ってしまいそうですから…
大義のある殺人、が、
わたくしは…おそろしいのです。
[俯く様子は殊更悲しげな音色を落とす]
[ナイフを手にする女に、表情はない。
ただ泣き腫らした顔のまま、沈んだ顔でナイフを手に、
杖をついて居間へと向かう。
ゆっくりとした足取りで、歩む速さは常のまま]
マティアス……あ。
[名前に加えて、絨毯と聞けばすぐに合点が行く。
こちらはこちらで少しの間、まじまじとその顔を眺めた。
普段と何ら変わりない、少し冷めた顔で]
えっと、何で……?
[ひとつの事に納得が行けば、別の疑問が浮上する。
何故こちら側に、とかそういう風に尋ねたかったようだが、少し言葉が足らない]
[ヴァルテリから向けられる言葉(>>69)も、今の彼の耳には届かない。ぼんやりとした頭の中にあるのは、呪いにも似た、あの言葉(>>39)だけ]
[自分が、死なせてしまった]
[もしかしたらマティアスが死んだのだって、自分の甘い考えが招いた事なのかもしれない]
――ごめんなさい。
僕が、殺したようなものです。
[それは、声にならない唇が形作る、深い深い――謝罪の言葉]
[果たしてそれに、気づいた人はいただろうか]
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