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[アトリエの中で、ゆるやかに目を閉じながら、ザクロの歌を歌い始める。
姿の見えないアンの魂が、安らかに、天に昇っていることを祈るかのように。
ジロウとマチコが、無事であるように。
皆が無事であるように。
そして──あの人に手紙が届くように]
スピード狂じゃないから心配しないように。
[ルリにそう言ってから、外を見つめる。
木陰に、鳥の姿が見え隠れした]
ん、そうだね。
[緑茶を飲み干すと立ち上がり*車へ向かうことにした*]
私は荷物といえばこの鞄くらいだから、すぐに行けるわよ。
セイジくん、ルリちゃん、用意が済んだら玄関へいらっしゃいね。
待ってるわね。
[ゼンジの後をついて、食堂を*出て行った*]
[ゼンジおにいちゃんもボタンおばあちゃんも、準備をして出ていってます]
うん。るりもお部屋から荷物とってきます。
準備ができたら玄関ね。はい。わかりました。
[さっきもらったお人形をぎゅっと抱きしめて、*食堂を出て行った*]
──。
[歌い終えると、優雅に一礼する。
そして誰もいないことを思い出し苦笑する]
なんかクセになっちゃったわね。
アンちゃんに聞こえて居ればいいのだけれど。
みんなは、どうするのかしら。
[するりと壁をすり抜け、アトリエを後にした]
──どこにあるかみんな知ってる
どこにあるか誰も知らない
まっくら森は動きつづける
近くて遠い まっくらクライクライ
近くて遠い まっくらクライクライ
[歌い終えると自嘲気味に微笑んだ]
まるで今の状況ね。
こういうときにぴったりなのが、持ち歌じゃないのが、悲しいところだわ。
[ついと空を見上げる]
そういえば、若旦那さんの言う鳥ってなんだったのかしら?
[首を傾げるが*答えは出なかった*]
ぎゃーーーーー!
[木綿のハンカチーフを引き裂いたような悲鳴が木霊した。
車のボンネットに、嫌がらせのように鳥の落し物が]
撃ち落とすぞコンニャロー!
[バサバサバサと、鳥が羽ばたく*音がした*]
[立ちあがり、ゆるゆると歩き出す。
自分の部屋へ行く前に、奇妙なオブジェが合った場所を見る。]
ひとおおかみ。かいぶつ。
[物憂げに呟き、一人言をはじめる]
ひとが考えるかいぶつは、いつもひとだ。
と、ぼくは思う。
常に怪物にならないように気をつけなければならない。
深淵を覗き込むものは、深淵にも覗き込まれているから。
[言って、思いなおしたようにノミを適当な場所にそっと置く]
というか、間違えて自分に突き刺しそうだ。
[くすりと笑った]
似合わないことをせずに、とんちで何とかしてみよう。
――ね。お姉さんたち。
駄目だったらゆっくり歌でも聞かせてよ。
[自分が死ぬのは悪くない。と思わなくもないしね。
とか言って、部屋へ向かった。
準備ができたら、すぐに玄関に行くだろう*]
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