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[安子が消えた時。
静かな風にのって、
ただ教師の名だけを鈴の声は告げた。
呪いか祝福か、
そこから推し量ることはできなかったが。]
[石段の上の攻防を注視する。]
……うーん。
結局は、喧嘩になっちゃうのねえ。
[そして]
あ――!
なんで、どうして?
そんなことしたって、あなた、
何にもならないのにっ。
[プレーチェへ駆け寄ろうとする。]
――馬鹿。
[その叫びは、
誰へと、何へと、向けたものだったろう。*]
夢と現は同じようでいて、別のものだから。
現で夢を見ることは出来るけれど、現にはならないし逆もまたしかり。
「バク」。
そう呼ばれていたことがある。
だから、呼ぶならそう呼ぶといい。
永嶋グリタ。
名は自身を象るものだから、大切に。
[聞きもしていない男の名を呼んだ]
[>>79ともあれ、止めるなら・・・]
・・・先生はそういうけど。
俺は小さい頃から 静かな村で 小さな村で暮らしてきた
たしかにすこしは不自由だけど それでも 遊ぶところは沢山あって
野山を走り回り 神社で休んで 蛍川で水遊びをして
ずっと ずっと 小さい時から・・・
きっと ヒトデナイモノ に見守られて・・・
アンコがここに来たばかりの今なら、こちらとあちらの壁もきっと薄い。
[そう言いながら少しだけ不安げに、鳥居を見上げる。
何かを確認して、戻す視線は永嶋に。]
永嶋さんが望むなら、絶対に戻れる。
[一歩踏み出し、今度は両手で一度離した手をぎゅっと握った。
何かを念じるように目を閉じてから、その手を離す。]
[固いなにかが落ちる音に、あちらの世界を振り返る。
鞘に収められていたはずの短刀が、曇り空の下鈍く光っていた。]
先生、駄目だよ。
[聞こえないことなど忘れて叫んだ。
声が届かないのがもどかしい。
自分はここに居るのに。
雨の気配を漂わせ始めた空を見上げ、空彦を庇うように隣に駆け戻る。
聞こえる鬼の声(>>*5)は駄々をこねる子供のよう。
どうすれば良いかわからなくて、顔を歪めた。]
消えなくて、消さなくてもいいの。
消えちゃ駄目。
消えるくらいなら、
[そう言って、木刀を握る空彦の手を引く。
届かない筈の手が、温もりに触れた気がした。]
“こっちへおいで“
[そう囁いたのは誰だろう。
雨音が*聞こえる*。]
消えてしまえ・・・
それが 何百年、何千年も ずっと
俺達を見守り続けたものの言葉ならば
消えた先になにがあるかわからないけど
それだけの事を自分達はしてきたのではないか・・・。
[自分たちの消し去ったもの。
青々とした緑が茂る大きな山や野原。
魚がたくさん溢れていた綺麗な小川を想う]
[空彦の話を聞いても、鈴の音に耳を傾けても、
狐も、鬼も、理解はできず。
する必要がある対象とも思えなかった。]
あの先生も吉野さんも、あたしは止められない…。
神様を憎むこと、
吉野さんを人身御供にすることに対して
正しいとか間違ってるとか……言えない。
出来ることは、二人を想って祈るだけ……。
[夢をみよう。
なぜかその一文が鮮明に浮かんだ。]
[石段を駆け上がって着いたところで身体を半分に折って息をする。
普段やらないことをするからなんだが、顔を上げれば人の輪があった。]
――――――……。
[先ほどの赤い木刀が降り下ろされようとしている。
見知った先生の手にも何かがあるように見えた。
白いワンピースの少女が飛び込んでいくようにも見えた。]
――――――…。
もう、理由なんてめんどくさい……。
隠したらダメなんてことは、幼稚園でも習うことじゃん…。
理由があればいいなんておかしいよ…。
[その騒ぎがどうなるか分からないが息を整えてゆっくり*近付いていく。*]
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