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[蔵の中、ロッカの傍らでそれを見ている。
古い木箱に、容赦なく仕掛けられるホズミのドライバー攻撃。
聞こえないのは承知で、思わずつっこむ]
……いや、ホズミねーさん。
ふつー、そーゆーものは力づくじゃ開かないってのが相場……開いたよ。
[箱の蓋がえいっとばかりに開けられて、目に入ったのは
銀色のような、虹色のような、鱗]
[18分間16連射ばりの猛攻受ければ鍵も外れるでしょうね、ですよね]
……。
[蓋が開くと、なんだか必要以上に人の気配を感じた。自分も中を覗き込む]
人魚の鱗、か? これが探しているもの?
[虹色に光を反射する銀の鱗。
見えない誰か……が居るかもしれない[殺虫スプレー]の辺りを見る]
[足もとに、錆びだらけで転がっている殺虫スプレーの缶。
ぶしゅーっとやっても全く意味は無いよねー、などと思いつつ]
雷神様が、橋を渡らせてくれないなら。
自分たちで、虹の橋とか、かけられればいーのにね。
なんつて、ファンタジック。
[スプレーから、幼い頃霧吹きで作った虹を連想したようだ。
視線は、ホズミの手の中、美しく七色に光る鱗へ吸い寄せられる]
……え、何これ?
何か波の音が聞こえてくるんだけど。
ね、誰かちょっと触ってみてよ。
別に危なくもないみたいだし。
[輝く鱗を持ったまま、
誰にともなくその手を差し出して]
[殺虫スプレーを見て死んだフリ]
海の音。
[温度のない床に寝そべって、鱗の光を見つめる。
胸を叩かれるような感覚があった]
… ほんとう きれいね。
[窓から降りる薄灯りを滑らかに弾く鱗。
丁重に納まる其れには巻物が添えられていて
――『牡蠣山縁起絵巻』と書かれていた。
茶屋の娘は、ウミの耳裏を柔く掻いて起こし]
ケンなら
読み解いてくれるかもしれないよね。
[数年振りでも見憶えてくれていた様子の
ねこの顔を覗き込んで、浅く首を傾けた。]
[遠い昔に書かれた筆文字は掠れがちだが、
添えられた絵にて伝承の概要は知れる。
むかあしむかし
海では貝が全く採れなくなってしまい
海神がそれはそれは困っておりました
山神は海神の窮状に酷く心を痛めます
此方の山では栗と柿がたあんと採れる
どちらか片方採れずとも困りはしない
なんとか恵みを分けてやれないものか
契約の仲立を買ってでたのは雷神は… ]
[名前と同じ響きに耳がぴくり
耳の裏を柔く掻かれる感覚に]
くすぐったい〜ぃ、くぁ〜…あ。
ロッカさん呼びましたかにゃ?
みぃ、綺麗な音がしますねぇ…なんの音なのですかにゃあ。
[海を知らぬ山奥の村の猫は首をかしげる]
[差し出される輝く鱗を受け取る、と。
こぽり。
泡が溢れたように、見えて。
ざあと波の音が聞こえたと思ったら。
深い青い色が溢れて来た]
……うみ?
[驚いて、瞬きすると。溢れて村を包んだ海の景色は消えてしまって。もう一度瞬きした]
[起き上がり、四つんばいでヘイケの方へと近づいてから手を伸ばす]
見つからないの、ごめんなさい。
[ヘイケの手に触れ、握り締めた。
それから振り返ってウミに小首を傾げる]
内緒よ、ウミにゃー。
遠いところに水がずうっと
広がっている場所があってね。
そこを「海」っていうんだ。
そこの音、だね。
[海を知らないウミに、精一杯の説明をする]
……もしかしたら
ロッカちゃんのかえる場所、ってここなのかな。
[どうやって行けばいいのかさえ
分からないけども、そんな気がした]
[輝く鱗をリレー式に差し出す先は[総長 ヘイケ]受け取れるかは、知らないけど。
ケンなら、ヘイケは言うから。
巻物を手に取ると、広げて……誰が何処にいるかわからんから床に置いた。
伝承を聞きながら眠りにつくヘイケはあまりにも静かで、だからしばらくの間気づかなかった*]
[広げられた巻物には
何て書いてあるのか分からなかったけど
語られるその内容に、熱心に耳を傾けた]
そこで山の神が海の神に柿を差し出して……ってとこ?
[茶々を入れるようにして先回り。
その先の予測は*つかないのだが*]
これを誰か……ケンさんに?読んでいただきたいのですかにゃあ?
[目の前の巻物とヘイケを交互に見る。
ふとそこにみえた手には]
……にゃ。
[こくり頷いてひと鳴き後、お口チャック]
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